夜襲
夕食を終えた生徒達は、それぞれ思い思いの時間を過ごしていた。
行軍の疲労は大きい。
焚き火の周りでは会話も少なく、早々に休む者も多かった。
ロイ達はすでに半分眠っている。
そんな中、アルベルトだけは拠点の外周を歩いていた。
見張りの配置を確認しているのだ。
その途中で足を止める。
森を見る。
何かがおかしい。
理由は分からないが胸の奥がざわつく。
魔物の気配は無い様に思う。言葉にはできない違和感があった。
「見張りを増やそう」
近くの生徒へそう告げる。
「何かあるのか?」
「分からない。だが念のためだ」
生徒は首を傾げつつも頷いた。
レインは焚き火から少し離れた場所へ座っていた。
視線は森へ向いている。
低級魔物の気配だな、距離はまだある。
しかし不自然だな普通なら群れはもっと散らばるはずだ。
だが今夜の魔物達は違う。
一つの方向へ集められていて誘導されている。
レインはすぐに気付いた。
誰かの幻影魔法だな。
おそらく夜間訓練だ。
気付くべきなのは自分ではなく生徒達だ。
さらに夜はさらに深まっていく。
その時だった。
見張りの一人が突然立ち上がる。
「あっちを見ろ……」
緊張した声。
周囲の生徒達が振り返り、見張達の視線は森へ向いていた。
暗闇の中何かが動いた。
赤い光が一つまた一つと数え切れないくらい増えていく。
それが目だと気付くまで時間は掛からなかった。
「魔物だ!!」
叫び声が野営地へ響いた。
休んでいた生徒達が一斉に立ち上がる。
「なっ!?」
「どこだ!?」
「本当に魔物か!?」
まだ魔物が襲ってきてないのに拠点内の混乱が広がっている。恐怖は確実に伝染していった。
森の奥赤い目は増え続けていた。
「おい……」ロイの顔が引きつる。
「俺たちだけで対処するには多すぎるだろ。」
誰もがそう思った。
その瞬間だった。
「落ち着け!」
アルベルトの声が響く。
混乱した空気を切り裂くような声だった。
「武器をとれ」「昼間作った護衛表を思い出せ!」「荷馬車の前集まれ!」「勝手に前へ出るな!」
矢継ぎ早に指示が飛び生徒達が動き始める。
混乱していても分かる。
今は誰かの指示が必要だった。
そしてその役目を果たしているのがアルベルトだった。
森の奥で魔物達が一斉に駆け出す。
地面が震える。
枝が折れる。
獣の咆哮が夜を揺らす。
次の瞬間。
魔物の群れが野営地へ雪崩れ込んできた。




