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英雄なのか?  作者: よろず
アルディア騎士学校
25/34

クラス代表


生徒会室を出た後も、誰からともなく会話が始まることはなかった。

盗賊討伐に隊長、副隊長。与えられた情報は決して多くない。それでも八人の胸中には十分な重みを残していた。

階段を下り、一階へ差しかかったところで一人の男子生徒が足を止めた。

「少し時間はあるか」

声を掛けたのはAクラス首席だった。

整った金髪に端正な顔立ち。背筋は真っ直ぐ伸び、立っているだけで貴族らしい品格を感じさせる。

「どうせなら今のうちに話しておきたい」

反対する者はいなかった。

数分後、八人は近くの空き教室へ移動していた。

放課後の教室は静かだった。

窓から差し込む夕陽が机を赤く染めている。

自然と円を作るように席へ着くと、最初に口を開いたのは先ほど声を掛けたAクラス首席だった。

「改めて自己紹介をしておこう」

落ち着いた声だった。

「Aクラス一位、カイル・フォン・アークレイだ」

アークレイ侯爵家。

王国内でも名の知れた名門貴族であることは誰もが知っていた。

だがカイル自身は家名を誇示する様子もない。

「よろしく頼む」

それだけ言って席へ座る。

続いて隣の男子生徒が軽く手を挙げた。

「Aクラス二位、ミハイル・フォン・ベルク」

短く整えられた茶髪。

鋭い目付きが印象的な少年だった。

「家は伯爵家だ。よろしく」

必要最低限。

いかにもAクラスらしい簡潔な挨拶だった。

次に視線が向いたのはレイン達にだった。

Bクラス一位、レイン・クロード」

レインは軽く笑った。

「平民です」

その一言に何人かが反応する。

やはり平民で各クラス上位という存在は珍しいのか。

「剣と魔法を少し」

もちろん嘘だった。

だが表情一つ変えずに続ける。

「よろしくお願いします」

簡潔な挨拶だったが、カイルだけは興味深そうにレインを見ていた。

ランキング戦の噂くらいは耳に入っているのかもしれない。

続いて銀髪の少年が椅子へ深く腰掛けたまま言う。

「アイザック・レオンハルトです」 

「子爵家の次男」

淡々としている。

「剣も魔法も使う。以上です」

あまりにも短い自己紹介に数人が苦笑する。

アイザック本人は気にしていないようだった。

続いてCクラスの番になる。

「Cクラス一位、ルーク・フォン・ハイゼン」

黒髪の少年だった。

体格は大きく、騎士というより軍人に近い雰囲気を持っている。

「男爵家だ」

ルークは周囲を見回した。

「正直、隊長なんて柄じゃないと思ってる」

その言葉に何人かが笑う。

少しだけ空気が和らいだ。

「でも選ばれた以上はやるつもりだ。よろしく頼む」

その隣に座る少女が続く。

「Cクラス二位、セレナ・リーフェルト」

肩まで伸びた栗色の髪。

柔らかな雰囲気を持つ少女だった。

「家は商家です」

貴族ではない。

平民出身らしい。

「よろしくお願いします」

丁寧に頭を下げた。

最後はDクラスだった。

「Dクラス一位、ガルド・フォン・レイナーク」

低い声が響く。

大柄な少年だった。

肩幅も広く、一年生とは思えない体格をしている。

「騎士爵家だ」

短く言い切る。

その迫力だけで強者だと分かる。

続いて隣の少女が立ち上がった。

「Dクラス二位、リリア・エヴァンスです」

金色の髪を揺らしながら微笑む。

八人の中では最も小柄だった。

「平民です。よろしくお願いします」

全員の自己紹介が終わる。

先ほどまで知らなかった名前と顔がようやく一致した。

だが同時に誰もが理解していた。

ここにいるのは各クラスの一位と二位。

一年生百六十人の中でも頂点に近い八人だということを。

そして三ヶ月後、この八人がそれぞれの部隊を率いて盗賊討伐演習へ参加することになる。

自己紹介が終わった教室には、先ほどまでとは違う種類の緊張感が漂い始めていた。

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