反乱軍
王都――反乱軍本陣。
旧王城の大会議室には、反乱軍を率いる宰相をはじめ、有力貴族や将軍たちが顔を揃えていた。部屋の中央にはノルガルト侯国全土の地図が広げられ、その周囲には次々と伝令が駆け込んでくる。
「報告します! 南部各領にて国王派が一斉に決起! 王家支持を表明する領主が相次いでおります!」
伝令が下がるより早く、別の兵士が息を切らして飛び込んできた。
「西部でも複数の守備隊が離反! 王派へ合流したとのことです!」
「北部でも中立を保っていた領主が兵を招集しております! 各地で小競り合いが始まりました!」
報告が重なるたび、将軍たちの表情が険しくなる。
「……想像以上だな。」
「商人や冒険者が情報を運んだのでしょう。王家健在の噂が、これほど早く広がるとは。」
「数日前まで様子見を決め込んでいた連中まで動き始めたか……。」
誰もが地図へ視線を落とす中、宰相だけは静かに腕を組んだままだった。
「予想より早かった。」
その一言で、会議室は静まり返る。
将軍の一人が口を開く。
「ですが、ここまで準備してきた計画が崩れたわけではありません。」
「無論だ。」
宰相は落ち着いた口調で頷いた。
「我らは数年前から、この日のためだけに動いてきた。軍への根回し、各地の貴族との内通、兵糧と武器の備蓄……それだけではない。」
一度言葉を切り、ゆっくりと会議室を見渡す。
「カルドニア王国、とある派閥の支援があったからこそ、我らは今日まで力を蓄えることができた。」
将軍たちも静かに頷く。
反乱は勢いだけで起こしたものではない。
長い年月をかけ、勝てるだけの力を積み重ねた末の決起だった。
その時、部屋の奥から低い笑い声が響いた。
「兵が少々寝返った程度で騒ぐことか。」
壁へ寄り掛かっていた大柄な男が、不敵な笑みを浮かべる。
反乱軍へ加わった超越者の一人だった。
「王党派に残った超越者はバルドリック一人だ。」
隣に立つ男が腕を組み、鼻で笑う。
「数で負ける気はせん。」
さらに椅子へ腰掛けた三人目が口元を歪めた。
「決戦になれば終わる。」
「俺たち三人が前へ出れば、それで済む話だ。」
その言葉には絶対的な自信が滲んでいた。
将軍たちの表情にも次第に落ち着きが戻っていく。
「確かに、その通りですな。」
「兵力も物資も、依然としてこちらが優勢。」
「国王が生きていたところで、戦力差は変わりません。」
賛同の声が広がる中、宰相はゆっくりと地図の前へ歩み寄った。
王都から南へ続く街道へ視線を落とし、静かに口を開く。
「各地の小競り合いに付き合う必要はない。」
会議室の空気が変わる。
「王が生きている限り、王党派はいくらでも兵を集める。」
地図の中央へ指を置く。
「逆に言えば、王さえ討てば全て終わる。」
誰一人、異を唱える者はいなかった。
「各地へ散っている軍を呼び戻せ。」
「全軍を王都へ集結させる。」
将軍たちの目に力が宿る。
宰相はゆっくりと顔を上げ、一人ひとりを見渡した。
「狙うは一つ。」
短い沈黙が流れる。
「国王を討つ。」
その一言だけで十分だった。
「はっ!」
将軍たちは一斉に立ち上がる。
「直ちに全軍へ伝令を!」
「各軍団を王都へ集結させます!」
「決戦ですな!」
「この一戦で王党派を滅ぼしましょう!」
熱気に包まれる会議室を見渡しながら、宰相は静かに言い放った。
「ノルガルト侯国の命運は、この決戦で決まる。」
その命令は反乱軍全土へ伝えられ、各地へ散っていた軍勢は続々と王都周辺へ集結を始めた。
一方、南部では王党派もまた軍勢をまとめつつある。
両軍は互いの存在を意識しながら、決戦の地へ向けて静かに動き始めていた。
ノルガルト侯国の未来を懸けた戦いは、刻一刻とその時を迎えようとしていた。。




