皆でかじれば美味しさ二倍
一週間。
エネミーの行動パターンも把握しつつあり、それなりに良好だ。強いて言うならば未だ水を引く目処が建っていないことだろうか?しかし時間は腐るほどあるのだ、地道にやっていこう。
そしてメイフィーのことなのだが…
「きゅきゅ?」
夢中で食べていた果実から顔を上げてメイフィー首を傾げてこちらをみてきた。可愛い。
会った翌日にまた同じ所で再会したのだが、ふと手元の果実を食べるのだろうか?と思い付きさしだした所幸いにも好物だったらしく、嬉々として果実を食べ出した。それから一日二回会いに行く度果実を持って一緒に食べるのだが…
『メイフィーの友好度が上がりました。』
普通の好感度の上がりようを知らないのでなんとも言えないのだがこれはもしや…いや、もしかしなくても餌づけではなかろうか?メイフィーのモコモコとした毛を撫でる。メイフィーは嬉しそうに鳴く。
可愛い。最初は全く触らせてくれなかったのに、たった数日で変わるものである。やはり食は偉大である。
ちなみに私はメイフィーと会ってから基本的に食事はメイフィーと取るようにしている。なんとなくメイフィーと一緒に食べているほうが美味しい気がするからだ。一人で食べるより誰かと一緒の方がやはり良い。
「きゅい!きゅいきゅい!」
果実を食べ終わったメイフィーが私の服をきゅいきゅい鳴きながら引っ張ってくる。可愛い。
今まで触らせてくれたけれどこういう能動的な行動をされるのは初めてだ。友好度が上がったからだろうか?
もしかして何らかのイベントが起こるのだろうか。少々期待してしまう。
「きゅい!」
どうやらこの子は私はどこかへ案内したいらしい。
二人だけの秘密の場所とか?もしかしたら自分達の住処とか?
想像するだけでテンションが上がる。メイフィーに連れていかれるなら私はダンジョンの奥底までついて行くかもしれない。いや、ついて行ってもかまわない!
「きゅいー!きゅきゅい!」
メイフィーに付いていくことおよそ20分。私は…
楽園にいた。
「きゅ?」
「きゅいきゅーい!」
「きゅきゅきゅっ。」
なにこのもふもふ天国。メイフィーと同じ種族なのだろうウサギヒツジモドキ(仮)族が大量にいる集落らしい所。それが私がメイフィーに連れてこられたところだ。彼らは最初こそ警戒していたが私が何もしなかったこと、そしてなにより同族のメイフィーに連れられてだったことがあってか近寄ってきて興味津々といったかんじに匂いをかいで来たりしてきている。そういうわけで今私の周りはもふもふ天国と化している。
天国にいる父さん母さんついでに弟(※誰一人として死んでいないと思う。たぶん)。
姉さんは今幸せです。幸せすぎて有頂天です。
「きゅきゅきゅーきゅい!」
「きゅいきゅい!」
「きゅきゅー!」
もふりとした毛に包まれたと思ったら足が地面から離れていた。視線も空に、どうやら私は背負われているらしい。驚きで硬直していればウサギヒツジモドキ(仮)達はきゅいきゅい鳴きながらわたしを運ぶ。動くたびにもふもふとした感触が包んでくれて本当に幸せである。私は今からどこに連れていかれるのだろうか…もしかしてもふもふな世界とか?想像するだけで幸せだ。
もふもふ運送に運ばれながら私はうつらうつらと眠気に襲われてきた。少し寝てしまっても構わないだろう。
「起きたら何故か宴会状態だった。」
正直まだ何も把握していないがこういわなくてはいけない気がした。
いや、言った通り目の前では宴会が開かれている。誰の?もちろんウサギヒツジモドキ(仮)達によるものだ。嬉しそうに鳴きながら踊るように体を揺らしたりしながら食べたり飲んだりしている彼らを見ると、とても微笑ましいのだが…。微笑ま、しいのだが…
「きゅいー!」
