覚悟
説明会が終わり、Bクラスの生徒達は訓練場の端へ集まっていた。
誰かが話し始めるわけでもない。
普段なら2年生Sクラスの生徒達を見てロイが騒いでいる。
だが今日は違った。
盗賊討伐。
その言葉が思っていた以上に重かったのだ。
「なぁ」
しばらくして一人の男子生徒が口を開いた。
「盗賊ってさ」
そこで言葉が止まる。
何を言いたいのか皆分かっていた。
「……殺してもいいのか?」
訓練場が静まり返った。
風の音だけが聞こえる、誰も答えなかった。
盗賊は犯罪者だ。
人を襲い、人を殺している。だから討伐命令が出ている。
理屈では分かる。
だが相手が魔物ではなく人間であることに変わりはない。
「捕縛優先って言ってたろ」
誰かが言う。
「でも戦闘になれば分からないだろ」
別の誰かが返す。
その通りだった。
剣を振れば相手は死ぬ。魔法を放てば人が死ぬ。
それが戦いだ。
今までの訓練とは違う。
「俺は別に構わない」
ワルが腕を組みながら言った。
「向こうだって殺す気で来るんだろ」
強気な言葉だった。
だがレインには分かった。
ワルも緊張している。
本当に平然としているなら、わざわざ口に出したりしない。
「実際は分からないさ」
レインが言った。
皆の視線が集まる。
「その時になってみないと」誰も反論しなかった。
正論だった。
人を斬ったことのない学生達に答えられる話ではない。
結局、自分自身で確かめるしかない。
初めて人を殺す剣を向けた時。
初めて殺さた死体を見た時。
その時になって初めて分かる。
自分がどんな人間なのか。
レインは周囲を見渡した。
不安そうな者、考え込む者、強がる者。
反応は様々だった。
だがそれでいい。
むしろ安心した。
誰も盗賊討伐を遊びだとは思っていない。
少なくともBクラスは。




