冒険者デビュー
依頼掲示板の前には、多くの冒険者が集まっていた。
討伐依頼、採取依頼、護衛依頼、調査依頼。
所狭しと貼られた依頼書を前に、それぞれが条件や報酬を見比べながら仕事を探している。
レインも掲示板へ目を向けた。
「思っていたより多いですね」
「王都ですから」
エレアは依頼書を順に眺めながら答える。
「各地から商隊や冒険者が集まります。その分、依頼も自然と集まるんです」
やがて一枚の依頼書で手が止まった。
「これですね」
レインも隣から覗き込む。
商隊護衛。
目的地はライゼン自由都市連合方面。
交易都市を経由しながら西へ向かう定期商隊で、護衛を二名募集していた。
「ライゼン方面ですか」
「ええ。依頼をこなしながら現地へ入れば自然です。登録したばかりの冒険者が理由もなくライゼンへ現れるより、商隊護衛を終えて到着した冒険者の方が違和感はありません」
「なるほど」
二人は依頼書を持って受付へ向かった。
受付嬢は内容を確認し、微笑む。
「ライゼン方面の定期商隊ですね。こちらでしたら、お二人とも受注可能です」
レインは依頼書へ視線を落とした。
「受注可能ということは、依頼ごとに条件があるんですか」
「はい。依頼には推奨ランクがあります。危険度に応じて受注できる方が決められているんです」
受付嬢は冒険者カードを見ながら続ける。
「お二人はCランクですので、商隊護衛や長距離護衛、一般的な討伐依頼などが受注できます」
「AランクやSランクになると違うんですか」
「はい。国家や大商会から直接依頼を受けることもあります。人数も少なく、王国でも名前を知られている冒険者ばかりですね」
レインは小さく頷いた。
「ランクは依頼を達成すれば上がるんですか」
「達成実績はもちろんですが、それだけではありません。依頼内容や実績、信頼なども含めて総合的に査定されます」
単純な強さだけではない。
信用もまた、冒険者にとって大切な実力ということだった。
受付嬢は依頼書をまとめながら言う。
「こちらの商隊は明日の早朝、日の出三十分前に王都西門を出発します。途中の交易都市を経由しながらライゼン自由都市連合へ向かいます」
エレアは迷わず答えた。
「この依頼を受けます」
「ありがとうございます」
受付嬢は手際よく手続きを進め、二人の冒険者カードへ受注記録を刻んだ。
「これで手続きは完了です。明朝、西門前で依頼人をご紹介いたします」
「ありがとうございます」
二人は受付を離れる。
レインは懐へしまった冒険者カードへ軽く触れた。
今日から自分たちは騎士ではない。
どこにでもいるCランク冒険者。
その仮の身分とともに、第七騎士団としての最初の任務が静かに動き始めようとしていた。




