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英雄なのか?  作者: よろず
エルディオン連邦編
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199/212

鑑定へ


サンロに案内され、レインたちは首都アストレアの中心部へ足を進めていた。

目的地は古代文字研究所。

世界各地から発見された古文書や遺物が集められ、数多くの研究者が日夜解読に取り組む、公国屈指の研究施設である。

重厚な石造りの建物へ入ると、受付では何人もの研究者が順番を待っていた。古びた書物を抱える者、魔導具らしき品を持ち込む者、遺跡から持ち帰ったと思われる石板を慎重に運ぶ冒険者までいる。

「思っていた以上ですね……。」

エレアが周囲を見渡す。

「古代物の鑑定を行える施設は世界でも限られていますから。」

サンロはそう答えながら受付へ歩み寄り、ゼルディアからの紹介状を差し出した。

受付の女性は紹介状へ目を通すと、小さく頷く。

「少々お待ちください。」

ほどなくして、白衣を纏った壮年の研究員が姿を現した。

「サンロ様ですね。紹介状を確認致しました」

研究員は丁寧に一礼すると、奥の応接室へ案内する。

席へ着くと、サンロは大切そうに木箱を抱え、静かに蓋を開いた。

中から取り出されたのは、競売で落札した古びた書物と魔法陣。

研究員の表情が僅かに引き締まる。

「こちらを調査していただきたい。」

「承知しました。」

研究員は手袋を着けると慎重に書物を受け取り、魔法陣も傷一つ付けないよう確認していく。

数分ほど無言で観察を続けた後、小さく息を吐いた。

「申し訳ありませんが、即座に結論を出せる品ではありません。」

サンロも予想していたのか、静かに頷く。

「どれほど掛かりますか。」

「最低でも数日はいただきたいと思います。複数の研究員による調査に加え、古代文字研究部門とも照合します。結果が判明しましたら、すぐにご連絡いたします。」

「分かりました。」

サンロは名残惜しそうに書物へ一度だけ視線を送り、研究員へ預けた。

応接室を出ると、張り詰めていた肩の力が少しだけ抜ける。

「これで、私にできることは終わりました。」

そう言って苦笑したサンロは、レインたちへ向き直った。

「せっかく世界最高峰の学園都市まで来たんです。結果が出るまでの間、商人として街を見て回ろうと思います。新しい商売の種が見つかるかもしれませんから。」

その目すでに商人のものだった。

「研究所から連絡がありましたら、すぐ宿へ戻ります。」

レインは頷く。

「分かりました。私たちも別件がありますので、数日後にまた宿で落ち合いましょう。」

「はい。その時は、良い報告ができることを願っています。」

互いに軽く頭を下げると、サンロは人通りの多い通りへ歩き出した。

その背中を見送ったレインは、懐から一通の紹介状を取り出す。

ライゼンを出発する前、ヴァルゼインから託されたものだった。

「それじゃあ、行きましょう。」

エレアが静かに頷く。

三人は足並みを揃え、首都アストレア冒険者ギルドへ向かって歩き始めた。

石畳の大通りを進み、一際大きな建物の前で足を止めた。

重厚な石造りの外壁。その正面には、剣と盾を組み合わせた冒険者ギルドの紋章が掲げられている。

「ここですね。」

エレアの言葉に、レインは静かに頷いた。

扉を開けると、広々としたホールには多くの冒険者の姿があった。依頼書の前で仲間と相談する者、受付で報告を済ませる者、酒場で食事を取りながら情報交換をする者。それぞれが思い思いの時間を過ごしている。

研究者や学生の姿が目立つ街ではあったが、ここだけは他国の冒険者ギルドと変わらぬ空気が流れていた。

レインは受付へ歩み寄ると、一通の紹介状を差し出した。

「ヴァルゼイン・ローグレイス様から預かった紹介状です。」

受付の女性は丁寧に受け取る。

差出人の名を確認した瞬間、その表情が僅かに変わった。

「……少々、お待ちください。」

深く一礼すると、紹介状を大切そうに持ったまま奥へと姿を消す。

しばらくして戻ってきた受付嬢は、先ほどよりも幾分か改まった様子で頭を下げた。

「お待たせいたしました。」

「支部長がお会いになります。こちらへどうぞ。」

三人は受付嬢の後に続き、関係者以外立ち入り禁止と記された扉を抜ける。

賑やかなホールとは打って変わり、奥の廊下は静まり返っていた。

壁には歴代支部長の肖像画や、数々の功績を残した冒険者たちの記録が飾られている。

やがて廊下の突き当たりにある重厚な扉の前で、受付嬢が足を止めた。

「支部長、お連れしました。」

「入りたまえ。」

落ち着いた声が部屋の奥から返ってくる。

受付嬢が静かに扉を開けた。

「どうぞ。

レインたちは一礼すると、支部長室へ足を踏み入れた。


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