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英雄なのか?  作者: よろず
アルディア騎士学校
35/52

点と点


夕陽が森の向こうへ沈み始める頃、各クラスの捜索隊は次々と集合地点へ戻ってきていた。

大きな成果を上げた者はいない。

盗賊の姿を直接見た者もいない。

だが誰も空振りだったとは思っていなかった。

森で見つかった焚き火跡。

村人達の証言。

街道に残る襲撃の痕跡。

どれも小さな情報だが、確かに盗賊へ繋がっている気配があったからだ。

その頃、少し離れた場所では隊長、副隊長が集まっていた。

各クラスを代表する八人が輪を作り、その中央には周辺地図が広げられている。

二年生達は少し離れた場所から見ているだけだった。

リリア、クリスティーナ、レオンの三人だけがいた。

他のSクラスの生徒達は急遽学校へ帰った。

「まずは情報を出そう」

Aクラス1位カイルが口を開く。

誰も異論はない。

最初に報告したのはDクラスだった。

「街道沿いで襲撃跡を発見した」

地図の一角を指差す。

「荷馬車が止まった跡と荷を運び出した痕跡が残っていた。時間は経っていたが、人為的なものなのは間違いない」

「逃走方向は?」

アイザックが尋ねる。

「断定はできない。ただ森へ向かった可能性が高い」

地図へ小石が置かれる。

続いてCクラスが報告を始めた。

「村で聞き込みをした」

そう言いながら地図の北側を指差す。

「最近になって森へ近付かなくなった村人が多いらしい」

「理由は?」

「人影だ」

その一言に数人の視線が上がる。

「夕方や夜明け前に森の端で見たという証言が複数あった」

盗賊と断定はできない。だが偶然とも思えなかった。

さらに地図へ印が加わる。

「Aクラスは森の西側だ」

カイルが短く言った。

「複数人分の足跡を発見した。猟師や木こりが入る範囲じゃない」

今度は森の西側へ印が置かれた。

そこで全員の視線が自然とBクラスへ向く。

レインは特に気負う様子もなく口を開いた。

「森の中で焚き火跡を見つけた」

その瞬間だった。

カイルが顔を上げる。

「場所は?」

レインが地図を指差す。

するとAクラスカイルの眉が僅かに動いた。

「俺達も近くを通っている」

地図を見る。

森北側。

丘の周辺だった。

「焚き火跡は新しかったか?」

「数日以内だと思う」

レインが答える。

すると今度はロイ達の聞き込み内容を共有した。

「村人の話だと、夜になると丘の向こうで火が見えることがあるらしい」

静かになる。

八人全員の視線が地図へ落ちた。

街道。

人影。

足跡。

焚き火。

そして火の目撃情報。

バラバラだった情報が少しずつ同じ場所へ集まり始めている。

「北か」

誰かが呟いた。

誰も否定しなかった。

まだ拠点を見つけたわけではない。

だが何もない場所へこれだけの情報が集まるとも思えない

「明日はこの8人だけで北の方面を捜索しよう」とレインは提案する。

「俺もそう思う」カイルは言う。

地図へ視線を落としたまま続ける。

「盗賊は魔物じゃない。危険を感じたら逃げる」

「全員で森へ入れば、見張りに見つかる」

「拠点があるなら見張りもいるだろうな」

しばらく地図を見つめた後、レインが結論を出した。

「ただし範囲は絞ろう」

地図の北側を指差した。

「森北側、丘周辺、街道へ出る獣道。この三か所を重点的に調べる」

「発見した場合は?」

Dクラス1位ガルドが尋ねる。

「確認だけだ」

即答だった。

「踏み込まない。捕まえようとしない。位置を確認して戻る」

誰も反対しない。

今必要なのは戦闘ではない。

情報だった。

盗賊の姿を見つけること。

そして逃がさないこと。

八人は再度地図に目を落とす。

点だった情報は少しずつ線になり始めている。

確証はまだない。

それでも全員が同じ予感を抱いていた。

盗賊は近い。

そして明日には、その尻尾を掴めるかもしれない。

少し離れた場所では二年生達が静かにその様子を見守っていた。

誰も口を挟まない。

だがクリスティーナは地図を囲む一年生達を見ながら小さく頷く。

少なくとも彼らは、闇雲に森を歩き回る段階を終えつつあった。


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