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そして私は今日もドラゴンの心臓を齧る  作者: ヨハン@小熊
ep1:そして私は始まりの心臓を齧る
19/50

弱いドラゴンは齧られないように特訓

馬鹿男ドラゴン発覚事件の翌朝。

私は普通に起き、早速部屋の改修を始めようと…

「サヨ…ちょっといい?」

したところに馬鹿男が話し掛けてきた。


いわく、馬鹿男はヒュムドラゴンと呼ばれるドラゴンの中でも希少とされる種族なのだそうだ。レアエネミーなドラゴンの更にレアとは、一見普通な見た目を大いに裏切る特殊スペックである。そしてヒュムドラゴンは精霊と呼ばれる超自然の力を操る一族と懇意にしていて、色々と助けてもらっているらしい。そして助けてもらわないとドラゴンでも一、二を争う最弱の種族で具体的に言うとこのあたりのエネミーにはさくっと殺されちゃうぐらい。その癖精霊はいつも助けてくれるわけではない、かなり気まぐれな気質らしい。どどめのようにヒュムドラゴンの心臓は老化を抑える効果があるという非常に厄介な性質を保持していらっしゃる。お助け精霊がいても狩ろうとする連中はいるような能力なのにその精霊がいないとただの鴨である。もう勝負ついてるから、というレベルである。馬鹿男はそんな感じでドラゴンを狩るドラゴンハンターに追われ、精霊の手助けで転移したものの転移先は崖の上…必死に石に齧りついたものの精霊は全く助けてくれず、そして私と邂逅した。ランク評価にしてEのどん底といえる不幸っぷりである。ほろりと涙がちょちょきれるレベルだ。

「だから、その…。」

すごく言いづらそうに口ごもりながら、馬鹿男は何か話したそうにする。眉はハの字になっている。だからそういう捨てられた、いや捨てられそうな子犬のような目をしないで欲しい、捨てないから。

「俺がいると、迷惑を…。」

え、今更?

そんなものはドラゴン発覚する前そも助ける前から面倒の匂いしかしなかったから、厄介レベルがわかった今の方が気が楽とすら思っているよ。前は脅威がどれぐらいかわからない爆発物持っているようなものだったし。なにより鴨葱ドラゴン程度の脅威ならなんとかなるだろう。

「気にしないで下さい。いうほど厄介なことではありません。」

場所が場所なだけにさすがにちょっと老化を抑える程度で狩りにこようとする輩はいないだろう。かつて街で聞いた話が本当なら。この前きた輩は実力も図れないお馬鹿さんなのだろう。…そう思っておこう。悲観的に考えても事態は好転しないし。

「しかし、少しでもそれを気にしているのなら…。」


改修などを終わらせた次の日。

私達は森の中にいた。私達とは私と馬鹿男である。ちなみに馬鹿男はマナーモードのごとくガタガタ震えている。サイレントモードにすっぞ。

「さ、さささサヨ!むりむり、絶対無理だって!」

ガクガク足を生まれたての小鹿のように震わせながら私にすがりついてくる。それでも男の子か。無理という前にやってみろ。存外なんとかなるものである。私のようにな!

「大丈夫です、この私の作戦には不備しかありませんが、そんな道理私の無理で押し通す!」

訳。がんがんいこうぜ

「それは力業って奴じゃ…。」

説明しよう。

馬鹿男の杞憂を減らすためにはまず馬鹿男の強化をするのがいいだろう。よってレベル上げwith私作戦を開始することにした。内容は簡単、ひたすら私がエネミーをぼこる。馬鹿男を守りつつぼこる。理由も簡単、ゲームでは距離が近いならば本人が倒してなくても倒されたエネミー付近にいるプレイヤーにも経験値が入ったからである。確証?そんなものはない。

「落ち着こう!ねえ、落ち着こう!?絶対無理だから絶対ありえないから、サヨー!?」


結論。いけた。

「気持ち悪い…。自分の体が自分の体じゃないみたいだ、うわあー…気持ち悪いぃぃ…。」

短時間の大幅レベルアップの弊害か、馬鹿男はすごく気持ちが悪いらしい。見た目は至って健康そうなのだが。しかしどれぐらい強くなったのだろう、結構やっていると思うのだが。…ふむ。

