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英雄なのか?  作者: よろず
アルディア騎士学校
18/38

第2回ランク査定


第2回査定の日。

夜間奇襲訓練から数カ月間が過ぎ、王立騎士学校の生活は再び日常へ戻っていた。しかし教室に漂う空気だけは普段と違う。授業が始まる前だというのに、生徒達の会話はどれも同じ話題、誰もが何度も教室の扉へ視線を向けていた。

理由は誰もが分かっている。

今日が第2回査定の発表日だからだ。

入学から半年。

最初の査定で示された順位は入学試験の成績。、この半年の間に行われた授業、実技、ランキング戦、そして野外訓練によって大きく順位を変えていた。三ヶ月前なら入学試験の結果に過ぎなかった順位も、今ではそれぞれが積み上げてきた努力と成果を示すものになっている。

特に今回の査定には夜間奇襲訓練の評価が大きいと思われる。

その事実を知っているからこそ、生徒達は普段以上に結果を気にしていた。

「今度こそ二十位台前半だな」

ロイが自信満々に言った。

「前回も同じことを言っていたな」

ガレンが呆れたように返す。

「今回は違う。夜間訓練で活躍したからな。声だけは出ていた」

「何だその評価だよ」

その様子に周囲から小さな笑いが漏れたが、それも長くは続かなかった。結局のところ全員が査定結果を気にしているのだ。笑いながらも視線は何度も教室の扉へ向かう。

教室の前方では上位陣らしい生徒達が静かに結果を待っていた。

その中にワルもいた。

腕を組み、椅子へ深く腰掛けたまま前だけを見ている。以前のような余裕や傲慢さは薄れていた。ランキング戦でレインに敗北し、夜間奇襲訓練で自分の未熟さを知ったことで、この数ヶ月は誰よりも自主訓練へ打ち込んでいたからだ。

少なくとも順位は上がる。その確信だけはあった。

やがて教室の扉が開く。

入ってきたのは一年生Bクラス担任のバルトだった。

元第四騎士団10席。

先ほどまで続いていた話し声が自然と消えていくのは、もはやこのクラスでは当たり前の光景だった。半年という時間の中で、生徒達はこの男が無駄な話をしないことを理解している。また自分達の事をよく観てる事を知ってる

バルトは教壇へ上がると、一枚の紙を机へ置いた。

それだけで教室の空気が変わった。

査定結果。

誰もが待ち望んでいた紙だった。

「第2回査定結果を発表する」

教室の空気が目に見えて張り詰める。

ロイでさえ口を閉じる。

レインは普段と変わらない様子だったが、それでも周囲の緊張は感じていた。

バルトは紙へ目を落とした。

「まず一つ伝える事があるか」

教室中の視線が集まる。

「今回の査定には夜間奇襲訓練の評価も含まれている」

小さなどよめきが広がった。

予想していた者も多い。

だが実際に教官の口から告げられると重みが違う。

夜間奇襲訓練は今までの授業とは明らかに異質だった。魔物の群れに囲まれた夜の森、防衛線の維持、集団戦闘、役割分担。剣術や魔法だけでは乗り切れない状況だったことを全員が覚えている。

だからこそ順位の変動も予想が難しかった。

「そしてもう一つ」

バルトが続ける。

「今回、一名の昇格が決定した」

「「「昇格!」」」

教室がざわついた。

昇格。

つまりAクラスへの移動だ。

Bクラスにいる生徒達にとって、それは最も分かりやすい成功の証だった。

バルトは紙から視線を上げることなく名前を告げる。

「アルベルト・グランツ」

その瞬間、教室中に動揺が広がった。

もっとも、反論する者はいない。

普段日常の振る舞いもさることながら、授業成績、実技の成績は常にトップ。

夜間奇襲訓練での働きを思い返せば当然だった。

防衛線の構築。

戦闘中の指揮。

各所への判断。

あの場にいた全員が、アルベルトの存在によって混乱を最小限に抑えられていたことを知っている。

彼がいなければバルトが介入し演習は失敗していた。

「やっぱりか……」

誰かが呟く。

周囲も納得したように頷いていた。

アルベルト本人は騒ぎなど意に介した様子もなく席を立つと、軽く会釈をして再び腰を下ろした。

教室の空気がまだざわつく中、バルトは順位発表を続ける。

「二位、アイザック・レオンハルト」

再び納得の声が上がる。

アルベルトと並びBクラスを代表する実力者。

その名前に異論を唱える者はいなかった。

発表はそのまま続く。

三位。

四位。

上位者達の名前が呼ばれていく。

そして。

「五位、ワル・フォン・ベルグ」

教室が少しざわついた。

前回十二位。

そこから一気に五位まで上昇したことになる。

大幅な順位上昇だった。

ランキング戦での戦績、夜間奇襲訓練での防衛線維持。

その両方が評価されたのだろう。

ワル自身も僅かに表情を緩める。

もちろん満足ではない。

だが十二位から五位だ。

結果としては申し分なかった。

発表は続く。

十四位ではガレン。

十九位ではエリオット。

二十七位でロイの名前が呼ばれると、本人は嬉しそうに拳を握った。

「よし!」

前回三十位。

たった三つだが確かな前進だった。

ロイは学科さえいい成績を取れれば直ぐに上位へ上がるだろう。

一位だけが残る

ここまで来れば、誰もが気付く。

教室のあちこちから視線がレインへ集まる。

ロイは完全に固まっていた。

ガレンも無言。

ワルは腕を組む力が強くなっている。

バルトが紙をめくった。

「一位」

張り詰めた空気の中で名前が告げられる。

「――――」

教室の誰もが息を呑んだ。


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