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英雄なのか?  作者: よろず
アルディア騎士学校
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10/212

攻防

ありがとうございます!この場面はかなり良いです。特に**「ワル視点で優勢に見える→実はレインは観察していた」**という構成は、戦記ラノベらしい読み味があります。


私なら、以下の点だけ調整します。


アルディア王立騎士学校には、大小合わせて十を超える訓練場がある。


 その一つである小規模訓練場には、授業を終えた一年Bクラスの生徒たちが集まっていた。


 ランキング戦解禁初日。


 最初に行われるのは、十一位レイン・クロードと十二位ワル・フォン・ベルグの一戦だった。


 順位差はわずか一つ。


 どちらが上かを測るには、これ以上ない組み合わせである。


「剣ならワルが有利だろ」


「いや、レインも実技は安定してるぞ」


「順位差一つなら接戦じゃないか?」


 観戦する生徒たちは思い思いに勝敗を予想していた。


 その声はワルの耳にも届いていたが、自然と都合のいい言葉だけが残る。


 皆が自分を見ている。


 入学から三か月。訓練でも授業でも結果は出してきた。それでも周囲の話題は、気づけばレインへ向いている気がしてならなかった。


 平民出身でありながら教師の評価は高く、剣も魔法も器用にこなす。


 だからこそ、この場で勝つ意味がある。


「両者、前へ」


 審判を務めるバルトの声で、訓練場の空気が引き締まる。


 二人は中央へ進み出ると、学校支給の練習用剣を受け取った。


 刃は潰されているが、魔力を通すことを前提に鍛えられた一本だ。木剣より安全でありながら、魔法を交えた実戦形式の訓練にも十分耐えられる。


 レインは剣を軽く握り、静かに構えた。


 対するワルは、すでに勝利までの流れを頭の中で組み立てている。


 最初から押す。


 相手へ考える時間を与えず、剣で圧力を掛け、炎属性魔法を織り交ぜながら一気に押し切る。


 今の自分が最も得意とする戦い方だった。


「降参、戦闘不能、または俺が続行不可能と判断した時点で終了とする」


 バルトが右手を上げる。


「始め!」


 同時に、ワルが地面を蹴った。


 迷いのない踏み込みから放たれた上段の一撃を、レインは正面から受け止める。


 鋭い金属音が響く。


 ワルは止まらない。


 横薙ぎ。


 斬り上げ。


 さらに鋭い突き。


 勢いで押し潰すための連撃だった。


 レインは後退しながら、それを受け続ける。


 しかし、崩れない。


 剣へ流した魔力で衝撃を受け止めるのではなく、斜めへ流しているのだ。


 派手さはない。


 だが、一つ一つの動きに無駄がなかった。


「ワルが押してるぞ!」


 歓声が飛ぶ。


 その声が、ワルの胸をさらに熱くした。


 そうだ。


 もっと見ろ。


 俺が上だと、全員に見せつけてやる。


「まだだ!」


 剣身へ炎属性の魔力が走る。


 赤く染まった刃が振り下ろされ、レインの剣と激突した瞬間、熱気が周囲へ弾けた。


 普通の生徒なら受け止めるだけで体勢を崩される威力。


 だが、レインも剣へ魔力を流し込み、真正面から受け切る。


 爆破音に似た魔力同士がぶつかり合う乾いた音が響いた。


 観戦していた生徒たちが息を呑む。


 剣術だけではない。


 魔法を織り交ぜた、本格的な実戦形式へ変わったからだ。


 ワルは畳み掛ける。


 炎を纏った重い一撃で魔力を流し、次の瞬間には魔力を抑えて速度重視の連撃へ切り替える。


 単なる力押しではない。


 幼い頃から叩き込まれた剣術と魔法を組み合わせた連携は、十二位という順位以上の迫力を持っていた。


 それでも、レインは変わらない。


 一度だけ大きく弾かれたように見えた場面でも、次の一歩で間合いを整えていた。


 押し込まれている。


 後退している。


 それは事実だ。


 しかし、ワルの剣は最後の一線だけが届かない。


 ワルの表情から、少しずつ余裕が消えていく。


 なぜ崩れない。


 炎を使った。


 速度も上げた。


 押し込んでいる。


 それなのに決め切れない。


 焦りが生まれた、その瞬間だった。


 剣筋へ、ほんのわずかな力みが混じる。


 バルトは、それを見逃さなかった。


 もちろん、観戦する生徒の多くには分からない。


 彼らの目には、依然としてワルが優勢に映っている。


 だが、バルトには違って見えていた。


 レインは勝負を急いでいない。


 攻撃を受けながら、踏み込みの癖、魔力を乗せる瞬間、力みが生まれるタイミングを静かに見極めている。


「終われぇぇぇ!」


 ワルが吠えた。


 全身の力と炎属性の魔力を乗せた、この試合最大の一撃。


 踏み込みは鋭く、剣筋も悪くない。


 観戦していた何人かは、この瞬間に勝負が決まったと思った。


 しかし。


 レインが、この試合で初めて前へ出た。


 たった一歩。


 それだけで、ワルの間合いが狂う。


 振り下ろされた剣の内側へ潜り込み、自らの剣を斜めへ滑らせる。


 炎を纏った一撃は止められたのではない。


 勢いを受け流され、軌道を逸らされ、そのまま空を切った。


 次の瞬間。


 ワルの手から練習用剣が高く弾き飛ばされる。


「なっ――」


 驚きの声は最後まで続かなかった。


 レインの剣が、寸分違わずワルの胴を打ち据える。


 重すぎず、浅すぎず。


 試合を終わらせるには十分な一撃だった。


 衝撃を受けたワルは数歩よろめき、そのまま片膝をつく。


 訓練場から音が消えた。


 押していたのはワルだった。


 誰もが、そう見えていた。


 だが最後まで立っていたのは、レインだった。


「そこまで」


 静寂を破るように、バルトの声が響く。


「勝者、レイン・クロード」


 一拍遅れて歓声が爆発した。


「今の見えたか!?」


「剣を弾いたのか?」


「最後の踏み込み、速すぎるだろ!」


 生徒たちは興奮した様子で声を上げ、片膝をつくワルと、静かに剣を下ろすレインを交互に見つめていた。


 ただ一人、バルトだけは歓声に加わらない。


 最後の一撃は偶然ではない。


 レインは最初から攻め急がず、ワルの勢いを利用し、焦りによって剣筋が乱れる瞬間だけを待っていた。


 派手な勝ち方ではない。


 だが、それこそが勝つための戦い方だった。

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