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そして私は今日もドラゴンの心臓を齧る  作者: ヨハン@小熊
ep1:そして私は始まりの心臓を齧る
17/50

心臓を齧るのは狩りに勝る楽しみだ。

風呂が出来たことに浮れに浮れ、事あるごとに馬鹿男を褒めちぎり料理も奮発、お風呂に入ってさぁ寝ようと布団に入ってからふと気づく。そういえば精霊とはなんぞや?と。しばらく考えてみたが、答えが出なかったので自分には関係ないことだしと割り切って記憶から消去、夢の世界へ旅立つことにした。


「じゃぁ行ってきますね。後のことはいつも通りに好きにどうぞ。」

異世界に来て約60日(正直数えてなかったので定かではないが)。2か月経ちましたが異世界のお父さんお母さんついでに弟よ、姉は元気です。友達ができ、最近はちょっと馬鹿で手のかかるペットも飼いだして悠々自適なワイルドライフを送っておりますがそちらはいかがでしょうか。

ゲームではカンストだったけどこちらの世界ではまだまだ私も伸び盛り(レベル的な意味で)。にょきにょきめきめきレベルを上げております。

…と、いうわけで今日はダンジョンに挑もうと思います!(キリッ)

え?ダンジョンの敵は強いからしばらくおあずけとか言ってなかったっけ?ですって?フフフ、ぼっちプレイヤーを舐めないでいただきたい!一人で効率よくレベルを上げる方法、敵のパターン把握など一か月もあれば事足りるわ!…まぁ普通にギルドやら固定PTやら組んでたら情報共有して新フィールド出てからその対策まで3日で方針決まるとかざらだけどね。あれ、目から汗が出てきた。

まぁいい。とりあえず久しぶりに歯ごたえのある敵に会えそうで血が滾る。心が震える。もう何も怖くない。…なんか死亡フラグ混ざってたがまぁいいだろう。所詮死亡フラグなぞ弱者の言い訳にすぎん!楽しみすぎt…いや、対策を練るために徹夜していた私に死角はない!死角はない!死角はないのだ!(大事なことなので三回言いました。)


「…なんか今日のサヨ様子がおかしかったな、足元も覚束ない様に見えたし、大丈夫かな…?」


「『死神は遠くへ、私はここへ』」

敵を殲滅しつつ補助魔法を掛け直す。今かけたのは最近覚えた聖騎士のスキルで即死ダメージを一度無効にするものだ。このスキルのおかげで一か月という短期間でダンジョンに挑む気になったと言っていい。

そういえば即死技を持っている相手によくパターンを見極めようとするな?という質問がある…可能性を見越して私が一か月してきたことをざっと説明しよう。

基本は雑魚エネミーはひたすら通常攻撃のみで倒し、ドラゴンが来れば高威力スキルを使って一撃で倒す。ざっとこんな所だろうか。それではドラゴンのパターンもへったくれもないと思うだろうがここでダンジョンの付近一帯のエネミーの性質についての話が出てくる。最奥ドラゴンを除き、基本的に即死技はドラゴンにとっての必殺技と言っていい。そして必殺技を出すとき必ずエネミーは何らかの兆候を示す。その兆候はダンジョン付近のエネミー全てに共通する。たとえばフェアリードラゴンなどは羽が禍々しい赤に染まるのだが、これは第三ダンジョン全てのエネミーに共通する兆候だ。

そうして慎重に見極めつつ倒していく。そしてパターンを覚える。……と、言えばかなり地味かつ簡単そうなのだがこれは結構面倒くさくて大変なのだ。

だって万が一食らって即死だったら私ジ・エンドだし。死ぬのが嫌というわけではないが出来るなら気を付けるだろう、普通。

しかし今回この即死無効スキルを手に入れて私は前より大胆にパターン把握が可能、ダンジョンに行ってみようと思った次第である。

「さて、今日も張り切っていきますか!」

今日もいっぱい狩るぞー!


日課というほど毎日エネミー狩りをしているが、全く飽きがこない。狩りに勝る趣味はあるだろうか?…ドラゴンの心臓ぐらいかな。新しいものは勿論既に何度も食べたものも良い。手にした時の達成感、食した時の幸福感、まさに最高!お風呂と睡眠は殿堂入りなので別枠です。

「ぜえぇぇぃ、やぁぁぁぁああ!」

太刀を振るい、敵をなぎ払う。それでひとまず周りのエネミーは片付いた。ダンジョンの敵は確かに強い。以前拠点としていたダンジョンよりも今のダンジョンの敵の方が強い。レベルも上げた、強力なスキルも手に入れた。それでも用心しなければ、たった一人の私はちょっとしたことで命取り、窮地に陥りかねない。しかしやはり私も気が抜けていたのだろう、致命的なミスをしてしまった。

