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英雄なのか?  作者: よろず
アルディア騎士学校
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拠点発見


翌朝、まだ朝靄が森の奥に残る時間から八人は集合地点を出発していた。


各クラスがそれぞれ担当区域へ散っていく中、北側の捜索を任されたのは隊長と副隊長だけである。


昨日集めた情報は、どれも北を示していた。


だからこそ、誰も無駄口を叩かない。


先頭を歩くカイルの後ろをレインとアイザックが続き、さらに各クラスの代表達が一定の間隔を保ちながら森を進んでいく。枝を踏む音さえ抑え、全員が周囲の気配へ神経を張り巡らせていた。


やがて森へ入って一時間ほどが過ぎた頃、レインが足を止める。


「昨日の場所です」


全員が視線を向ける。


そこには昨日見つけた焚き火跡が残されていた。灰はまだ比較的新しく、踏み固められた地面もそのまま残っている。


カイルは無言でしゃがみ込み、周囲をゆっくり見回した。


そして一本の木へ近付く。


「……これか」


幹には細い傷が刻まれていた。


自然にできたものではない。


刃物で意図的に付けられた跡だった。


「目印か?」


アイザックが尋ねる。


「たぶん」


カイルは短く答え、近くの木へ歩く。


「こっちにもある」


見ると、同じ高さに同じような傷が刻まれていた。


さらに少し先にも。


「続いてるな」


誰かが呟く。


傷は森の奥へ続いていた。


「行ってみよう」


カイルの言葉に全員が頷く。


目印を追うにつれ、人が踏み固めた跡も少しずつ増えていく。


途中で傷が見当たらなくなる場所もあったが、少し周囲を探せば次の印が見つかる。


盗賊達も完全に隠すつもりではなく、仲間だけが分かる程度に残しているのだろう。


十分ほど進んだところで、先頭のカイルが拳を上げた。


全員がその場へしゃがみ込む。


少し先には小さな高台が見えていた。


慎重に登り切ると、視界が一気に開ける。


「……なるほど」


眼下には街道が見渡せた。


距離はある。


だが荷馬車や商隊が通れば十分確認できる。


高台の上には人が長時間滞在していた跡が残り、踏み固められた土や簡単な腰掛け代わりに使われた丸太まで転がっていた。


アイザックが辺りを見回す。


「見張り場だな」


「ああ」


カイルが足元の布袋を拾い上げる。


中身は空だったが、乾燥肉の匂いが微かに残っている。


「保存食か」


見張り場。


保存食。


街道を一望できる地形。


偶然とは考えにくかった。


その時だった。


「こっち」


レインが高台の反対側を見つめていた。


全員が集まる。


落ち葉の下に薄く轍が残っている。


途中まで枝葉で隠そうとしていたらしいが、完全には消し切れていなかった。


「荷車だな」


アイザックがしゃがみ込む。


「奪った荷を運んだんでしょう」


レインが静かに言う。


「人力だけじゃ限界があります」


カイルも頷いた。


「轍を追う」


今度は目印ではない。


荷車の轍を辿る。


速度は自然と上がった。


轍は途中で枝葉に隠されていたり、地面の硬い場所では見えなくなったりする。


それでも途切れた場所では全員が周囲へ散り、再び見つける。


焦らない。


見失わない。


そうして三十分ほど進んだ時だった。


先頭のカイルが突然しゃがみ込み、後ろへ手を出した。


全員が身を伏せる。


木々の隙間から慎重に前を窺ったレインは、小さく息を呑んだ。


森の奥に、人の手で切り開かれた空間が広がっていた。


朽ちた家屋。


崩れた柵。


かつて村だった場所。


しかし今は違う。


煙が上がり、武器を持った男達が歩き回り、入口では見張りが周囲を警戒している。


ざっと見ただけでも二十人以上。


建物の陰まで含めれば三十人近くいるだろう。


八人は視線を交わした。


見つけた。


盗賊達の拠点だ。


カイルは小さく振り返る。


「ここから二手に分かれる」


誰も口を挟まない。


「俺とレイン、それからA、Bクラス副隊長は残る」


四人が頷く。


「残りは野営地へ戻れ」


「各クラスに伝えてくれ。捜索は中止。全員、野営地で待機だ」


「了解」


四人は音を立てないよう森の中へ消えていく。


残った四人は場所を変えながら慎重に監視を続けた。


人数。


見張りの交代。


出入口。


荷車の出入り。


逃げ道になりそうな場所。


一つずつ情報を集めていく。


時間は静かに流れ、陽が高く昇る頃には、盗賊達の動きがおおよそ見えてきていた。


カイルは木陰で小さく頷く。


「十分だな」


誰も異論はなかった。


今必要なのは武功ではない。


確実な情報を持ち帰ること。


四人は最後にもう一度だけ盗賊達の拠点を見つめると、音もなく森の奥から離れていった。

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