今度は木に齧り付いた人間に会った
一度あることは二度ある。
…とまでは断言出来ないが、実際に一度起きたことがもう一度起こる可能性があるのは自明のことだ。
しかしだ。こうも状況が酷似しているとなんとも言えない気持ちになるわけでありまして。
「そそそそそこの人ぉぉぉっ!気付いているでしょ、今目が合いましたよね、確実に合いましたよね!さあさ、一二も言わず助けてください、可及的速やかに助けてくだしあああああっ!」
石に齧り付いている人間(いや、ドラゴンであったか)なら会ったがまさか木の根にへばりついた人間にも遭遇するとは人生何が起きるかわからないものである。
沼に体の大半を持っていかれてなんとか木の根に掴まっているその少女は美少女であった。更に言うとロリで巨乳だ。……ギルティオアノットギルティ?イケメンならともかく女の子を見捨てるのは少々気が引ける。男は兎も角女の子には優しくしなさいとばっちゃが言ってた。
「掴まって。」
そう言って手を伸ばせば心底嬉しそうに掴まる姿は可愛い。庇護したくなる。
力を込めて引けば、少女一人を沼から救い上げるなんて楽勝である。えいやと気合いを入れて引く。
なんなく少女を引き上げることに成功したが、少女の体は泥だらけだ。
ありがとうございます、と感激しながら頭を何度も下げていた少女も自分の惨状に気付き、はぅう、一張羅が…と嘆いた。
少女が可哀想でドロドロになった体を『浄化』で綺麗にすれば、ふおおおとか言いながら頭を何度も下げてきた。
そしてなんだかキラキラした目で見てくる。ちょっと気恥ずかしくなる。
炎のように波立つ赤い髪をツインテールにし、くりくりとした大きな釣り目は同じく赤。
童顔な顔は愛らしく、その髪と目、健康的な肌色もあわせて太陽の子といった言葉のよく似合う少女だ。
しかしそんな子供らしい可愛らしい容姿に見合わぬ機能性のみを追求した、厳ついとすら思える戦装束。ファンタジーの冒険者が着るイメージぴったりな綿のだぼったい服に皮の胸当てをつけている。
軽装に短剣を何本か持ったその姿は軽戦士かシーフか、そういったところか。
そして幼い見た目、低い身長に見合わなぬ巨大なものが皮の胸当てを押し上げている。
…ロリ巨乳って存在していたんだな。
まぁ、可愛い女の子が助かって何よりだ。
なんだろう、今誰かからなんか差別じゃね?という声が聞こえてきた。
いや、誰だって女の子と男なら女の子とるでしょ?私の歪みねえ知り合いに女の子に5000円あげるのと男から1000円貰うのどっちがいいか聞いたら「そりゃあょぅじょに決まってるっしょwww」と即答されたし。…誰も幼女とは言ってないのだが。
話がずれたが、要するにロリは正義である。異論は認めない。子供は宝だとどこぞかの慢心王も言っていた気がするし。
「お姉様、ありがとうございます…。」
ほぅ、と吐息をつきながらそう言う少女に一瞬寒気が走ったが気のせいだろう。気のせいにしておきたい。あの聖女ちゃんと同じ空気などこれっぽっちも感じていない。
この少女はちょっと不思議ちゃんなんだろう。
そういうことにしておこう。
「大丈夫ですか?町まで送りましょうか?」
声をかけると、はぅぅっと赤面してゆっくり後ろへ傾き…沼に落ちる前になんとか抱き留めたのだが気絶していた。
疲れが限界だったのだろうか?しかしそれにしては心なしか幸せそうな顔である。何故だか脳が拒否したのでそれ以上このことについて考えることをやめる。
しかしこの子をどうすればいいのだろうか。…家に連れて帰るしかないか。馬鹿男に何と言おうか…。
「……いや、俺も拾われた身だから何も言えないけどさ。」
少女を家に連れて帰れば、想像に反して馬鹿男はそう言ったっきり何事も追及してこない。
それどころか手際良く寝床の準備してくれた。もしかしてこいつロリコンなんだろうか。
馬鹿男が意識のない少女に何かやらかさないか見張っておく必要があるな。
「サヨ、なんでそんなに見てくるんだ?」
監視しているのがばれたか。訝しげな馬鹿男に何とか誤魔化せないかと頭を回転させる。
直球で言ってしまうのはさすがに色々とまずいし…。しかし何も言わないというのもあれだ。
こういう時は心の赴くままに口にするしかない!口にすれば次々と言葉が出てくるってじっちゃが言ってた。
「ケテル、最近なんだか声のエロさが増してませんか?」
…何言っちゃってるんだろう、私。
しかし事実である。最近なんだか元々エロイ声が艶っぽさを増している気がする。耳が孕む(確信)。
まぁ、成長期と同じようなものなのかもしれない。私の好きな声優さんも初期の頃と現在のものを比べれば月とすっぽんぐらい声の質が変わっていたし。しかし慣れた私は兎も角初対面でこのエロボイス聞いたら腰にくるんではないだろうか。
まぁその慣れた私でもたまに掠れた吐息とか聞いちゃうと赤面してしまうのだが。あれはヤバい。
「は、はえ?え、えろ…?」
考えていたら、困惑した馬鹿男が首を傾げて考え出した。なんとか誤魔化せたようである。結果オーライ。
しかし自覚無しだったのか、そのエロボイス。
トムクノレ○ズとグリーンリバー○イトと張り合えるエロボイスなのに。お金取れるエロボイスなのに。
「ん、んぅ…。」
そんなやり取りをしていたら、少女が目を覚ました。
枕元へ寄れば、うっすらと瞼が開いていく。
ぼぅっと天井を見上げたこちらへ視線を移す。
そして私を認識した瞬間
「お、おおおお姉様!?」
がばっと跳ね起きた。
どうやら直前の記憶は確からしい。そして相変わらずのお姉様呼びなのか…少し照れるな。
あわあわ、と慌てた後ぽっと顔を赤らめて何やら呟きだして、今ではうへへ…と若干アウトな笑い声を発している。こいつ大丈夫なのか?
「サヨ、この子大丈夫なのか?」
そう思っていたのは私だけではないらしい。
馬鹿男は引き気味に聞いてくる。まぁ、多分だいじょばないが、本人の問題だしそっとしておこう。
暴れたりする訳ではないようだし。
「……っ。」
少女は馬鹿男を見ると大きく目を開けた。
なんだ、まさか馬鹿男に惚れたか?
よかったな、馬鹿男。両思いじゃないか。祝福するよ。
と、思ったら少女は顔をしかめた。
そしてベッドから飛び起きると私と馬鹿男の間に立ち、馬鹿男と向かい合うように体を向ける。なんとなく私を守る姿勢のように見えなくもないが…
そんな訳が
「そこのドラゴン!お姉様を騙して何を考えているか知りませんが、その企みはこのドラゴンハンターのラティーシャが防いでやるのですよ!」
…………。
な、なんだってー!?




