表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そして私は今日もドラゴンの心臓を齧る  作者: ヨハン@小熊
ep2:第二章(タイトル未定)
30/50

齧られたら 齧りかえせ

知らない天井だ…

なんてことはない、見慣れた自分の部屋の天井が目を覚ました私の目に入る。眠気のない、さっぱりとしたいつも通りの目覚めだ。

「サヨ!」

訂正。何故ここにいるのかね、馬鹿男よ。夜這いをするような男に育てた記憶はないぞ。私が育てた訳ではないが。しかし馬鹿男の気配にも気付かないで寝ているとは私も鈍ったか?確かに暗闇に落ちていくような眠りだったが…いや、待て。

そもそも、私はいつ眠った?

あやふやな記憶を整理して思い出そうとする。

変な忠告の悪夢。

馬鹿男と潜ったダンジョン。

読めない書物。

二回目の夢。

激痛とこちらを見る黄金の目…

「……っ!」

思い出した。

私はあの男に、かじられた。

夢で見たあのおぞましい男が実際に来た。

メイフィーを、友人を置いて無様に逃げ出した挙げ句あっさり追い付かれて、喰われ掛けた。

胸から込み上げてくるこの衝動はなんなんだろう。

何も出来なかった無力感?

自分以上の力を持つものへの恐怖?

もうどうにもならない諦観?

一時の平和を取り戻せた安堵?

いいや、どれでもない。

「……つ…。」

「どうしたの、サヨ?…っあ、あの時のこと…!」

この、頭が真っ白になる程の衝動は


「むかつくー!」


「なんであんな中二病こじらせたのにうっかり能力持たせちゃったテヘペロ☆みたいな奴に負けちゃったの、私!訳が分からない!理不尽すぎるわ、運営仕事しろ!」

「というか女の子には優しくとか習わなかったの!?思いっきり躊躇なく攻撃しやがって世の中の変態しんし見習えっての!優男風の口調は飾りか、ケダモノめ!」

「ていうかイケメンと関わると本当ロクなことないな、死滅すればいいのに!禿げろ!つるつるに!そして爆発しろ!」

「メイフィーに何かしてたら(ピー)して(ピー)して(ピー)に売り飛ばしてやる!そして(ピー)になるがいいわ、(ピー)が!本当、(ピー)はこれだから(ピー)なんだよ、(ピー)で(ピー)の癖に生意気なんだよ、(ピー)が!」

…憤怒である。

元々私は負けず嫌いであった。強い敵を見ると気分が高揚し、ぶつかっていくタイプでもあった。要するに今の私は最高にハイ!って奴である(ちょっと違う気がするが)。放送禁止用語がポンポン出ているのもそういう訳である。

落ち込んでいる暇があれば対策を練ろ、とばあちゃんが言っていた。弱い奴は慈しめ、対等な奴は競い合え、そして強い奴はねじ伏せろ、とじいちゃんが言っていた。任せて、私頑張るよ!あんな痛い中二野郎なんてメタメタのギッタギタにしてやるんだから!

「さ、サヨ…?」

…居たのか、馬鹿男。

うっかり本性がバレてしまったが、まぁ仕方ない。

旅は道連れ世は情け、こいつも私の華麗かつ残忍な復讐劇に付き合って貰うのだ、いずれバレたさ。というか私の本性を知っておいて逃げられるとは思うなよ?クックック…ハッハッハ…ハァーッハッハ!

笑いの三段活用だ、テストにでるぞ。

「…ブフッ。」

…なんか今馬鹿男ではない吹き出したような声が聞こえたんだが。嗚呼、それもどっかで聞いたことがある…具体的に言うと夢の中で。

「ククッ、本当いい性格してるな、お前。攫って嫁にしたいぐらいだ、お前を好きになる連中の気持ちが分かるというものだよ。」

声の方をバッと見るが…

想像していた姿とは違い、微かに輪郭が分かる程度の陽炎のような存在がそこにいた。前の夢でもノイズまみれではあったがここまで酷くなかったと思う。そんな一見誰おま状態だが輪郭だけでも夢の忠告してきた男と特定できる。

「というか、忠告するなら助けなさいよ、役立たず!」

今の怖いもの知らず状態の私は誰にでも喧嘩を売る。

今なら神様にでも喧嘩売るよ!どんとこい!

