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英雄なのか?  作者: よろず
アルディア騎士学校
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野外演習



ランキング戦解禁から一ヶ月。

王立騎士学校の空気は入学当初とは大きく変わっていた。

放課後になれば訓練場のどこかで必ずランキング戦が行われている。

順位は固定ではない。

下位が上位へ挑み、勝てば入れ替わり順位を一つでも上げるため、生徒たちは競い合い、剣を振り、魔法を磨いていた。

敗北を引きずる者は少ない。

悔しがる暇があるなら鍛えろ。

それがアルディア騎士学校だった。

実際、この一ヶ月で順位表は何度も書き換わっている。

上位に食い込む者もいれば、挑戦を受け続けて順位を落とす者もいる。


その中でワルも以前より順位を上げていた。

レインに敗れた日から訓練量を増やした結果だった。

もちろん負けたことは忘れていない。

訓練場でレインを見かければ少しだけ面白くない気分にもなる。

だが以前のような苛立ちはなかった。

一度本気でぶつかり合ったからこそ次は勝つ。

今のワルにあるのはそれだけだった。

そんなある日。

ホームルームへ入ってきたバルドは、教壇へ立つなり言った。

「来週から三日間の野外訓練を行う」

教室がざわつく。

一年生にとって初めての本格的な校外訓練だった。

ロイが真っ先に手を挙げる。

「野外訓練って何するんですか?」

「行軍、野営、補給任務、警戒任務だ」

生徒たちは顔を見合わせた。

バルドはそんな反応を見ながら続ける。

「勘違いするな。入学時も言ったが騎士は剣や魔法を振るうだけの仕事じゃない」

「戦場では兵站が止まれば軍は動かん。夜の警戒を怠れば寝ている間に死ぬ。行軍に耐えられなければ戦う前に脱落する」

「お前たちは騎士候補生だ。ならば騎士として必要なことを学んでもらう。欲しいのは剣闘士ではない」

その日から一年生の空気が少し変わった。  

これは学校側がランキング戦だけが全てではないと、改めて思い出させたのいのだろう。

放課後の話題はランキング戦だけではなくなる。

携行品の準備。

野営地の話。

演習地の噂。

上級生から聞いた体験談。

初めての野外訓練を前に、生徒たちはそれぞれ思うところがあった。

そして一週間後。

まだ日も昇り切らない早朝、一年生たちは校庭へ整列していた。

全員が軍用リュックを背負い、訓練用装備を身につけている。

普段の授業とは違う光景だった。

校庭の端には補給用の荷馬車が並び、教官たちも鎧姿で待機している。

まるで小規模な軍隊だった。

生徒たちの間にも緊張が漂う。

「思ったより本格的だな……」

ロイが小声で呟いた。

ガレンも周囲を見回している。

エリオットは黙って靴の紐を確認していた。

レインは前方を見ていた校門の向こうには王都の街並み。

さらにその先には広大な森林地帯が広がっている。

今回の演習地はその奥だ。

やがてバルドが前へ出た。

「これより野外訓練を開始する」

低く響く声。

「目的地は北方演習地。到着予定は夕刻。途中で脱落するな」

数人の生徒が顔を引きつらせた。

「各クラスごとに行動しろ。勝手な行動は禁止だ」

バルドは全員を見回す。

「出発」

号令と共に列が動き始めた。

重い装備を背負った生徒たちが校門を抜けていく。

王立騎士学校の一年生による初めての野外訓練。

それはただの授業ではなく、騎士への第一歩だった。


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