「『死神は遠くへ、私はここへ。』』

自分に魔法をかけてから馬鹿男に声をかける。

「ケテル、ちょっと私に全力で殴りかかって。」

何故そんな呆気にとられたような顔をするのだ。死亡防止策もちゃんとしたし、今のケテルのステータスを私が知るには殴ってもらうのが一番わかりやすい。それなりに力がついてきているのなら本人で戦うなどそろそろ実戦も考えていい頃だろう。何、死にはしないさ。私がついているし。

「いやいやいや…!?」

何故拒否する。そんなに嫌がるような話しか?ちょっと私を殴るだけだ、特に問題ない。保険もあるし、馬鹿男程度でなんとかなるようなステータスではないぞ、一応。なんとかなったらなったで作戦成功だし。なんだ遠慮はいらんぞ、報復もしないし。全く。

「じゃあ、エネミーと戦いますか?どちらかしないと私があなたの今の力をはかれないのです。」

そういうと、やっと馬鹿男は決心した。


そして今、馬鹿男改め大馬鹿男はエネミーと対峙している。ありったけの補助魔法を掛けたから死にはしないと思うけど、やはり話しを聞いているとすごく不安だし現在進行形で全身マナーモードになっている。どれだけ言っても私を殴るくらいならエネミーと戦うとのたまったのだ。ガッツは買うが、そんな危険をおかす理由が私には皆目見当がつかない。今からでも思い直さないだろうか。

邪魔をしないように周りのエネミーを凪払いながら見守っていると

「う、ああああぁぁあ!」

大馬鹿男は不良に殴りかかる一般人のごとく、危なっかしい体勢で駆け寄っていく。ダメだ、あれはもう色々とダメだ。エネミーとの戦いは大馬鹿男にはまだ早い。走り方がなっていない?速さが足りない?そんなことではない。あれはおそらく何も考えないで突っ込んでいる。それができるほど彼のスペックは

「お、らあぁあ!」

ドゴンッ

「…へ?」

陥没した大地。直撃は避けたのだろう、しかし体の一部を欠損したエネミー。なんらかのスキル?精霊の加護?理由はわからないが目の前の状態を生み出したのが大馬鹿男であることだけは確かである。

「らぁ!ぜいっ!はあぁ!」

大振りな攻撃は的確さなどとは程遠い。しかし掠っただけで小さくない傷ができる。少なくないダメージ、途切れない攻撃。エネミーは徐々に追い詰められ、ついにその直撃を食らってしまう。

「ぜいやあぁぁぁあ!」

エネミーの体を捉えて地面に叩きつけるように振り下ろされる腕。たたきつけられたエネミーごと大地が陥没した。エネミーの死体は、かなり悲惨な状態だ。ぐちゃぐちゃである。詳細に言ってしまったらR 18になってしまうので詳しくは省いて擬音語でお送りするが、ぐちゃぐちゃで、だくだくで、ばきぼきで、べっちゃりである。…私に国語の才能がないのはわかった。

「あ、はぁ…はぁ…は、ふっ。」

エロい声で喘ぐな、私の耳を犯す気か。しかしこの惨状を見てふと私は思い出した。


そういえばこいつ弱いけどドラゴンだった。


つまり私がやったことって初期状態は弱いけど大器晩成なドラゴンの育成?あらやだ、私ったら余計なことしちゃった的な?

「サヨ、サヨ!」

真剣に悩む私の耳にはしゃいだ大馬鹿男の声がはいる。仕方なくそちらを見れば返り血でべたべたな大馬鹿男が嬉しそうな顔でこちらを見ていた。投げたボールを取ってきた犬のような顔である。

「俺、倒せた!俺強くなった!」

尻尾がついていたら、褒めて褒めて!とぶんぶん振ってそうな興奮具合である。生暖かい目で見てしまった私は悪くない。そうだな、大馬鹿男はドラゴンの前に馬鹿だったな。こいつなら大丈夫だ。

「はい、お疲れ様です。頑張りましたね。」

そういうと照れるように頭をかいているがその手、返り血でべとべとだぞ、血は取れにくいし清めてからにしないと面倒だと思うぞ。

面白いから言ってやらないが。


大馬鹿男の今日の風呂時間が長くなった、とだけ言っておこう。

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