私が起きたことに気づいたらしいメイフィーが近寄ってきた(ウサギヒツジモドキ(仮)の中にいても一週間も仲良くしたのだ、見分けくらいはついている。たぶん)。鼻をこすりつけてきているがこれはもしかして甘えているのだろうか。そこまで懐かれるとこちらとしても気分がいい。しかし
「きゅ!」
なんでそんなビビットピンクな塊をこちらに向けて出してくるのか。明らかに食べられる色をしていないぞそれは。そういえばこのエリアにはそんな色をしたエネミーもいた。思いっきり毒持ちのエネミーが。
この塊はもしやそいつの肉なのだろうか。どう見ても焼いても干してもいない生と主張するかのようにつやつやてかてかしたこの塊はもしかしてあの毒持ちエネミーのものなのだろうか。そしてもしかしてメイフィーはこれを私に食べろと言いたいのだろうか。確かに視界に移るウサギヒツジモドキ(仮)達の中にはこれと同じものらしい塊を嬉々として食べているものもいる。その光景にもしかして雑食だったのだろうか、などとどうでもいいことを考えて必死に現実逃避しようとした。いざって時用の状態異常回復のアイテムも勿論持っているし、毒耐性防具などを使わなくてもそれなりに基礎能力で状態異常耐性もついている。しかし、しかしである。
私は毒を好んで食べるマゾヒストでは断じてない。仮にこれに毒がないとしても(ソロプレイヤーとしての勘がこれが危険であると囁いているが…)こんな気持ちが悪い色の食べ物食べたくない。できるのなら。
相手が初対面だったり、人間だったら謙虚に断っただろう。
しかしここでこの食べ物を差し出してきたのはメイフィーだ。もっふもっふだ。仲良くなりたてのもふもふ様なのだ。これを断る人はいるだろうか?
いると思うが、断る私は私ではない。女は度胸。なんでもやってみるものだ。
「ありがとう、メイフィー。ありがたくいただくよ。」
そして私は塊を口にして
(本日は、この小説を読んでいただき誠にありがとうございました。申し訳ありませんがこの小説は大変不適切な表現があったため削除されまし
「きゅいー!?きゅいきゅいきゅいー!」
は!意識が飛んでいた。間違いなく魂の尾が抜けかけていた気がする。しかしなんといえばいいのだろう、あの味は。人が食べれたものではない。この世のすべての悪の3倍に豆板醤とわさびをいれて15年じっくりことこと煮込んで隠し味にトリニトロトルエンをいれたような味だった。嘘です。しかし誇張とはいえそんな感じの味だったとしか言えない。残念ながら私にはウサギヒツジモドキ(仮)の好物は10年ほど早かったようだ…。
いや、よく見たら他の食べ物もどっこいどっこいではないだろうか。視界に入れないようにしていたがよく見ればウサギヒ(略)達が食べているものは大体原色な肉らしい塊ばかり。果実なんかもあるにはあるが、なんというか…デザート?みたいなものなようだ。彼らの主食はあの食べれる色をしていない肉のようだ。
人と一緒に食事をとるのは楽しい。これは確かである。しかし相手が自分と同じ味覚と価値観を持っていることが前提なようだ…。
その後メイフィーの配慮か果実のみ細々と食べて私は宴会を乗り切ることに成功した。もふもふ達は食べるのが上手いらしく、あんなに体を揺らしたり騒ぎながらもそのもこもことした毛にはなんの汚れもついていなかった。もしかしてあの毛には自動浄化能力があるというのだろうか。うちの家具もそういったエネミーアイテムを使用して付加しているが、体毛に浄化能力がある生き物はドラゴン系でしか見たことがない。もしかしたらこのエネミーはかなり希少な種族なのだろうか。
「きゅきゅーい!」
色々と名残惜しいが、もう夕暮れだ。家に帰らないと夜になったら面倒である。
メイフィーのほか、友好関係を結べた何匹かが集落の前まで見送ってくれた。
またいつか来よう。
…食事は慣れる気がしないけれど




