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英雄なのか?  作者: よろず
アルディア騎士学校
2/45

入学式


入学式当日。

アルディア王立騎士学校の講堂には新入生たちが集まっていた。

試験から三週間。

合格通知を受け取った者だけが、この場所に立つことを許されている。

講堂を見渡せば、どの顔にも緊張と期待が入り混じっていた。

今日から始まる二年間は、多くの者にとって人生を左右する時間になる。

卒業後は王国十三騎士団をはじめとした様々な進路が待っている。

平民出身でも実力次第で道は開ける。

だからこそ誰もが真剣だった。

レインが空いている席へ腰を下ろしてしばらくすると、隣に見覚えのある顔が現れた。

「おっ、本当にいた」

茶髪の少年が笑う。

「ロイだったな」

「覚えてくれてたか。試験の日以来だな」

試験当日、俺の前の列に並んでいた男だ。

緊張していたのか、やたらと話しかけてきた記憶がある。

そう言いながら当然のように隣へ座る。

人懐っこい性格らしい。

「王都には慣れたか?」

「全然だね。人が多すぎる」

「それは分かる」

王都はレインにとっても初めての場所だった。

地方の街とは比べものにならない。

人の数も建物の数も違う。

三週間滞在していても、まだ慣れたとは言えなかった。

そんな話をしているうちに講堂が静かになった教師たちが入場してきたのだ。

その最後に現れた老人へ、多くの視線が集まる。

白髪混じりの髪。

真っ直ぐ伸びた背筋に年齢を感じさせない鋭い眼光。

老人は壇上へ上がると、新入生たちを見渡した。

その瞬間だった。

講堂の空気が張りつめる。誰かが威圧したわけではない。

大声を出したわけでもない、それなのに自然と背筋が伸びた。

レインは老人を見る。

強い。

それが最初の感想だった。

隙がない。

年齢を考えれば現役を退いて長いはずだが、それでも普通の騎士とは格が違う。おそらく今この場にいる教師たちの中で1番強い。

老人は静かに口を開いた。

「アルディア騎士学校への入学を歓迎する」

大きな声ではないしかしその声は講堂の隅まで届いた。

「二年間、多くを学べ。そして卒業しろ」

それだけだった。

老人は一礼すると演台を離れる。

「終わりか?」

ロイが呆然と呟く。周囲でも同じ反応が起きていた。

レインも少し意外だったが、嫌いではなかった。

長い話よりずっといい。

「あの人、元騎士団長らしいぞ」

後ろの席からそんな声が聞こえた。

「本当か?」

「第三騎士団だったはずだ」

なるほど先ほど感じた空気を思えば納得できる話だった。

続いて教師が前へ出る。

「生徒会長より歓迎の言葉をいただく」

講堂の空気が少し変わった。

壇上へ一人の青年が上がる。

整った顔立ちに無駄のない立ち振る舞い。派手ではないが自然と目を引く。

新入生たちの視線が集まった。

「初めまして。生徒会長のエドワード・フォン・グランベルだ」

落ち着いた声だった。

「諸君らを歓迎する。これから二年間、楽しいことも苦しいこともあるだろう。だが努力は無駄にならない。困ったことがあれば生徒会を頼ってほしい」

簡潔だった。

だが先ほどの学園長とは違う意味で聞きやすい。

侯爵家の嫡男。現生徒会長。

その名を知っている者も多いのだろう。

講堂には自然と拍手が広がった。

「Sクラス第五位か……」

ロイが小さく呟く。

「すごいのか?」

「お前知らないのか?」

ロイが驚いた顔をする。

「Sクラスは王国中の天才が集まる場所だぞ。その中で五位だ」

「そうか」

レインは適当に相槌を打つ。

興味がないわけではない。

だが今は関係のない話だった。

入学式が終わると、生徒たちは各クラスへ案内される。

「俺たちはBクラスだったな」

ロイが歩きながら言う。

「そうだな」

「Aクラスとか少し憧れたんだけどな」

「まだ始まってもいないだろ」

「確かに」

ロイは笑った。

校舎へ入ると、案内された教室の扉にはBクラスと書かれている。

中には既に何人かの生徒が集まっていた。

緊張した表情の者に周囲を観察している者、早くも話し相手を見つけている者。

新しい環境。

新しい仲間。

そして二年間の学園生活。

レインは教室を見渡す。

今のところ目立つ必要はないな。


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