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英雄なのか?  作者: よろず
アルディア騎士学校
28/37

成長2

合同演習まで明日に迫った頃には、一年生達の顔つきは大きく変わっていた。

三ヶ月前なら自分のクラス以外の生徒などほとんど知らなかった者達が、今では他クラスの名前や得意分野を当たり前のように口にしている。

放課後の合同訓練はそれほどまでに濃密だった。毎週編成が変わり、十人小隊を組み直し、前衛と後衛を入れ替え、回復役を守りながら戦線を維持する訓練を繰り返した。時には二十人規模、三十人規模へ拡大され、小隊同士を連携させる訓練も行われた。当初は上手くいかなかった。前衛は突撃し過ぎ、後衛は味方を見失い、伝令は途中で指示を忘れる。だが失敗を繰り返すうちに少しずつ変化が現れ始めた。誰が前線向きか、誰が後方支援に向いているか、誰が冷静に周囲を見られるか。それぞれが互いを理解し始めていたのである。

その日、一年生全員が再び中央訓練場へ集められていた。百六十人もの生徒が並ぶ光景は壮観だったが、入学式の頃とは雰囲気が違う。緊張や高揚ではない。これから始まる何かを待つ静かな集中だった。最前列には各クラス上位陣が並んでいる。三ヶ月前に生徒会へ呼び出された八人だった。

やがて前へ出たカイルが周囲を見渡した。訓練場は自然と静まり返る。「合同訓練は今日で終了だ

「三ヶ月前、お前達は自分のクラスしか知らなかった」カイルは淡々と続ける。

「AクラスはAクラス。BクラスはBクラス。それぞれが別の集団だった」その言葉に多くの生徒が頷いた。事実だった。査定順位やクラス意識ばかりが先にあり、他クラスの人間など競争相手でしかなかった。「だが今は違う」カイルの視線が一年生達を見渡す。

「剣が上手い者を知っている」「魔法が得意な者を知っている」「周囲を見られる者を知っている」「負傷者を支えられる者を知っている」「命令を伝えるのが上手い者を知っている」

誰も口を挟まなかった。それは三ヶ月かけて積み上げた成果だったからだ。「騎士団は英雄一人で戦う組織ではない」「百人いれば百人の役割がある」「それを理解できたなら、この訓練には意味があった」その言葉には重みがあった。レインは周囲を見渡した。確かに知っている顔が増えている。Aクラスにも優秀な人材がいた。Cクラスにも。Dクラスにも。

三ヶ月前なら名前すら知らなかった相手の長所を今では説明できる。おそらく他の生徒達も同じだろう。その時だった。訓練場の奥からざわめきが広がる。

自然と視線が向く。そこに現れたのは二年生達だった。先頭を歩く一人を見た瞬間、一年生達の空気が変わる。生徒会長エドワード・フォン・グランベル。王立騎士学校生徒会長。そしてその後ろには十二人の生徒が並んでいた。全員が制服の胸にSクラスの証を付けている。二年Sクラス。王立騎士学校最高峰の生徒達だった。一年生達の間に緊張が走る。合同訓練が終わった。つまり次はいよいよ実務演習なのだと、誰もが理解していた。


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