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英雄なのか?  作者: よろず
アルディア騎士学校
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2年Sクラス


盗賊討伐演習から数日後。査定発表を翌日に控えた放課後、生徒会室には普段とは少し違う空気が流れていた。

長机を囲むように十三人の生徒が座っている。二年Sクラス。アルディア王立騎士学校において頂点へ立つ者達だった。卒業後は十三騎士団の幹部候補、あるいは王国軍将校候補として期待される人材ばかりであり、この部屋には王国中から集められた天才達が揃っている。

もっとも、その雰囲気は世間が想像するほど堅苦しいものではなかった。

窓際ではクリスティーナが静かに資料へ目を通している。副会長として会議の準備を進める彼女は普段と変わらない様子だったが、その隣では書記のセシリアが山のような報告書と格闘しており、少し離れた場所では会計のクラウスが帳簿へ視線を落としていた。

そんな中で最も退屈そうにしていたのはリリアだった。

「暇だねー」

頬杖をつきながら呟いた少女は、二年Sクラス首席にして学園最強と呼ばれる存在である。

その声が聞こえた瞬間、向かい側へ座っていた青年が即座に反応した。

「姫、お菓子をお持ちしました」

机の上へ次々と焼き菓子が並べられる。

差し出したのはアレス。二年Sクラス第二位。剣術、魔法、座学、その全てで最高水準の成績を誇る天才だった。

「いらない」

即答だった。

アレスの動きが止まる。

「……え?」

「今はいらない」

「そんな……」

本気で落ち込んでいる様子に、椅子へ深く腰掛けていたレオンが吹き出した。

「相変わらずだな」

「笑い事ではありません」

「十分面白いだろ」

周囲からも苦笑が漏れる。

第四位のノアは腕を組んだまま静かにその様子を眺めていた。感情を表へ出さない男として有名であり、二年Sクラスの中でも特に冷静な判断力を持つ戦術家だったが、この光景だけは見慣れているらしい。

第九位のヴィクトルも肩を竦める。

「毎回同じ流れだな」

「姫への忠誠に変化はありません」

アレスは真顔で答えた。

「重症だな」

ヴィクトルの呟きに周囲が再び笑う。

第七位のユリウスは呆れたようにため息を吐き、第八位のエミリアは口元を隠しながら肩を震わせていた。第十一位のミレーヌは微笑ましそうに見守っており、第十三位のイルは静かに剣の手入れを続けている。

そんな光景は二年Sクラスの日常だった。

誰もが王国有数の才能を持ちながら、普段は年相応の学生でもある。

だが次の瞬間、その空気が変わった。

生徒会室の扉が開いたのである。自然と全員の視線がそちらへ向く。

入ってきたのはエドワードだった。

二年Sクラス第五位。

そしてアルディア王立騎士学校生徒会長。

先ほどまで続いていた雑談は誰かに命じられたわけでもなく止まり、室内は静寂に包まれた。

エドワードはゆっくりと部屋を見渡す。

十三人。

欠席者はいない。

それを確認すると静かに席へ着いた。

「急な招集ですまない」

短い言葉だった。

しかし、それだけで今回の会議が普段とは違うことが伝わる。

二年Sクラス全員が集められる機会は決して多くない。だからこそ、この場にいる全員が議題の重要性を察していた。

エドワードは一枚の資料を机へ置いた。

その瞬間だった。

リリアの表情がわずかに変わる。

アレスは怪訝そうに眉をひそめ、クリスティーナは無言で資料へ視線を落とした。セシリアも書類整理の手を止めている。

「議題に入ろう」

静かな声だったが、生徒会室の空気は一気に引き締まった。

「本日の議題は一年生についてだ」

誰も口を挟まない。

二年Sクラス全員の視線がエドワードへ集まる。

やがて彼は一拍だけ間を置き、資料へ目を落とした。

「一年Bクラス――レイン・クロードについて話したい」

ただ一人の一年生の名前が、学園最高峰の十三人を集める議題になる。

それ自体が異例だった。

そして、その異例の会議がこれから始まろうとしていた。


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