流れて来た記憶。
私はまだ七つの子供だったけれど、父と母がこの縁談を喜んでいないのはわかった。
母が私を抱きしめる。まるで王から私を隠すかのように。
「それは本当の話なのですか?母が夢枕に立ったのは?」
「もちろんだ。」
父はため息をついた。
「…お断りは出来ないのでしょうな。」
喜ばれると思っていた王の顔が強張る。
「…不満か?従兄弟殿。」
「魑魅魍魎渦巻く王宮。命を狙われることも多い。…それは貴方が1番ご存知でしょう。」
父の声が低くなる。
母が私を抱きしめる力が強くなる。
姉が顔を覆っている。
「それは…」
…命を狙われる?
え、何?怖い。
その時。
ぐわん。
頭の中で音がした。
いきなり流れ込んでくる記憶。
光る刃物、
人々の悲鳴、
腹部への痛み。
え?これは何?
場面が切り替わる。
溢れる車。時間通りに来る電車。
コンビニ。ビル。
パソコン、スマホ。
情報が。流れこんでくる。
…記憶と共に。
「勉強しなさい。」
「努力しなさい。」
「男性に負けては駄目。」
「貴女なら出来る。」
「失望させないで。」
これは?それは?あなたは?わたしは?
ああ!!
昭和平成令和、そして日本。
溢れる情報に頭が割れる様に痛い。
「こわい!こわい!こわい!殺されるのはこわい!」
「え?どうしたんだ?」
「王、アナタのせいですよ!
アナタだって!何度も命を狙われてウチに匿われたでしょう!!」
「いや、それは。」
「…アルヴァ!あなた真っ青で!熱があるわ!」
母の悲鳴。
こっちが現実なのか。職場で部下を庇って刺されたのは過去か?
まさか?生まれ変わり?
みんながハマっていたアニメやラノベの?
…異世界転生??
「アルヴァ!」
父と母の悲鳴を聞きながら、
…私の意識はそこで途切れた。
二日間高熱を出し、悪夢にうなされた。
自分の悲鳴で起きた。
「大丈夫よ、アルヴァ。」
母が抱きしめてなだめてくれる。
そしてまた眠りにつく。
その繰り返しだ。
前世の日本の記憶を思い出していた。
家族の希望で、頑張って勉強していい学校に(偏差値が高くて世間に知られている)入ったこと。
それから、大企業に入って管理職になったこと。
生涯独身で仕事に生きて…年下の女性部下を職場に押しかけて来たストーカーから守って…刺されたこと。
…生涯独身だったのは長年付き合った彼に婚約破棄されたことを。
「なんだ。あれだけ来世は男に生まれたい、と思ったのに。
……また女に生まれたのね。」
気がついて最初に口から出た言葉がこれだった。




