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戦えない俺は見捨てて生き残る——戦場の違和感から全てを操る転生戦国記  作者: 黒狐
第9章 金剛の遺志

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第74話 邂逅

夜明け前。


義信は馬を駆けていた。


息を切らしながら。

ただ前だけを見る。


(生きねば)


(父上……)

(宗明様……)


この命は

二人に繋がれた命。


ここで失う訳にはいかなかった。


背後から土煙が舞う。


「見つけたぞ!!」


追っ手だった。


義信は歯を食いしばる。


「もう追い付いたか……!」


さらに速度を上げる。


だが。


ヒュッ!!


飛来した矢。


義信は咄嗟に防人御太刀を抜いた。


ギィン!!


矢を弾く。


(おのれ……!)


もう弓が届く距離まで詰められている。


「逃がすな!!」


騎馬が迫る。


ドガガガガガッ!!


ついに追い付かれた。


ガキィン!!


一人目の刀を受け流す。


その勢いのまま

義信は馬上から刀を振り抜いた。


「はぁっ!!」


追っ手の一人が崩れ落ちる。


「一人やられたぞ!」


すぐに二人目。

三人目。

左右から挟み込まれる。


ガキィン!!

ガンッ!!

ギィン!!


防ぐだけで精一杯だった。


(ぐっ……!)


肩を浅く斬られる。


腕にも傷が増える。


相手は腕利きばかり。


数も多い。


(私は……!)


(死ぬ訳にはいかぬのだ!!)


義信は森へ飛び込んだ。


木々の間なら

少しでも数を活かしにくく出来る。


ダダダダダダッ!!


それでも追っ手は止まらない。


ガキィッ!!

ガンッ!!

ギギギッ!!


刀を弾く。


避ける。


斬られる。


血が飛ぶ。


体力も限界へ近付いていた。


その時。


バンッ!!


馬が大きく体勢を崩す。


ザザァァァァッ!!


義信は地面へ投げ出された。


「ぐっ……!」


追っ手は容赦しない。


一斉に刀が振り下ろされる。


ギィン!!


辛うじて受け止める。


だが

もう片方から蹴りが飛ぶ。


ドンッ!!


「がっ……!」


体勢が崩れた。


しまった。


その隙を見逃さず

一人の追っ手が刀を振り上げる。



(まずい――)




ヒュッ。



グサッ。


追っ手の胸へ一本の矢が突き刺さった。


男はそのまま崩れ落ちる。


「なっ!?」


さらに

森の左右から怒号が響いた。


「うおおおおおお!!」


「行けぇぇぇ!!」


黒布を巻いた集団が飛び出す。


「何者だ!?」


追っ手が動揺する。


大斧が振り下ろされる。


鉄だった。


「どけぇぇぇ!!」


蒼鷹兵が吹き飛ぶ。


反対側では

弥助が野太刀を振るう。


「逃がすな!!」


さらに

高所から矢が降る。


ヒュッ!!

ヒュッ!!


「ぐあぁっ!!」


追っ手が次々と倒れていく。


「伏兵だ!!」

「退け!!」


追っ手は一気に劣勢となった。


「チッ!」

「これ以上は危険だ!」

「撤退するぞ!!」


森の奥へ消えていく。


弥助が追おうとした。


「待て」


静かな声。


全員が止まる。


黒布を巻いた男が木陰から姿を現した。


山だった。


「追わなくていい」


弥助が頷く。


「分かった」


山は義信へ歩み寄る。


「大丈夫か」


義信は警戒したまま答えた。


「……はい」


「助けて頂き」

「かたじけない」


山は小さく笑う。


「怪我が酷いな」

「一度休め」


義信は首を振った。


「私は追われる身です」

「迷惑を掛けてしまいます」


「気にしなくていい」

山は穏やかに答えた。


その後ろから

鉄が笑う。

「そうそう」

「うちははずれ者ばっかだからな!」


弥助が苦笑する。

「そんなこと言ったら志乃に怒られるぞ」


鉄は肩を竦めた。

「……ここだけの話にしといてくれ」


周囲から笑いが起きる。


義信は呆然としていた。


(なんだ……)

(この人たちは)


笑っている。


血だらけなのに。


命懸けの戦いを終えた直後なのに。


どこか温かい。

そんな空気だった。


正直。

身体も。

心も。

限界だった。


義信は静かに頭を下げる。


「では……」

「お言葉に甘え」

「少しの間、お世話になります」


山は頷く。

「ああ」

「行こう」


義信はその背中を見る。


名前も知らない。


素性も知らない。


それでも

不思議と安心出来た。


こうして相良義信は

後に運命を共にする山隊との一歩を踏み出した。

その頃。


白蓮城。


城内は未だ混乱していた。


宗明亡き後

重臣たちは慌ただしく動き回る。


赤堂烈真は廊下を歩きながら呟く。

「四天王も」

「俺らだけになっちまったな」


隣を歩く氷牙も静かだった。

「義隆殿は討ち死に」

「義信は脱走」

「雷姫は軟禁」


「……早過ぎる」


赤堂は拳を握る。

「国のために命張ってきた結果がこれか」


氷牙は低く言う。

「強硬派が力を持ち過ぎた」


「義隆殿がおられた頃は」

「まだ均衡が保たれていた」


赤堂は大きく息を吐く。

「嘆いても仕方ねぇ」


氷牙も頷く。

「ああ」

「これ以上」

「好きにはさせん」


二人は静かに歩き出した。

一方。


白蓮城の一室。


雷姫は窓の外を見ていた。


静かな庭。

風に揺れる木々。


その裏で。

欲望。

疑念。

陰謀。

全てが渦巻いている。


雷姫は静かに目を閉じた。


(義信殿)

(生き延びろ)


その願いだけが

今の雷姫を支えていた。


(続く)

読んでいただきありがとうございます。

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