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英雄なのか?  作者: よろず
エルディオン連邦編
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205/225

鑑定結果発表


古代文字研究所へ到着すると、受付には昼間ほどではないものの、まだ何組もの来訪者が順番を待っていた。


遺跡から持ち帰った石板を抱える冒険者。古びた巻物を大切そうに抱えた商人。そして白衣姿の研究者と熱心に議論を交わす学者たち。


夕方が近づいても、研究所の忙しさは少しも変わらないようだった。


「相変わらず人が多いですね。」


エレアが周囲を見渡しながら呟く。


「世界中から依頼が集まりますから。」


サンロも静かに頷いた。


「私のように鑑定を依頼する商人も少なくありませんし、新しい遺跡が見つかる度に、各国から資料が運び込まれるそうです。」


四人が受付へ向かうと、受付の女性はすぐにサンロへ気付き、柔らかな笑みを浮かべた。


「サンロ様ですね。」


「はい。」


「お待ちしておりました。」


その一言に、サンロの表情がわずかに引き締まる。


「調査結果のご説明ですね。」


「はい。」


受付の女性は静かに頷いた。


「担当研究員がお待ちしております。こちらへどうぞ。」


四人は受付の奥へ案内された。


前回よりさらに奥へ続く廊下を歩いていく。


窓越しには、研究者たちが机を囲み、古文書や魔法陣の写しを広げて議論を交わす姿が見えた。


「みんな、まだ研究してるんだ。」


ピリカが感心したように呟く。


案内役の女性は苦笑した。


「この街では珍しくありません。一つ疑問が生まれると、時間を忘れて研究へ没頭する方ばかりです。」


「研究者らしいですね。」


レインが微笑むと、女性もどこか諦めたように笑う。


「研究室で夜を明かす方も少なくありません。」


やがて一行は、他の部屋より一回り大きな扉の前で足を止めた。


女性が軽く扉を叩く。


「サンロ様をお連れしました。」


「どうぞ、お入りください。」


落ち着いた返事が聞こえ、女性が静かに扉を開く。


一礼して中へ入ったレインたちは、思わず室内を見渡した。


最初に案内された応接室とはまったく違う。


壁一面には年代や文明ごとに整理された書物が並び、中央の大きな机には古文書や写本、羊皮紙が幾重にも積み重ねられている。


その机を囲むように五人の研究者が集まり、全員の視線は中央へ置かれた一冊の古びた書物へ注がれていた。


サンロが競売で落札した、あの書物だった。


「お待ちしておりました。」


最初に応対した壮年の研究員が一歩前へ出て、一礼する。


「予定より少し早いお越しでしたが、ちょうど一区切りついたところです。」


サンロは自然と息をのみ、机の上へ視線を向けた。


書物の周囲には何十枚もの調査資料が広げられ、文字の比較や魔法陣の解析結果がびっしりと書き込まれている。


どれほど多くの時間と労力が注がれたのか、一目で伝わってきた。


「かなり時間を掛けていただいたようですね。」


レインが静かに口を開く。


研究員は苦笑しながら頷いた。


「ええ。当初は古代文字研究部門だけで調査を始めたのですが、途中から我々だけでは判断できない部分が見つかりまして。」


そう言って周囲の研究者へ視線を向ける。


「古代魔法研究部門、魔法陣研究部門にも協力を依頼しました。」


「ここ数年で持ち込まれた資料の中でも、これほど多くの研究者が集まった例はほとんどありません。」


「この数日、研究所中がこの資料の話題でもちきりでした。」


サンロは思わず目を見開いた。


「そ、それほどだったのですか。」


「ええ。」


研究員は迷いなく頷く。


「我々研究者にとっても、非常に価値の高い発見でした。」


部屋の空気が自然と引き締まる。


サンロは無意識のうちに拳を握り締めていた。


期待と不安が入り混じる中、研究員の次の言葉を待つ。


研究員は机の上の書物へ静かに手を添え、一度だけ深呼吸した。


「まず、結論からお伝えします。」


その一言で、部屋は水を打ったように静まり返る。


「残念ながら、この書物を完全に解読することはできませんでした。」


サンロの肩がわずかに落ちた。


しかし、研究員はすぐに続ける。


「ですが、何も分からなかったわけではありません。」


その声には、隠しきれない興奮が滲んでいた。


「むしろ、判明した内容だけでも我々にとっては十分すぎる成果でした。」


そう告げると、研究員は書物の隣に置かれていた羊皮紙――あの魔法陣を静かに机の中央へ移した。


「まず最初に判明したのは、この二つが偶然同じ場所から見つかったわけではない、ということです。」


研究員は書物へ手を添え、続いて魔法陣へ視線を移す。


「書物と魔法陣は、それぞれ独立した資料ではありません。」


一拍置き、はっきりと断言した。


「――この二つは、一対の資料です。」


その言葉に、レインたちは静かに顔を見合わせた。


競売では一つの木箱へ納められていた書物と魔法陣。


それは偶然でも保管上の都合でもない。


最初から二つで一つとして作られた資料だったのである。

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