しかしこれは本当に思っていたことだ。忠告するなら助けてくれればいいのに。そしたら誰も不幸にならなかっただろうに。メイフィーも、馬鹿男も、誰も彼も。

「役立たず…。」

力を持っているのだろう、私と違って。

あの男よりも何倍も、いや比べるのもおこがましいほど目の前の男が強いと分かるから。あれが底無し沼ならこいつはまさしく深淵だ。誰にも負けそうにない化け物。

「俺程度はまだまだ深淵とは言えない。そしてあの男だけならお前でも届く程度の浅瀬だから安心しろ。」

…考えが口にでていた?いや、馬鹿男が訳が分からないという顔をしているから言葉には出していなかったと思う。ならば顔に出ていた?…心を、読んだ?

いや、そんなことより大事なことがある。

「あの男に、私は勝てるの?」

私でも届くとこの男は言った。それはつまり、私でも倒せるという事なのでは?かつて中二病を患った友人の通訳になったこともある私なりに多少芝居かかった台詞を噛み砕いた結果そう結論が出たのだが。

「あとケテルでも、な。しかしあいつの背後が面倒でな…。まぁ、無量大数分の1ぐらいの確率でなんとかなるから安心しろ。」

それ殆ど無理ってことじゃないか?しかし、単体なら私でもねじ伏せることが可能、か。背後をどうするかなんて今考えても仕方がない。大事なのは私でもあいつを打倒出来るということ。そうと分かればやることは唯一つ。

「目には目を、歯には歯を。昔の偉い人は言いました。さぁ、ケテル、特訓しましょう!一緒にあの屑野郎をとってめるのです!」

 そして、あの穏やかな日々に戻ろう。

そう言って手を伸ばせば、馬鹿男はぽかんとこちらを見て固まった。そして小さく笑うと私の手をとる。

「当たり前だ!あんな奴、ボコボコにしてやろう!」

そうして私達は熱く手を握り合い、夕日に向かって走り出す…なんてことはなく。

「あ、あれ?なんか体の調子が…。」

鈍っている?凝っている?

理由が分からないが、体が思うように動かない。もどかしくて戸惑う。回復魔法をかけてみるが変わらない。一体どうしたのか。自分の体が自分の物じゃないみたいだ。

「しばらく昏睡状態だったからな。」

忠告男は至極当然のことのようにそう言ったが、私そんなの知らないぞ。昏睡?私は一体どれだけ寝ていたと言うんだ?

「…時間か。また機会があれば会おう。」

こら待て気になること残してどこかへ行くな!ちゃんと説明ぐらいしていけ!何のための言葉だ、舌切り取るぞ!そんな私の思いを無視して忠告男は消えた…。

謎しか残さない男である。やはり顔のいい男は駄目だな。

「俺が説明するよ。あと、あいつに何か求めるのは意味がないよ…基本天の邪鬼だから。」

よくやった、馬鹿男!

…む?あれ馬鹿男はあの男の知り合いなのか?

「ケテル、あの人と知り合いなのですか?」

なんとなく察しはついてきているが、念の為聞いておく。勘違いは世界も滅ぼすからな。確認作業は大事である。

「ん?あぁ、あいつが俺の言っていた精霊だよ。」

予想通りだ。微妙に使えない超自然の使い手という精霊の話をあいつを見ていてふと思い出したんだ。よく分からない忠告(結構大事)をして助けには入らない超☆強い(筈)の天の邪鬼な男…災害認識の方が良いかもしれない。正体を言わない理由が面白くないから、とか答える人間 (?)は災害で十分だ。


「ところでサヨ、あの口調は…。」

「舌を切り取られるのと記憶を無くすまで殴られるの、どちらがお好みですか?」

「なんでもございません。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