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英雄なのか?  作者: よろず
アルディア騎士学校
8/32

悪意


ホームルームが終わると、生徒たちは一斉に立ち上がった。

教室は査定結果の話題で持ちきりだった。

「一位はやっぱりアルベルトか二位のアイザックも強いな上位陣は予想通りだな」

そんな会話があちこちから聞こえてくる。

ロイも席を立ちながら大きく伸びをした。

「三十位かぁ……」

「十分だろ」ガレンが言う。

「十分じゃない。せめて二十位台には入りたかった」

「座学を真面目にやれ」

「それを言うな、難しいんだよ」ロイが顔をしかめながら言った。

その様子に周囲から笑いが起こった。

レインはそんな二人を見ながらバックへ教材を入れていた。

順位に特別な感想はないし高くもなく低くもない。

「レインは十一位か」

ロイが言う。

「思ったより高かったな」

「そうか?」

「そうだろ」

「俺は十位以内だと思ってたぞ」

近くの席の生徒が会話へ加わる。

「実技も安定してるし座学も上位だろ」

そんな声が聞こえてくるがレイン本人は興味なさそうに肩を竦めた。

その時だった。

「レイン君」

女子生徒の声が聞こえた。

振り返ると数人の女子生徒が立っている。

「十一位おめでとう。やっぱり凄いよね、今度また勉強教えてよ」

レインは少し困ったような顔をした。しかしレインは

社交的なのだ。周りを不快にする事は極力しない。

「もちろんだよ。いつでもいいからね」

女子たちが楽しそうに笑う。

それを見ていた男子生徒たちから小さなため息が漏れた。

レインは入学当初から女子人気が高い。

整った顔立ちに落ち着いた雰囲気、成績も良いし欠点がないのだ。

本人は気付いていないが、女子たちの間では密かに人気がある。

「羨ましい……」ロイが本気で呟く。

「何がだ」

「全部だ」

即答だった。

再び笑いが起こる。

だが、その空気を面白く思っていない男がいた。

ワル・フォン・ベルグ。

Bクラス十二位。

実技だけならAクラス下位とも渡り合える実力者。

ワルは無言でその光景を見つめていた。

面白くない。実に面白くなかった。

レイン。

レイン。

レイン。

聞こえてくるのはその名前ばかりだ。

十一位。

自分との差はたった一つ。

それなのに扱いはまるで違う。誰も自分を見ない。

誰も自分を評価しない。視線も話題も全てレインへ向いている。

ワルは奥歯を噛み締めた。

何故だ。

剣なら自分の方が上。魔法もそうだ、少なくとも実技では負ける気はしない。

それなのに評価されるのはあの平民なのだ。子爵家の人間である自分ではなく。ありえない事だ。

胸の奥で黒い感情が膨らむ。

最近ずっとそうだった。

授業でも。

訓練でも。

食堂でも。

気付けばレインの名前ばかり耳に入る。

女子生徒たちもそうだ。

自分には見向きもしないくせに、あいつには笑顔を向ける。

正直、理解できない何がそんなにいい。

顔か。

成績か。それとも平民らしい愛想の良さか。

どれもくだらない。

そう思うと無性に腹が立った。

その時だった、

バルドの言葉を思い出す。

――今日からランキング戦を解禁する。

ワルの口元が僅かに歪んだ。

そうか。

なら簡単だ。

証明してやればいい。どちらが上かどちらが強いか。口で語る必要などない。

騎士学校にはそれを決める制度がある。

ワルは静かに立ち上がった。その動きに近くの生徒たち数人が気付く。

自然と視線が集まるがワルは気にしない。

真っ直ぐレインへ向かって歩く。

教室の空気が少しずつ変わっていく感じがする。

ランキング戦解禁初日。

何が起きるかなど誰でも分かる。ワルはレインの前で足を止めレインが顔を上げる。

二人の視線がぶつかる。数秒の沈黙。

そしてワルは見下ろすように口を開く。

「レイン・クロード」

その声には隠そうともしないほどの敵意が滲んでいた。

教室が静まり返る。

ワルはゆっくりと口角を吊り上げた。

「ランキング戦を申し込む」

その瞬間、教室の空気が大きく揺れた。


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