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英雄なのか?  作者: よろず
アルカディア騎士編
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135/212

世界商談会開幕


ライゼン自由都市連合。 西大陸中央に位置するこの中立国家は、古くから「商人の国」と呼ばれてきた。 莫大な商業利益を背景に、特定の国家へ肩入れすることなく独自の中立を貫き、アルディア王国ともカルドニア王国とも対等な交易を続けている。そのため世界中の商人が集まり、大陸の物流と金融を支える一大拠点として発展を遂げてきた。


そして今、この街では数年に一度しか開かれない世界商談会の真っ最中である。


開催期間は約一か月。


その間、ライゼンへ集まるのは商人だけではない。


各国の王族や上級貴族、政府高官、軍関係者、学者、職人、冒険者。さらには一攫千金を狙う商会や新技術を売り込む魔導技師まで、大陸中の人々がそれぞれの目的を胸にこの街を訪れる。


表向きは商談会。


だが、その実態は世界最大規模の外交と情報戦の舞台でもあった。


商人同士が大型契約を結び、国家間では資源や技術の取引が進められる。時には一つの契約が国同士の勢力図を塗り替え、笑顔で交わされた握手の裏では、数え切れないほどの思惑が静かに交錯している。


その頃、レインとエレアは宿の二階にある部屋で窓の外を眺めていた。


広場では商人たちが忙しく行き交い、荷馬車の列は朝から途切れることがない。街は平和そのものに見えるが、その賑わいの裏側で各国の思惑が静かにぶつかり合っていることを、二人は知っていた。


「まだ命令は来ませんね。」


レインが呟くと、向かいに座るエレアも窓の外へ目を向け、小さく頷く。


「世界商談会は、まだ折り返しにも入っていません。第七騎士団が動くとすれば、これからでしょう。」


レインは静かに息を吐いた。


「今は待つしかありませんね。」


「ええ。ですが、待つことも任務の一つです。」


焦る様子はない。


二人とも、命令が下るまでは不用意に動かないと決めていた。


しばらく静かな時間が流れる。


やがてレインが立ち上がった。


「今日はどうしますか。」


「午前中は冒険者ギルドへ顔を出しましょう。」


エレアも席を立つ。


「依頼を受けるかは別として、商談会期間中の街の様子は見ておきたいですね。」


「そうですね。」


二人が部屋を出ようとした、その時だった。


コン、コン。


控えめなノックが響く。


「失礼する。」


聞き慣れた声だった。


レインが扉を開けると、そこには宿の主人グラディウスが立っていた。


「朝早く悪いな。」


「何かありましたか。」


「お前さん達に客だ。」


短い一言だった。


レインとエレアは顔を見合わせる。


この宿まで二人を訪ねてくる者は限られている。


グラディウスは廊下の奥へ視線を向け、小さく続けた。


「名は名乗っておらん。」


「だが、お前さん達なら会えば分かると言っておった。」


レインは静かに頷く。


「分かりました。」


エレアも後ろへ続く。


二人はグラディウスに案内され、そのまま一階の応接室へ向かった。

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