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英雄なのか?  作者: よろず
アルカディア騎士編
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105/212

Cランク


案内された先は、ギルド裏手に設けられた訓練場だった。


石壁に囲まれた広場では、木剣を打ち合う音が絶えず響き、弓兵が的へ矢を放ち、魔術師たちが魔法の制御を繰り返している。王立騎士学校ほどの広さはない。だが漂う空気はまるで違った。


ここにいる者たちは誰かに評価されるためではない。


依頼を生きて終えるために腕を磨いている。


ハマイは広場の中央で足を止めると、背中の大剣を壁際へ立て掛け、代わりに訓練用の大剣を手に取った。


「ハマイだ。試験は単純。俺と手合わせをしてもらう。勝つ必要はない。依頼を任せられる実力があるかを見るだけだ」


二人を見渡す。


「どちらから来る」


「私からお願いします」


エレアが一歩前へ出る。


「魔術師か」


「落ち着いてるな、新人にしては」


周囲の冒険者たちが興味深そうに視線を向ける。


エレアは試験用の杖を受け取り、静かに構えた。


「始め」


合図と同時にハマイが踏み込む。


重い一撃。


だがエレアは半歩だけ下がり、足元へ土壁を生み出して軌道を逸らす。さらに風魔法で間合いを保ち、決して無理はしない。


数合打ち合ったところで、ハマイが一気に距離を詰めた。


土壁を押し切り、大剣が杖を弾き上げる。


切っ先が喉元で止まった。


「そこまで」


「ありがとうございました」


一礼したエレアは静かに下がる。


ハマイは表情を変えなかった。


だが胸の奥に、小さな違和感だけが残る。


「次」


「はい」


今度はレインが前へ出た。


木剣を受け取り、軽く握りを確かめる。


「始め」


ハマイが真っ直ぐ踏み込む。


大剣が唸りを上げる。


レインは真正面から受け止めず、身体をわずかにずらして衝撃を流した。


二撃目も。


三撃目も。


受け切らず、流す。


避け過ぎず、残る。


反撃も浅い。


出発前に決めた通り、実力は見せ過ぎない。


見物していた冒険者たちからも声が漏れる。


「おい、新人にしてはやるな」


「無茶に攻めねぇ」


「基礎がしっかりしてる」


ハマイは踏み込みを深くした。


鋭く振り上げた一撃が木剣を弾き飛ばし、切っ先が肩口で止まる。


「そこまで」


「ありがとうございました」


レインは頭を下げた。


ハマイは二人を見比べる。


新人としては十分以上。


それでも妙な違和感だけが残った。


勝てそうで勝てない。


崩れそうで崩れない。


まるで最初から見せる実力を決めていたようだった。


もっとも、それを確かめる術はない。


「……査定を出す」


短く告げる。


「酒場で待っていろ」


そう言い残し、受付へ戻っていった。


レインとエレアも酒場へ向かう。


昼時ということもあり、酒場は多くの冒険者で賑わっていた。


「最近、西街道の魔物が増えてるらしいぞ」


「だから護衛料も上がってるのか」


「あの商隊、明日には北へ出るって話だ」


様々な話が飛び交っている。


エレアが小声で言った。


「こういう場所には、依頼書へ載る前の情報が集まります」


「正式な報告になる前の情報ですね」


「ええ。真偽を見極めるのも冒険者の仕事です」


レインは静かに頷いた。


その時、受付嬢が二人へ歩み寄ってくる。


「お待たせいたしました。査定が終わりましたので、受付までお願いいたします」


受付へ戻ると、カウンターには二枚の銀灰色の冒険者カードが置かれていた。


「試験結果をもとに、お二人ともCランクでの登録となります」


その言葉に、近くの冒険者たちが振り向く。


「新人でCランクか」


「ハマイが認めたなら当然だな」


小さなざわめきは広がったが、それ以上騒ぐ者はいない。


受付嬢はカードを差し出す。


「Cランクになりますと、討伐依頼に加え、商隊護衛や個人護衛なども受注できます」


「ありがとうございます」


カードを受け取ったレインは、表面へ目を落とした。


今日から自分たちは、表向きは王国の騎士ではない。


どこにでもいるCランク冒険者だ。


エレアが掲示板へ視線を向ける。


「では、依頼を探しましょう」


二人は並んで掲示板へ歩き出した。

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