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英雄なのか?  作者: よろず
アルディア騎士学校
10/38

攻防


アルディア王立騎士学校には大小合わせて十を超える訓練場が存在する。

その中の一つ、小規模訓練場にはすでに多くの生徒が集まっていた。

ランキング戦解禁初日。

しかもBクラス上位者同士の対戦だ。

観客はBクラスの生徒だった。

AクラスはAクラス内でランキング戦が行われているため来ていない。他のクラスも同様だ。

それでも一年Bクラス全員集まっている。

訓練場の周囲を囲むように生徒たちが並び、中央にはレインとワルが向かい合っている。

審判を務めるのは担任のバルドだった。


「両者、前へ」

二人が歩み出る。

木剣を受け取り、互いに構えた。

バルドは二人を見比べる。

「ルールは通常のランキング戦だ。降参、戦闘不能、または私が続行不可能と判断した時点で終了」

空気が張り詰める。

バルドが右手を上げた。

「始め!」

次の瞬間だった。

「はぁっ!」

ワルが地面を蹴った。真っ直ぐ迷いなく。

豪快な踏み込み。

上段から振り下ろされる一撃。

ガキィン!

レインが受ける。

だが防御した腕が大きく弾かれた。

「おおっ!」

観客から声が上がる。

ワルは止まらない。横薙ぎ。突き。斬り上げからの連続攻撃。

力任せと言われればそれまでだが、Bクラス上位にいるだけの実力はある。


重いし速いな。

そして攻撃が途切れない。

レインはひたすら受け続けた。

後退する。受け避けまた後退する。完全に押されているように見えた。

「ワル優勢か」「改めて剣撃は凄いね」「レイン、防戦一方だぞ」

観客たちがざわめきワルの口元が歪んだ。

そうだ。これだ。これが見たかった。自分が押している。皆が見ている。レインに何もさせない。

「どうした!」

さらに踏み込み炎属性の魔力を剣へ流し込む。

赤い光が刀身を包んだ。

「っ!」

振り下ろされた一撃をレインは横へ飛んで回避した。

地面が溶ける。

再び歓声。

ワルは興奮していた。勝てる、いや勝つ。

今まで積もり積もった感情を全て叩きつけるように攻撃を続けた。

だが、時間が経つにつれ違和感が生まれ始める。

当たらないあと少しあと一歩。

そこまで追い詰めるのに決定打だけが届かない。

レインは派手な反撃もしない。

ただ防ぎ避け距離を取る。その繰り返し、まるで嵐が過ぎるのを待つように。

「くそっ!」

ワルはさらに魔力を込めた。

しかし、その頃には呼吸が荒くなり始めていた。剣術と魔法を同時に使えば消耗は大きい。

額から汗が流れる腕も重い。だがそれに本人は気付かない、焦りが視野を狭めていた。

「終われぇぇぇ!」

渾身の斬撃。

レインが後退する。

その瞬間。

ワルの足がわずかにもつれた。

疲労だった、ほんの一瞬本当に一瞬だけ生まれた隙にレインの目が細くなる。

次の瞬間。

今までで最も速いレイン踏み込みが木剣を狙った

「――っ!?」

ワルが目を見開いた。

木剣が弾かれ体勢が崩れる。

レインは追撃しそのまま胴へ一撃を叩き込んだ。

ドンッ!

鈍い音。

ワルが数歩よろめきさらに後ろへ倒れた。

静寂。

「そこまで!」

バルドの声が響いた。

「勝者、レイン・グランツ」

一瞬遅れて歓声が上がる。

「うおおお!」「マジか!」「最後でひっくり返した「どちらもスゲー!」

誰の目にも接戦だった。

あと少しワルの攻撃が当たっていれば、体力が持っていれば結果は逆だっただろう。

運が良かった。

そう思う者も多いだろう。

実際、レイン自身もそんな顔をしている。

「危なかった」息を整えながら呟く。

一方、地面に座り込んだワルは呆然としていた。

負けた。

押していたはずだった攻めてもいた。勝ったと思った瞬間すらあった。

なのに負けた。

バルドは二人を見渡した。

「良い試合だった」

短い一言。

だが教師としての評価は高かった。

最後まで諦めず耐えたレイン。

攻め続けたワル。

どちらもBクラス上位に相応しい内容だった。観客たちも興奮したまま感想を語り合っている。



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