第2回ランク査定
第2回査定の日。
夜間奇襲訓練から数ヶ月。
王立騎士学校は再び穏やかな日常を取り戻していた。
朝の体力訓練を終えた生徒たちは教室へ戻り、授業が始まるまで思い思いの時間を過ごしている。剣の手入れをする者、座学の復習をする者、友人同士で他愛ない話を交わす者――普段なら見慣れた光景だった。
だが、教室に流れる空気だけは明らかに違う。
誰もが落ち着かない。
会話は続いていても視線は何度も教室の扉へ向かい、ふとした瞬間に沈黙が訪れる。
理由は一つ。
今日は第2回査定の発表日だった。
入学から半年。
授業、実技訓練、ランキング戦、そして夜間奇襲訓練まで含めた半年間の総合評価。
努力が数字となって示される日である。
とりわけ夜間奇襲訓練は、生徒たちにとって初めての実戦形式の集団戦闘だった。剣技や魔法だけでなく、判断力や連携まで見られたあの訓練が、今回の査定へ大きく反映されることは誰もが予想していた。
「今度こそ二十位台前半だな」
ロイが胸を張る。
向かいに座るガレンはため息をついた。
「前回も同じことを言っていた」
「今回は違う。夜間訓練で大活躍したからな」
「声だけは」
「そこは否定してくれ」
教室に小さな笑いが広がる。
しかし、それも長くは続かない。
結局、全員の意識は査定結果へ向いていた。
教室前方ではワルが腕を組み、静かに前を見据えている。
以前のような尊大さはもうない。
ランキング戦でレインに敗れ、夜間奇襲訓練では自分の未熟さを思い知らされた。
あの日から彼は誰よりも訓練場へ通った。
授業が終われば剣を振り、休日も鍛錬を欠かさない。
努力はした。
だからこそ、その成果を確かめたかった。
その時、教室の扉が開く。
姿を現したのは担任のバルトだった。
半年を共に過ごし、生徒たちは一つだけ学んでいる。
この男は無駄話をしない。
だからこそ、教室は自然と静まり返った。
バルトは教壇へ上がり、一枚の紙を机へ置く。
その瞬間、教室の空気が変わった。
査定結果。
半年間の努力が記された紙だった。
「第2回査定を発表する」
短い一言。
それだけで誰もが息を呑む。
「まず一つ。今回の査定には夜間奇襲訓練の評価も含まれる」
教室に小さなどよめきが走った。
予想はしていた。
それでも教官の口から正式に告げられると重みが違う。
あの夜に見られていたのは剣技だけではない。
誰が持ち場を守ったのか。
誰が仲間を支えたのか。
誰が最後まで役割を果たしたのか。
すべてが評価対象だった。
「そして」
バルトは紙へ目を落としたまま続ける。
「今回、一名の昇格が決定した」
教室が一気にざわつく。
Aクラス。
それはBクラス全員が目指す場所だった。
「アルベルト・フォン・グランツ」
一瞬の静寂。
続いて納得の空気が教室を包む。
「やっぱりな」
「当然だろ」
「夜間訓練を見れば分かる」
そんな声があちこちから漏れた。
授業成績。
実技。
ランキング戦。
そして夜間奇襲訓練では、防衛線全体を見渡しながら最後まで指揮を執った。
あの日、その背中に助けられた生徒は一人や二人ではない。
アルベルトは静かに立ち上がり、一礼すると何事もなかったように席へ戻る。
その落ち着いた様子に、周囲は苦笑する。
「本当にあいつらしいな」
誰かの呟きに、何人もの生徒が頷いた。
発表は続く。
「第二位、アイザック・レオンハルト」
風属性魔法を操るBクラス屈指の実力者。
誰も異論はない。
三位、四位と名前が読み上げられるたび、教室のあちこちで小さなどよめきが起こる。
そして――
「第五位、ワル・フォン・ベルグ」
今度は驚きの声が上がった。
「五位まで上がったのか」
「すげぇ……」




