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英雄なのか?  作者: よろず
アルカディア騎士編
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アジト


レインとエレアは一定の距離を保ちながら、東区の路地を進んでいく。


男は何度も角を曲がり、人目を避けるように細い路地ばかりを選んでいた。


だが、その足取りに迷いはない。


何度も通ったことがある者の歩き方だった。


やがて男は古びた二階建ての建物へ入っていく。


窓は閉ざされ、表札もない。


外から見れば、ごく普通の民家にしか見えなかった。


レインは路地の角で足を止め、静かに建物を観察する。


しばらくすると別の扉が開き、若い男が二人出てきた。


腰には短剣。


周囲を警戒するように辺りを見回すと、それぞれ別の方向へ歩き去っていく。


「見張りでしょうか。」


「その可能性は高そうですね。」


さらに数分。


今度は別の男が建物へ入り、入れ替わるように少年が出ていく。


その後も人の出入りは途切れなかった。


レインは建物から目を離さない。


「盗品を集める拠点……そう考える方が自然です。」


レインは周囲へ視線を巡らせた。


人通り。


逃げ道。


周囲の建物。


衛兵の姿はない。


ここで騒ぎになっても、すぐ駆け付けられる距離ではなさそうだった。


「依頼の品があるかだけ確認します。」


レインは静かに言う。


「盗品が見つかれば踏み込みます。なければ一度戻り、ギルドへ報告しましょう。」


「承知しました。」


エレアは短く頷いた。


二人は物音を立てないよう建物へ近づく。


扉の前でレインは耳を澄ませた。


話し声。


木箱を動かす音。


硬貨が触れ合う小さな音。


「十人前後ですね。」


「こちらも合わせます。」


レインはゆっくり扉へ手を掛けた。


軋む音とともに扉がわずかに開く。


隙間から中を覗く。


部屋の中央には机が並び、その上には財布や装飾品、宝石、小袋へ入った金貨が無造作に積み上げられていた。


盗品だった。


レインは静かに頷く。


「依頼は当たりです。」


そのまま扉を押し開ける。


室内の男たちが一斉に振り向いた。


「誰だ!」


その声より早くレインが動く。


最も近くにいた男の懐へ入り込み、鳩尾へ一撃。


男は息を詰まらせ、その場へ崩れ落ちる。


右から飛び掛かった男は腕を払われ、その勢いのまま床へ転がされた。


立ち上がろうとした瞬間、首筋へ軽い手刀が落ちる。


意識が途切れた。


一方、エレアも無駄な動きはない。


短剣を抜こうとした男の手首を払い、体勢を崩したところへ肘打ちを入れる。


逃げようとした男の足元へ風魔法を放つと、男は足を取られて転倒した。


「敵だ!」


奥から怒号が飛ぶ。


だが狭い室内では人数が多いことが裏目に出た。


互いにぶつかり、思うように武器も振れない。


その隙を逃さず、レインとエレアは一人ずつ確実に制圧していく。


戦闘は一分とかからなかった。


建物の中には縄で拘束された男たちが転がり、盗品だけが机の上へ残されている。


レインは積み上げられた財布を見渡し、小さく息を吐いた。


「予想以上ですね。」


「ええ。」


エレアも表情を引き締める。


「これだけあれば、一件や二件ではありません。」


レインは拘束した男たちの前へ歩み寄る。


「さて。」


穏やかな口調で問い掛ける。


「少し、この街のことを教えてもらえますか。」


男たちは黙ったままレインを睨みつける。


やがて、その中の一人が乾いた笑みを浮かべた。


「……お前ら、どこの組織だ?」


その一言で、室内の空気が静かに張り詰めた。

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