「『死神は遠くへ、私はここへ』」

新しいこの強力なスキルだが、短い効果時間と発動時の長い硬直時間がネックである。周りの敵を一掃してから使うのなら安全だ、問題ない。

…安全地帯でもないダンジョン内で愚かにも私はその決定的な隙を作ってしまった。

「…ー!?」

何かの気配に気付いても既に手遅れ。スキル発動の硬直時間を狙っていたと言わんばかりに、死角からの攻撃が直撃する。

「うぐ、は…!?」

衝撃に吹き飛びながら体勢を立て直そうとして思うように動かない体に舌打ちをしたくなる。状態異常の麻痺だろう。それもかなり高レベルとみえる。パッシブスキルの状態異常緩和がなければ動けなかったかもしれない。しかし動けるとは言っても体は思うように動かず、よくて通常攻撃ぐらいしか出来ないだろう。スキルを使おうとすれば間違いなく時折くる痺れによる硬直で中断される。

そして…

「あ、は…じょうだ、んでしょ…?」

周りを埋め尽くすエネミー。そして先程一撃をかましてくれたと思われる見知らぬドラゴン。これだけのエネミーがいきなり現れるとは思えない。つまりドラゴンにはエネミーコールなどに類する能力があるのだろう。対象を痺れさせて動けなくして大量のエネミーを呼ぶ。悪質なトラップのようだ。状態異常の効果を優先したためか先程受けたダメージは微々たるものだ。しかしこれから袋叩きと思うと冷や汗が出てくる。このエネミーの状態異常の効果時間は不明だ。だからなんとかそれまで耐えしのげば…。

「ピュイイイイィィィィ。」

ドラゴンの声が鳴り響く。更に増える敵の気配。

「…は、じょーと、うじゃ…ない。」

エネミーの陰に隠れるようにドラゴンの姿は奥へ移動する。しかし逃げるということはないだろう。恐らくエネミーコールや先程の状態異常が強力なだけの戦闘力の低いタイプなのかもしれない。だがここで逃げ出さなかったことを後悔するが良い、爬虫類め。絶対耐えきって地獄に叩き落としてやる。勿論逃げても地の果てダンジョンの果てまで追いかけて叩き落としてやるけど。


「く、そがぁ…い、ぐ。」

定期的に呼ぶのだろう、エネミーの数は全く減らない。押しつぶすほどのエネミー、思うように動かない体。受けるダメージが微小であろうがそれを何度も受ければいずれ死に至る。あれからどれだけ経った?一分?二分?まさかそれにすら至っていない?わからない。考えている暇はない。早く、早く状態異常が消えないと。はや、く…。

「…あ。」

目の前に、大きく振りかぶられた腕があった。避けようとしても体が上手く動かず、食らってしまう。

視界が真っ赤に、波打っている。もう残り僅かということだろう。残念私の旅は終わってしまった!

…なーんて。

「訳がないでしょうがあぁぁぁぁああ!」

パッシブスキル『覚醒』。一定以下のHPの時、全状態異常回復、攻撃防御二倍という起死回生スキルだ。効果時間は五分。この状況を打破するには十分な時間だ。

「『瞬獄・椿』』

太刀を背負い、ドラゴンに向かって駆けながら邪魔なエネミーをスキルで吹き飛ばす。スキル硬直を素早く他スキルを使ってキャンセル。使うのは『一閃・爆炎』周囲に炎属性の衝撃波を出す。これで先程の攻撃で殺し損ねた分を潰す。そして周りにスキル発動に邪魔になりそうなエネミーがいないことを確認してからそれを使う。

「『我が剣は至高の一振り』」

見知らぬドラゴン、あとその他モブ達よ。お前たちには過ぎたものだが、あえて見せようこの一撃を!

「『戦神よご照覧あれ。我が一撃は神も貫く』」

ふ、今更攻撃して邪魔しようとは遅い遅い、遅すぎる!この攻撃は最初の詠唱中以外は詠唱者を殺さない限り潰すことは不可能!

「『神技・無名』」


「おかえ…だ、大丈夫か?」

満身創痍で帰った私に馬鹿男が聞いてくる。これが大丈夫に見えるなら私は眼科を勧めるよ。眼科はないのかな?じゃあそんなイカレた目はいらないよね、潰してしんぜよう。

「お風呂沸かしてあるよ。とりあえず入ってくる?」

馬鹿男、お前本当使える馬鹿だな。


お風呂に入りつつ先程のドラゴンからゲットした心臓を頂く。お湯に血が混じらないように慎重に食べる。…お風呂でまったり心臓をかじる。まさに至福の時。新しいアバターアイテムも手に入ってほくほくである。しかしあのドラゴンの性質上エネミーコールとかそういうスキルが貰えると思ったのだが予想が外れたな。

アバターアイテムは白スクール水着にニーソだった。本当この世界の神はいい趣味してるな、絶対殺しにいこう。

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