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英雄なのか?  作者: よろず
アルディア騎士学校
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27/212

合同訓練


生徒会での話し合いから数日後のことだった。


放課後のホームルームが終わると同時に、一年生全員へ一枚の通達が配られた。


翌日より合同訓練を開始する。


対象は一年生全員。


期間は実務演習当日までの三ヶ月。


内容そのものは珍しくない。しかし多くの生徒が驚いたのは、その下に記されていた名前だった。


訓練統括 Aクラス首席 カイル・フォン・アークレイ


副統括 Aクラス次席 ミハイル・フォン・ベルク


訓練補佐 各クラス首席・次席


教師の名前はどこにもない。


つまり、一年生の訓練を一年生自身が中心となって進めるということだった。


翌日の放課後、中央訓練場には一年生全員が集められていた。


AクラスからDクラスまで総勢百六十名。


普段は広く感じる訓練場も、今日ばかりは人で埋め尽くされている。


前方には八人の姿があった。


各クラスの首席と次席。


先日、生徒会へ呼び出された者達である。


「本当に一年生だけでやるのか?」


「教師はいないのか……?」


「あの八人が指揮するってこと?」


周囲から小さなどよめきが広がる。


その中で、カイルが静かに一歩前へ出た。


「静かに」


決して大きな声ではない。


それでも不思議とその一言は訓練場全体へ届き、ざわついていた空気が次第に静まっていく。


全員が前を向いたことを確認すると、カイルは無駄な前置きをせず本題へ入った。


「実務演習まで三ヶ月。これより合同訓練を開始する」


簡潔な宣言だった。


「毎週部隊編成を変更する。クラスも順位も関係ない」


その瞬間、再び訓練場がざわつく。


「毎週変えるのか?」


「Aクラスとも一緒になるってこと?」


「Dクラスともか……」


同じクラスで訓練することに慣れた一年生にとって、それは予想外の内容だった。


カイルは騒ぎが落ち着くのを待ってから、静かに問い掛ける。


「なぜ、そんなことをすると思う?」


答える者はいない。


しばらく全員を見回した後、カイルは自ら答えを口にした。


「実務演習で、同じ戦場に立つ可能性があるからだ」


その一言で訓練場が静まり返る。


「各クラスが別々に行動するかもしれない。複数クラスで共同戦線を張るかもしれない。それは現時点では分からない」


淡々とした口調のまま、言葉を続ける。


「だが、一つだけ確かなことがある」


その視線が一年生全員へ向けられた。


「知らない相手と連携はできない」


誰も反論できなかった。


「誰が前衛に向いているのか」


「誰が後衛に向いているのか」


「誰が冷静で、誰が判断力を持っているのか」


「それを知るための訓練だ」


レインは、生徒会で交わした会話を思い返していた。


――人を見ろ。


エドワードが口にした言葉。


そして、夜間奇襲訓練でバルトが残した言葉。


どちらも同じことを指していたのだ。


強い者を探すのではない。


仲間を理解し、その力を引き出せる人間になれということなのだろう。


「将来騎士団へ入れば、他部隊と共闘することもある」


今度はミハイルが前へ出る。


「別の騎士団と共同作戦を行うこともある。その時、初めて顔を合わせた相手だから連携できませんでは済まされない」


短い言葉だった。


だが、その重みは十分に伝わってくる。


騎士になれば、自分の知る仲間だけと戦えるとは限らない。


見知らぬ部隊と肩を並べ、命を預け合うこともある。


この合同訓練は、そのための第一歩でもあるのだ。


やがてカイルは手元の名簿を開いた。


「これより第一週の部隊編成を発表する」


訓練場の空気が、一段と張り詰める。


誰と同じ部隊になるのか。


その組み合わせ次第で、この三ヶ月は大きく変わる。


カイルは名簿へ視線を落とし、静かに最初の名前を読み上げた。


「第一部隊――」

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