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英雄なのか?  作者: よろず
アルディア騎士学校
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「一年Bクラス、レイン・クロードについて話したい」

エドワードがそう告げると、セシリアは用意していた資料を開いた。今回の会議そのものはリリアの提案によって開かれたものだが、その理由を理解している者は本人を含めてもほとんどいない。少なくとも他のSクラスの面々は、一人の一年生のために緊急会議を開く必要があるのか半信半疑だった。

説明は数分に及んだ。

夜間奇襲訓練での行動。

合同訓練での評価。

ランキング戦の戦績。

そして盗賊討伐演習での働き。

資料に並ぶ内容はどれも優秀だった。一年生としては十分すぎる成果であり、むしろ将来を期待される人材と言っていい。だが説明が終わった時、生徒会室にいた大半の感想は似たようなものだった。

優秀だ。

だが、それだけである。

最初に口を開いたのはヴィクトルだった。

集団戦闘を得意とする彼は資料を閉じながら静かに言う。

「将来有望だな」

その言葉にユリウスも頷いた。

「卒業後は騎士団でやっていけるでしょう」

ミレーヌも同意する。

誰も否定していない。

むしろ高く評価している。

だが二年Sクラス全員を集めて議論するほどかと言われれば話は別だった。

「私も同意見です」

腕を組んだままノアが言う。

「優秀な生徒です。しかし特別ではない」

短い一言だったが、それがこの場の総意に近かった。

現時点ではAクラス上位候補。

おそらく来年には一年Sクラスへ上がるだろう。

だが、それ以上の何かは見えない。

だからこそ誰もが疑問だった。

何故リリアがここまで拘るのか。

自然と視線が集まる。

当の本人はというと、資料を眺めながら妙に楽しそうにしていた。

「リリア」

クリスティーナが声を掛ける。

「そもそも今回の会議を提案したのはあなたよ」

「うん」

「何が気になるの?」

リリアは少し考えた。

だが数秒後には諦めたように笑う。

「分かんない」

室内が静まり返る。

レオンが思わず聞き返した。

「やっぱり分からないんですか?」

「うん」

リリアは悪びれもせず頷く。

「なんか気になる」

今度はアレスが頭を抱えた。

「それで会議を開いたのですか」

「そうだよ?」

「理解できません」

当然だった。

理解できる者などいない。

リリア自身ですら説明できていないのだから。

それでも彼女は首を傾げながら続ける。

「だって面白いんだもん」

その言葉にクリスティーナはため息を吐き、ヴィクトルは苦笑し、ノアは無言で天井を見上げた。

実際、資料を何度見返しても特別な部分は見つからない。

強い一年生。

それだけだ。

だがエドワードだけは少し考えていた。

リリアの勘は馬鹿にならない。理屈にならないからこそ厄介だ。

しかし過去を振り返れば、その勘によって有望な人材を見つけてきたことも事実だった。

やがてエドワードは小さく息を吐いた。

「結論は簡単だな」

全員の視線が集まる。

「会えばいい」

その瞬間だった。

「やった!」

リリアが勢いよく立ち上がる。

一方でアレスは即座に反対した。

「反対です」

あまりにも早かった。

レオンが吹き出し、ヴィクトルが肩を震わせる。

だがアレスだけは真顔だった。

「理由を聞こう」

レオンが笑いを堪えながら尋ねる。

するとアレスは一切迷わず答えた。

「リリア姫が興味を持っています」

室内が静まる。

「以上です」

そして次の瞬間、生徒会室は爆笑に包まれる。


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