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英雄なのか?  作者: よろず
アルディア騎士学校
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魔物のランク


「明日から三日間、お前達は学外任務へ出る」

アルドの言葉が教室へ落ちる。

誰も驚かなかった。

むしろ当然だと言わんばかりに全員が地図へ視線を向けている。

レインだけが少しだけ内心でため息を吐いた。

普通の学生生活とは何だったのか。

そんな疑問は今さら口にするだけ無駄だろう。

アルドは地図の北方にある一点を指差した。

「目的地はここだ。王都から北西へ二日ほど進んだ森林地帯。近隣の開拓村から被害報告が上がっている」

地図には街道と森、そして三つほどの村が描かれていた。

王都から少し離れた辺境だ。

盗賊討伐演習で向かった地域よりさらに北に位置している。

「被害の原因は魔物だ」

その言葉に教室の空気が僅かに変わる。

今度は全員が真剣な顔になった。

アルドは続ける。

「対象はDランク魔物一体。討伐及び周辺調査が今回の任務となる」

そこでラグナが眉を動かした。

「Dランクですか」

「そうだ」

短い会話だった。

だが反応を見る限り、その意味を全員理解しているらしい。

レインだけは黙って話を聞いていた。

そんな様子に気付いたのか、アルドは視線を向ける。

「レイン。魔物ランクについて説明できるか」

「詳しくは知りません」

正直に答える。

夜間奇襲訓練でも魔物と戦ったが、ランクについて深く学んだ記憶はなかった。

するとアルドは頷いた。

「いい機会だ。全員復習も兼ねて聞いておけ」

そう言うと黒板へ七つの文字を書いた。

教室に並んだ文字を見ながらアルドは説明を始める。

「魔物は危険度によって七段階に分類される。最下位がFランクだ」

その言葉にレインは夜間奇襲訓練を思い出した。

あの時襲ってきた犬型魔物達である。

「お前が一年Bクラス時代の夜間奇襲訓練で相手にしたのがFランクだ。数が増えれば脅威になるが、個体としては一般人でも対処可能なレベルになる」

教室の何人かが頷く。

「Eランクになると話は変わる。見習い騎士や冒険者数名で対応する相手だ。村一つなら十分脅威になる」

アルドの指がさらに上へ移動する。

「Dランクは正規騎士の討伐対象になる。単独でも一般人を容易に殺傷し、複数いれば小規模な村なら壊滅させる力を持つ」

そこまで聞いてレインも理解した。

今回の任務は学生向けの演習ではない。

実際に騎士団が扱う案件なのだ。

「Cランク以上になると騎士団は小隊単位で出動する。Bランクなら中隊規模。Aランクともなれば席持ち騎士が前線へ出ることも珍しくない」

そして最後にアルドの指が最上段へ止まった。

「Sランク」

教室が静まり返る。

「国家災害級だ」

それだけだった。

それ以上の説明は不要だった。

騎士学校へ入学した者なら誰でも知っている。

王国史に名を残す大災害。

都市の崩壊。

辺境領の消滅。

そうした記録の中心には必ずSランク魔物が存在している。

アルドは再び地図へ向き直った。

「今回の対象はDランクだ。お前達なら十分対処可能な相手だが、油断すれば死人も出る」

その言葉に軽い空気は完全に消えた。

ラグナも。

レオニスも。

シルヴィアも。

全員の目付きが変わっている。

これがSクラスだった。

任務の話になった瞬間、誰もが学生ではなく騎士候補へ切り替わる。

アルドはそんな生徒達を見渡しながら続けた。

「勘違いするな。今回の目的は討伐だけではない」

そう言って地図上の森を指でなぞる。

「索敵」

別の地点を指す。

「追跡」

さらに村を示す。

「情報収集」

最後に魔物出現地点へ指を置いた。

「そして討伐だ」

教室の空気がさらに引き締まる。

「強い剣士なら騎士団にもいる。だが指揮官は戦うだけでは務まらん。敵を探し、動きを読み、補給を管理し、人を生かして帰還させる。それが今回お前達へ求める課題だ」

その言葉を聞きながらレインは周囲を見る。

なるほど、と少し納得した。

レオニス。

シルヴィア。

セドリック。

彼らがSクラスにいる理由が何となく見えてくる。

単純な強さだけを集めた集団ではない。

将来の騎士団を率いる人材を育てる場所なのだ。

「出発は明日早朝」

アルドは地図を丸めた。

「本日の授業はここまでだ。各自準備を整えておけ」

その一言で説明は終わる。

だが誰一人として席を立たなかった。

全員がそれぞれの考えを巡らせている。

Dランク魔物。

初めてのSクラス任務。

そして同じ班となる七人の実力。

レインもまた静かに窓の外へ目を向けた。

どうやら明日から始まる三日間は、思っていた以上に面倒なことになりそうだった。


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