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英雄なのか?  作者: よろず
アルディア騎士学校
32/39

出発


三日後の早朝、王都北門にはBクラスの生徒達が集まっていた。もっとも、いつもの姿ではない。制服を着ている者は一人もおらず、それぞれが実務用の装備を身に着けている。革鎧や胸当て、旅装束の上から防具を着込む者もいれば、杖や弓を背負う者もいる。王立騎士学校の校章も外されていた。盗賊討伐へ向かう以上、自分達の身分をわざわざ周囲へ知らせる必要はない。

四十人近い集団はそれなりに目立つ。それでも制服姿で行軍するよりは遥かにましだった。

「全員揃っているな」

バルトが生徒達を見渡す。

その表情は普段と変わらない。

だが声にはいつも以上の厳しさがあった。

「これから先は学校の外だ。何が起きても不思議ではない」

生徒達は黙って聞いている。

「盗賊を甘く見るな」

それだけ言うとバルトは後ろへ下がった。

やがて門の向こうから三人の人影が現れる。

二年Sクラス。

同行する生徒達だった。

先頭を歩く小柄な少女が手を振る。

「改めて自己紹介するね」

「リリア・フォン・エヴァンス。二年Sクラス一位だよ」

気負った様子はない。

まるで遠足にでも行くような口調だった。

「クリスティーナ・フォン・アークレイド。二年Sクラス三位です。よろしくお願いします」

「レオン・フォン・グレイス。二年Sクラス十二位だ」

簡単な自己紹介を終えると三人は隊列の後方へ移動する。

余計な言葉はない。

護衛役として同行するだけ。

それを示すような態度だった。

出発の合図と共にBクラスは王都を後にした。

高い城壁が徐々に遠ざかっていく。

普段なら賑やかなロイも今日は静かだった。

いや、ロイだけではない。

皆どこか緊張している。

初めての実戦演習。

そして初めて学校の外で行う集団行動だった。夜間奇襲訓練は学校が管理してる森だった。教師もいない。

午前中は大きな問題もなく進んだ。

街道は広く、隊列も安定している。

先頭を歩くレインは時折後ろを振り返りながら全体を見る。遅れる者はいないか。体調を崩している者はいないか。隊長として当然の確認だった。

その様子を少し離れた場所からアイザックも見ていた。

特に指示を出し合う必要はない。

互いに何を見ているか分かっていた。

昼が近付く頃には生徒達にも疲労が見え始める。

普段の訓練とは違う。

荷物を背負いながら長時間歩き続けるだけでも体力を使う。

そんな中でも後方の二年生三人だけは全く変わらなかった。

歩幅も一定。

呼吸も乱れない。

疲れた様子すらない。

その姿を見ているだけで実力差が分かる。

「すげぇな……」

ロイが小さく呟いた。

「何がだ?」

ガレンが聞く。

「いや、あの人達だよ」

ロイの視線は後方へ向いている。

「平気そうじゃん」

「俺なんか足が重くなってきたぞ」

「それはお前が普段から自主練をサボるからだ」

「うるさい」

そんな会話をしながらも、誰も二年生へ話しかけようとはしなかった。

憧れはある。

特にリリアだ。

同じ学校の生徒とは思えない。

俺は知らないが王国、はたや諸外国にまでなまで名前は知れ渡ってるんじゃないか?

その頃、隊列の最後尾ではリリアが前方を眺めていた。

先頭を歩くレイン。

その少し後ろで全体を見ているアイザック。

途中で隊列が乱れそうになると自然に声を掛けるガレン。

疲れた空気を和らげるロイ。

皆それぞれ役割を果たしている。

「よく訓練出来てるね」

リリアが呟く。

「そうですね」

クリスティーナがこたえた。

それだけ言うとリリアは少し笑った。

そして昼休憩の合図が出された時だった。

生徒達が荷物を降ろし始める中、リリア達はそのままレインの方へ歩いていく。

遠くから見ていたロイが思わず固まった。

「行ったぞ」

「行ったな」

ガレンも頷く。

「隊長、大丈夫か?」

「何がだよ」

ワルが呆れたように言った。

だがそのワルですら視線は向けている。

Bクラス全員が見ていた。

二年達が、真っ直ぐレインのところへ向かって行く。


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