到着
商隊は夕方前、ライゼン自由都市連合首都・ライゼンの南門をくぐった。
門を抜けた瞬間、レインは思わず足を止める。
石畳の大通りいっぱいに荷馬車が連なり、商人たちの威勢のいい声が飛び交っていた。街の両側には大小さまざまな商会が軒を連ね、人も荷も絶え間なく行き交っている。
王都アルディアとは違う。
この街は商人たちが動かしている。
「無事到着だ!」
商隊責任者が振り返り、大きく息を吐いた。
「皆、ご苦労だった!」
護衛たちから安堵した笑い声が上がる。
依頼達成の手続きが進み、一人ひとりへ報酬が手渡されていく。
レインとエレアも報酬を受け取ると、責任者が穏やかに笑った。
「お二人とも助かりました。また機会がありましたら、よろしくお願いします」
「こちらこそ、お世話になりました」
挨拶を交わすと、商隊は荷下ろしの準備へ移っていく。
レインは荷馬車の列を眺めながら尋ねた。
「ベルグ商会へは」
「明日にしましょう」
エレアは街へ視線を向ける。
「今日は宿を確保し、街の様子を見ます。ガストンさんへの挨拶も、その後で十分です」
「分かりました」
二人は商隊へ一礼し、その場を後にした。
向かった先はライゼン冒険者ギルドだった。
四階建ての石造りの建物には絶え間なく冒険者が出入りし、依頼掲示板の前は人で埋まっている。
受付だけでも十を超えていたが、それでも長い列ができていた。
「すごいですね」
思わず漏れた言葉に、エレアは小さく頷く。
「商談会が近づけば、さらに増えます」
二人は受付へ向かった。
「ようこそ、ライゼン冒険者ギルドへ。本日はどのようなご用件でしょうか」
受付の女性が笑顔で迎える。
「アルディア王都からの護衛依頼の達成報告です。それと、長期滞在できる宿を探しているのですが」
受付嬢は少し困ったように笑った。
「でしたら、今日中に宿を押さえることをおすすめします」
「もう埋まり始めているんですか」
「はい。世界商談会までは、まだ三か月ありますが、大商会や各国の使節団は少しずつ到着しています。条件の良い宿から順番に埋まっていくんです」
そう言って街の地図を広げる。
「空室はまだあります。ただ、長期滞在をご予定でしたら、早めの方がよろしいかと」
レインとエレアは顔を見合わせる。
「まずは宿ですね」
「ええ」
二人は頷き合った。
ライゼンへ着いたばかりだった。
それでも街全体は、三か月後の世界商談会へ向けて、すでに静かに動き始めていた。




