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英雄なのか?  作者: よろず
アルカディア騎士編
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治安悪ぅ


ガストン商会を後にしたレインとエレアは、その足で冒険者ギルドへ向かった。


昼が近づき、大通りの人通りは朝以上に増えている。


荷馬車が行き交い、商人たちは慌ただしく商談をまとめ、護衛の冒険者たちは目的地へ足早に歩いていた。


その喧騒を切り裂くように、怒鳴り声が響く。


「待て! 泥棒だ!」


人混みが揺れ、一人の男が人々の間を縫うように駆け抜けた。


衛兵があとを追うが、男は細い路地へ飛び込むと、あっという間に姿を消してしまう。


「ああ、またか。」


「今日は朝から三件目だな。」


周囲の人々は驚く様子もなく、荷物を抱え直して歩き出した。


レインとエレアも足を止めることなく、そのまま冒険者ギルドへ向かう。


昨日訪れたギルドは、今日も多くの冒険者と依頼人で賑わっていた。


受付には長い列ができ、酒場では護衛契約の話が飛び交っている。


レインは掲示板の前で足を止めた。


護衛依頼や討伐依頼は次々と持ち去られていく。


その一方で、一角だけは何枚もの依頼書が残ったままだった。


『盗難品捜索』


『盗品回収』


『スリ被害品奪還』


似た内容の依頼が並んでいる。


「気になりますか。」


受付嬢が穏やかに声を掛けてきた。


「この依頼だけ残っていますね。」


「時間が掛かる割に報酬が高くありませんから。護衛や討伐を選ぶ冒険者が多いんです。」


レインは昨日の出来事を思い返す。


街中で見た盗人。


それは珍しい事件ではなく、この街では日常の一部なのだ。


「この依頼を受けます。」


「承知しました。」


受付嬢は依頼書を受け取ると、一人の職員を呼んだ。


「依頼内容をご説明します。」


職員は二人を応接用の机へ案内し、一枚の地図を広げる。


「被害は昨日の昼過ぎです。地方から来られた商人が、大通りで買い付け資金の入った財布を盗まれました。」


地図の中央付近を指差す。


「現場はこの辺りです。」


レインは地図へ目を落とした。


「盗品を探すなら、まず売りに出される場所を探すべきですね。」


職員は頷く。


「その通りです。」


指先が地図の東側へ移る。


「まずは東区を調べてください。」


「東区には何があるんですか。」


「歓楽街と闇市です。」


職員は簡潔に答えた。


「盗品を換金しようとする者は、まずあちらへ流れることが多いですね。」


レインとエレアは視線を合わせる。


「まずは東区ですね。」


「ええ。」


受付嬢が依頼書を差し出した。


「お気を付けください。盗品を扱う連中は腕っぷしよりも、逃げ足が速いですから。」


「ありがとうございます。」


依頼書を受け取った二人はギルドを後にした。


向かう先は東区。


ライゼンでも、ひときわ独特の空気を持つ地区だった。

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