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英雄なのか?  作者: よろず
アルカディア騎士編
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108/212

裏の祭り


「止まれ!」


先頭を歩いていた護衛の鋭い声が街道へ響いた。


それまで一定の速度で進んでいた商隊が、一斉に動きを止める。


御者は反射的に手綱を引き、護衛たちは迷うことなく荷馬車の前へ出た。穏やかだった空気が一変し、街道を緊張が支配する。


「どうした!」


商隊責任者が前へ出る。


先頭の護衛は街道脇の林を見据えたまま答えた。


「……誰かいる」


言い終わるより早く、森の奥から一本の矢が飛び出した。


荷馬車の幌へ深々と突き刺さる。


「敵襲!」


怒号と同時に、十人ほどの盗賊が林から飛び出した。


剣や斧を手に、一斉に商隊へ襲い掛かる。


「迎え撃て!」


護衛たちも即座に応戦した。


先頭の護衛が盗賊の剣を受け止め、その横から別の護衛が斬り込む。態勢を崩した盗賊へさらに槍が迫り、逃げ場を失った男は地面へ転がった。


レインの前にも一人の盗賊が迫る。


振り下ろされた剣を受け流し、そのまま手首を打つ。


盗賊の剣が地面へ転がった。


拾おうと身を屈めた瞬間、飛び込んできた護衛が男を組み伏せる。


レインは深追いせず、次の敵へ視線を向けた。


エレアも後方から風魔法を放つ。


狙うのは盗賊ではなく足元。


体勢を崩したところへ護衛たちが次々と踏み込み、連携よく制圧していく。


戦闘は十分も続かなかった。


商隊護衛は盗賊との戦いに慣れている。


人数でも連携でも劣る盗賊たちは次第に崩れ、生き残った者は森へ逃げ込み、数人がその場で拘束された。


「追うな!」


責任者の号令が飛ぶ。


護衛たちは深追いせず、すぐに持ち場へ戻った。


積み荷の確認。


負傷者の手当て。


荷馬車の点検。


慌ただしく動きながらも、誰一人として無駄な動きはない。


その様子を見ながら、レインが口を開く。


「盗賊にしては少ないですね」


「ええ」


エレアも森へ目を向ける。


「この規模の商隊を襲うには、明らかに人数が足りません」


「……様子見ですか」


「その可能性はあります」


エレアは短く答えた。


「護衛の数や動きを確かめるためだったとしても、不思議ではありません」


その時、一人のベテラン商人が苦笑しながら近づいてきた。


縛られた盗賊たちを見下ろし、小さく肩をすくめる。


「ライゼンへ近づくほど、こういう連中は増えてくる」


「世界商談会が近いからですか」


レインが尋ねると、商人はゆっくり頷いた。


「人も荷も集まるからな。それを狙う奴も増える」


それだけ言うと、それ以上は語らなかった。


「先のことを考えるより、まずは無事にライゼンへ着くことだ」


そう言い残し、商人は自分の持ち場へ戻っていく。


責任者が商隊を見渡した。


「出発する!」


再び荷馬車が軋み、商隊はゆっくりと街道を進み始める。


ライゼンまで、まだ数日。

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