合同訓練
生徒会での話し合いから数日後。
放課後になると一年生全員へ一枚の通達が出された。
翌日より合同訓練開始。
対象は一年生全員。
期間は実務演習までの三ヶ月。
その内容を見た瞬間、多くの生徒達が驚いた。
理由は訓練内容ではない。
責任者の名前だった。
訓練責任者。
一年Aクラス首席カイル・フォン・アークレイ。
補佐。
一年Aクラス二位ミハイル・フォン・ベルク。
つまり教師ではない。
一年生が一年生を指揮するのである。
翌日の放課後。
中央訓練場には百六十人の生徒達が集まっていた。
AクラスからDクラスまで。
Sクラスの生徒以外一年生全員である。
その視線の先には八人の姿があった。
各クラスの一位と二位。
生徒会へ呼ばれた者達だった。
「静かに」
カイルの声は決して大きくなかった。
それでも自然と周囲が静まる。
侯爵家嫡男として育ったからなのか、それとも本人の資質なのか。人を従わせる空気があった。カリスマというのか。
「実務演習まで三ヶ月、その間合同訓練を行う」
簡潔な説明だった。
「毎週編成を変更する、クラスも順位も関係ない」
「数十人の小隊を作る」
訓練場がざわつく。
AクラスからDクラス。
貴族と平民。
得意、不得意関係ない、全て混ぜる。
これまでほとんど接点のなかった者同士が同じ部隊になるのだ。
「目的は一つ」
カイルが続ける。
「仲間を知ることだ」
その言葉には皆納得した。
入学して半年。ここに居る全員その事は痛いほど分からせられている。
人を見ろ。
そのための訓練なのだろう。
「今週の編成を発表する」
そこから一人ずつ名前が呼ばれていく。
レインの部隊にはAクラス、Cクラス、Dクラスの生徒が混ざっていた。
顔を知っている者もいるが知らない者の方が多い、おそらく皆同じだろう。
「今週の課題は前衛と後衛の連携」
カイルが言う。
「前衛は敵を抑える、後衛は支援する」
「ただし固定ではない」
その言葉に何人かが首を傾げる。
「全員が両方を経験する」
今度は納得の声が上がった。
確かにその方が相手の立場を理解できる。前衛が何を求めているか後衛が何を求めてるか。実際に経験した方が早い。
訓練が始まると、その意図はすぐに理解できた。
前衛しかやったことのない生徒は後方支援の難しさを知る。
後衛専門だった生徒は前線の圧力を知る。
後方からの魔法支援につにも味方の位置を見なければならない。巻き込まれそうになる。
突撃するにも後方との距離を考えなければならない。
いつもとは全く違う。
その様子を見ながらレインは周囲を観察していた。
誰が周囲を見ているか。
誰が仲間へ声を掛けられるか。
気付けば自分だけではない。
アイザックも。
ルークも。
ガルドも。
各クラスの上位陣が同じことをしていた。
戦力ではなく人材を見ている。
それこそが、この合同訓練の本当の目的なのだろう。
そしてその積み重ねが、三ヶ月後の盗賊討伐へ繋がっていくことになる




