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転生したら奴隷にされたのでリーマンショック起こして異世界経済崩壊させます  作者:


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第33話 借金で買う未来

魔石鉱山権の値札は、静かに上がった。


一口100万ルクだった北灰鉱山の札は、三日後には150万ルクになった。


一週間後には、210万ルク。


十日目には、300万ルクの買い注文が出た。


取引所の前に、人が増えた。


初日は工房主や倉庫組合が多かった。

魔石を実際に使う者たちだ。


次に来たのは、下級貴族だった。

屋敷に魔灯を入れたい者。

将来の収入が欲しい者。

白鷲銀行の騒ぎで、銀貨をただ預けておくのが怖くなった者。


その次に来たのは、鉱山を一度も見たことがない者たちだった。


「北灰鉱山はどちらの方角に?」


「北です」


「どのくらい北だ」


「馬車で十日ほどと聞いております」


「遠いな」


そう言いながら、その貴族は署名した。


見たことがなくても、値札は見える。

採掘坑の暗さは知らなくても、取引所の数字は読める。


鉱山権は紙になった。

紙になれば、馬車に乗せなくても動かせた。


そして、紙になった鉱山権は、金を借りる時に差し出せるものになった。


グラント商会の向かいにある小さな奥の部屋で、下級貴族が書類に手を置いていた。


鉱山権一口。

今の値段、300万ルク。


借りられる金額、200万ルク。


返せなかった時に取るもの、北灰鉱山権一口。


貴族の指が震えた。


「本当に、これで200万ルク借りられるのか」


商会員は笑顔で頷いた。


「王国が認めた取引所で売買されている権利です。今日の値段は毎日掲示されています」


「鉱山権を手放すわけではないのだな」


「返済が守られる限りは」


商会員は、書類の端を指で叩いた。


返済遅延時、取ること。


細い字だった。

だが、そこだけ朱線が引かれている。


「返せなければ、こちらの権利を商会が売ります」


「銀貨の代わりに、この紙を置いていくようなものか」


「そうお考えください」


貴族は鉱山権の紙を見た。

紙は薄い。

だが、今は200万ルクの銀貨袋より、軽く持てる未来に見えた。


貴族は息を吐いた。


借りた200万ルクで、彼は次の鉱山権を買った。


その翌日、同じ貴族は夜会で言った。


「私は二口持っている」


相手の貴族が目を細めた。


「もう二口か」


「遅いくらいだ。魔石は王都の血だぞ」


その言葉は、すぐに別の卓へ移った。


鉱山権を持っている者は、賢く見えた。

鉱山権を預けて金を借り、借りた金でさらに買った者は、もっと賢く見えた。


値札が上がっている間だけは。


王都の通りにも変化が出た。


馬車職人の店には、新しい注文札が掛かった。

金具に魔石灯を仕込んだ夜会用馬車。

座席を柔らかくした貴族用馬車。

車輪に補助魔具をつけた高級馬車。


石工たちは、新しい屋敷の壁を積み始めた。

古い門の上には、魔灯の看板が増えた。


店先には、鉱山権相談受付、魔石収入で屋敷改装、将来収入前払い可という札が並んでいた。


夜会では、家名より口数が話題になった。


「何口お持ちで?」


「北灰を三口。東割を一口」


「東割はまだ安い。今のうちですな」


銀貨をどれだけ持っているかより、鉱山権を何口持っているかを自慢するようになった。


バルガス男爵も、皆が鉱山権の口数を自慢する様子を見ていた。


彼は取引所の入口で、値札板を睨むように見上げていた。

隣には、屋敷の執事がいる。


「珍花とは違う」


バルガスは低く言った。


「これは腐らん。魔石は灯りにも炉にもなる。王国も認めている。今度こそ、先に動いた者が勝つ」


執事は黙って頭を下げた。


珍花男爵。


その呼び名はまだ消えていない。

夜会の隅で、咳払いのように笑われることがある。


だから、バルガスは笑われた名前を消したかった。


見栄で失敗した男ではなく、先に儲け話を見つけた男だと思われたかった。


「北灰を二口」


彼は言った。


「屋敷の修繕費を返せなかった時のために出す。足りなければ、税を集める権利の一部も付ける」


執事の顔が少し強張った。


だが、バルガスは値札板から目を離さなかった。


「今度は花ではない。本物の鉱山だ」


レイジは、その日、取引所の反対側にいた。


レイジは白鷲銀行の貸付台帳、グラント商会の貸付申込控え、鉱山権の売買記録を順に見た。


三つの紙を並べると、同じ名前が増えていく。


買った者と借りた者、返せなかった時のために差し出した者が、同じ紙の上に並んでいた。

さらに買った者。


リーゼが横から覗いた。


「値上がりしているから、皆、安心しているのですね」


「安心ではない」


レイジは答えた。


「まだ売っていないから、本当に儲かったわけではない。値札が上がって、勝った気になっているだけだ」


値札板では、北灰鉱山が300万ルクをつけていた。


王都で話される内容が変わっていた。


昨日まで銀行前で銀貨を心配していた者が、今日は未来の採掘収入を語っている。


魔石は本物だ。

必要とされている。

鉱山から出れば、金になる。


レイジはそれを否定しなかった。


ただ、値札の横に置かれた借入申込書を見た。


ノアが横から覗き込む。


「魔石って、役に立つんだよね」


「ああ」


「じゃあ、買ってもいいんじゃないの?」


「価値があることと、その値段で買っていいことは違う」


レイジは言った。


「パンは必要だ。でも、一個10万ルクなら買わないだろ」


ノアは少し考えた。


「……高すぎるから?」


「そうだ」


紙を見れば、それが分かる。


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