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英雄なのか?  作者: よろず
アルディア騎士学校
33/45

順調


リリア達はレインとアイザックの前で足を止める。

「順調そうだね」

リリアはいつも通りの調子だった。

「今のところはですね」

レインが答える。

「到着は予定通りですか?」

クリスティーナが尋ねる。

「このままなら明日の昼前です」

アイザックが答えた。

「分かりました」

会話はそれだけだった。

レオンも一度頷いただけで何も言わない。

本当に確認に来ただけらしい。

拍子抜けしたような空気が流れる。

「終わりか?」

ロイが小声で呟いた。

「終わりだな」

ガレンも頷く。

もっと何か言われると思っていたのだろう。だが二年生達はそのまま元の位置へ戻っていった。

レインは三人の背中を見送りながら小さく息を吐く。

本当に一年生へ任せるつもりらしい。

実務演習の説明を聞いた時は半信半疑だったが、ここまで徹底されると嫌でも分かる。失敗も成功も一年生自身のものということだ。

昼休憩を終えると行軍は再開された。

午後になると街道を行き交う人影も減り始める。王都近郊の整備された道は続いているが、周囲の景色は少しずつ変わっていた。畑が減り、森が増え、人の気配も薄くなっていく。

最初は緊張していた生徒達も、歩き続けるうちに別の敵と戦うことになった。

疲労である。

「足が重い……」

ロイがぼやく。

「まだ一日目だぞ」

ガレンが呆れる。

「だからだよ。二日目が怖い」

その言葉に何人かが苦笑した。

だが実際、長距離行軍に慣れている者は少ない。王立騎士学校で鍛えられているとはいえ、荷物を背負って何時間も歩き続けるのは話が別だった。

その日の夕方、一行は小さな宿場町近くの空き地で野営を行った。

焚き火を囲みながら簡単な食事を取る。騒ぐ者もいたが、いつもよりは静かだった。明日には目的地へ到着する。誰もがそれを意識している。

夜は何事もなく過ぎ、翌朝も早くから出発した。

そして昼前。

先頭を歩いていたレインは足を止める。

目の前の丘を越えた先に村が見えた。

「着いたか」

アイザックが隣へ並ぶ。

規模は大きくない。

三十軒ほどの家屋と畑。それを囲むように森が広がっている。どこにでもある地方の村だった。

「盗賊がいるようには見えないな」

ワルが言う。

「見えたら苦労しないだろ」

レインは苦笑した。

全員が集まったところで地図を広げる。

「ここからは分かれて動く」

生徒達の視線が集まった。

「四十人で村へ入れば目立つ。聞き込みもやりにくいし、向こうに警戒される可能性もある。だから五人ずつに分かれる」

反対する者はいない。

むしろ当然だと思う者の方が多かった。

「村の中、街道沿い、畑周辺、宿場方面。それぞれ担当を決める」

レインは地図へ指を走らせる。

そして最後に森を指した。

「森林区だけは戦闘能力が高い者を中心に回る。魔物が出る可能性があるからな」

それもまた当然の判断だった。

森へ入る組にはレイン、アイザック、ワルを含む上位陣が入る。ロイ達は村で聞き込みを担当することになる。

やがて全ての分担が決まる。

レインは最後に全員を見渡した。

「夕方までにここへ戻れ。何かあれば無理はするな」

短い指示だった。

生徒達はそれぞれの担当区域へ向かって歩き始める。村へ向かう者、街道を下る者、畑へ向かう者。そしてレイン達は森へ向かった。

その様子を少し離れた場所からリリア達が見ている。

だが三人は何も言わない。

ただ静かに一年生達の背中を見送っていた。

森へ足を踏み入れると、村の喧騒はすぐに消えた。

木々のざわめき。

鳥の鳴き声。

湿った土の匂い。

盗賊の姿はまだない。

だがレインは自然と周囲へ意識を向ける。

本当の演習は、ここから始まるのだから。


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