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英雄なのか?  作者: よろず
アルディア騎士学校
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覚悟

訓練場へ現れた二年Sクラスの姿に、一年生達の空気は大きく変わっていた。

王立騎士学校に入学して半年。誰もがSクラスという存在を知っている。学年の頂点。将来の騎士団幹部候補。そして王国中から集められた天才達。その中でも二年Sクラスは実際の任務へ参加した経験を持つ者も少なくないと噂されていた。

自然と視線が集まるのも無理はなかった。先頭に立つエドワードは相変わらず穏やかな表情を浮かべている。その隣には副会長クリスティーナ・フォン・アークレイド。銀色の長髪が風に揺れ、蒼い瞳は一年生達を静かに見渡していた。さらに書記のセシリア、会計のクラウス、庶務のレオンの姿も見える。だが一年生達の視線を引いているのは生徒会役員だけではなかった。

後方には見覚えのないSクラス生徒達も並んでいる。誰もが余裕を漂わせていた。強者特有の空気だった。

やがてAクラス担任が前へ出る。「静かに」その一言で訓練場は静まり返った。「これより実務演習の詳細を説明する」百六十人の視線が集まる。

「演習地域は王都北西部」担任は広げられた地図を指差した。「この一帯だ」地図には複数の村と街道が記されている。王都と地方都市を結ぶ交易路だった。「二カ月ほど前からこの地域で商隊襲撃が発生している」「被害件数は十二件」「死者二十七名」「敵は約三十名」「盗賊団としては中規模」「剣士、弓兵、魔法使いの存在を確認している」「元傭兵が含まれている可能性も高い」一年生達の表情が引き締まる。相手は訓練用の幻影ではない。実際に人を殺してきた集団だ。「お前達の任務は盗賊団の討伐、または捕縛」担任はそこで一度言葉を切った。

「だが勘違いするな」「今回の演習は敵を倒せば終わりではない」視線が集まる。「まず現地へ到着する」「その後、村人や商人から情報を収集する」「盗賊団の活動範囲を特定する」「潜伏場所を発見する」「戦力を分析する」「その上で討伐計画を立案し実行する」訓練場が静まり返る。思っていたより遥かに大掛かりだった。

単純な討伐演習ではない。騎士団の任務そのものだった。「なお捕縛可能であれば捕縛を優先しろ」その言葉に何人かが顔を上げる。「盗賊は情報源だ」「背後関係」「資金源」「協力者」「それらを調べる必要がある」レインは小さく納得した。確かに盗賊を全員倒して終わりでは意味がない。それではまた同じ問題が起こるだけだ。「今回学校が見ているのは戦闘能力だけではない」担任の声が響く。

「情報収集能力」「統率能力」「判断能力」「報告能力」「そして指揮能力」「全て査定対象だ」だから隊長と副隊長が選ばれたのだろう。三ヶ月の合同訓練もそのためだった。誰が何を得意とするか。誰をどこへ配置するか。それを学ばせるための訓練だったのだ。

「そしてもう一つ」担任は後方へ視線を向けた。そこに並ぶ二年Sクラス生徒達を見る。「今回の演習には二年Sクラスが同行する」訓練場がざわついた。当然だった。王立騎士学校最強の集団である。その存在だけで安心感が違う。「ただし指揮権はない」ざわめきが止まる。「二年生は部隊運営へ介入しない」「作戦立案にも参加しない」「命令も出さない」一年生達が顔を見合わせる。それでは何のために同行するのか。その疑問に答えたのはクリスティーナだった。一歩前へ出る。「私達は安全確保のために同行します」澄んだ声が訓練場へ響く。「生命の危険が発生した場合のみ介入します」「それ以外は皆様自身で判断してください」優しい口調だった。だが内容は厳しい。つまり助けてはくれない。本当に危険な時以外は見ているだけということだ。その意味を理解した者達から表情が変わっていく。

今度の演習は訓練ではない。騎士としての第一歩なのだ。その時だった。豪快な笑い声が響く。「そんな固くなるなよ」声を上げたのはレオンだった。日に焼けた肌の青年は肩を竦めながら笑う。「死にそうになったら助けてやる」「多分な」一年生達から苦笑が漏れた。

エドワードは一年生達を見渡していた。「今回の主役は君達だ」


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