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英雄なのか?  作者: よろず
アルディア騎士学校
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二対


レインがアーマーベべアを誘導していた頃、本隊側ではすでに戦闘が始まっていた。

森を震わせる咆哮と共に現れた巨体に対し、真っ先に前へ出たのはラグナだった。全長三メートルを超えるアーマーベアは人間を遥かに上回る質量を持つ。突進だけでも致命傷になりかねない相手だが、ラグナは一歩も退かず大剣を構えた。

次の瞬間、巨大な前脚が振り下ろされる。

轟音。

大剣と前脚が激突した衝撃で周囲の木々が揺れ、地面の落葉が吹き飛んだ。それでもラグナは耐え切った。腕には凄まじい重圧が掛かっているはずだが、その顔に浮かぶのは苦痛ではなく闘志だった。

「これくらいか!」

雄叫びと共に押し返す。

その隙を逃さずレオニスが動く。側面へ回り込んだ剣閃が肩口を狙い、アーマーベアが反応した瞬間には反対側からグレンが飛び込んでいた。索敵を得意とする彼だが、戦闘能力もまた一年生離れしている。斬撃は浅い。それでも確実に傷を刻み、注意を散らすには十分だった。

さらに後方ではシルヴィアが戦場全体を観察している。

「右へ寄せて。前に倒木があるわ」

その一言だけでレオニスは動きを変えた。

アーマーベアは自分が追い込まれていることに気付かないまま進路を変え、倒木のある場所へ誘導される。巨体ゆえに足場の影響は大きい。わずかに体勢を崩した瞬間、ラグナの大剣が脇腹へ叩き込まれた。

血が飛ぶ、しかし倒れない。

Dランク魔物は甘くなかった。

怒り狂った咆哮が森を震わせる。

その瞬間だった。

森の奥から別の咆哮が響く。

誰もが反射的に振り返った。

聞き間違いではない。

同じ種類。

しかも近い。

そして次の瞬間、木々をなぎ倒しながら二体目のアーマーベアが姿を現した。

その前を走る人影がある。

レインだった。

彼は巨大な前脚を紙一重でかわしながら森を駆け抜けている。押されているように見える。だが実際には違う。

誘導しているのだ。

魔物を。

わざと攻撃を受け流し、距離を保ち、進路を調整することで本隊のいる方向へ連れて来ている。

「連れてきたか」

後方で戦闘を見てたアルドが呟く。

レインは肩越しに答えた。

「村人がいたので」

それだけで十分だった。

二体目を倒さなかった理由も、ここまで連れてきた理由も理解できる。

そして次の瞬間、戦場の様相が一変した。

二体のアーマーベアが並ぶ。

森の中に二つの巨体が立つだけで圧迫感が違う。普通の一年生なら逃げ出していても不思議ではない光景だった。

しかし一年Sクラスは違った。

誰一人として後退しない。

恐怖はある。

だが、それ以上に闘志があった。

レオニスは瞬時に戦況を見渡した。

二体の位置。

仲間達の配置。

森の地形。

そして即座に判断する。

「二体同時に管理する!」

声が飛ぶ。

「ラグナ、俺、グレンで前へ! シルヴィアは戦況分析! フィオナ、魔法準備! アイリスとセドリックは支援を切らすな!」

全員が即座に応じた。

それは訓練された兵士のような動きだった。

アーマーベアが再び突進する。

今度は二体同時だった。

片方を避けても、もう片方が来る。

普通なら陣形が崩れる。

だが一年Sクラスは違う。

ラグナが正面で一体を受け止めると、レオニスとグレンはもう一体へ向かう。剣と魔物の爪が何度も交錯し、その度に金属音と咆哮が森へ響いた。

そして後方ではフィオナが静かに魔力を練り上げている。

周囲の空気が熱を帯び始めた。

魔力の密度が目に見えるほど濃くなる。

レインは少し離れた場所からそれを見ていた。

思わず感心する。

魔法の規模が一年生のものではない。

フィオナだけではない。

アイリスは補助魔法を展開しながら前線の負傷を即座に癒している。セドリックは防御魔法を維持しつつ土属性魔法で魔物の足場を崩し、シルヴィアは戦場全体を見ながら最適な指示を飛ばし続けていた。

全員が戦える。

全員が強い。

その上で得意分野まで持っている。

それが一年Sクラスだった。

レインは小さく魔力を流した。

風属性初級補助魔法。

誰にも気付かれない程度の強化。

踏み込みを僅かに速くし、身体を少し軽くするだけの地味な魔法だ。

だが戦場ではその僅かな差が生死を分ける。

風が静かに前線を包む。

同時にフィオナの詠唱が完成した。

「――焼き尽くせ」

放たれた炎槍は一直線に飛び、アーマーベアの肩口へ直撃する。

爆発。

轟音と共に火柱が上がった。

巨体が大きく揺らぐ。

その隙をレオニスは見逃さない。

「今だ!」

ラグナが踏み込む。

グレンが死角へ潜り込む。て

一年Sクラスの総攻撃が始まる。


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