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戦えない俺は見捨てて生き残る——戦場の違和感から全てを操る転生戦国記  作者: 黒狐
第9章 金剛の遺志

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第69話 最後の光

朝。


義信は目を覚ました。


妙だった。


外が騒がしい。


人の声。

足音。

怒鳴り声。


普段の白蓮城とは明らかに違う。


義信はゆっくりと身体を起こした。


そして。

違和感に気付く。


部屋の隅。


一本の刀が立て掛けられていた。


「……?」


見覚えが無い。


義信は眉をひそめる。


手に取る。


刀身を見る。


血が付いていた。


乾き始めている。


「なんだこれは……」


自分の防人御太刀ではない。


誰かの刀だ。


昨夜は深く眠っていた。


気配にも気付かなかった。


義信は舌打ちした。


「くっ……」


不用意だった。


宗明様の屋敷だからと

安心してしまった。


義信は刀を置く。


そして部屋を出た。


廊下は慌ただしい。


誰もが走り回っている。


顔色も悪い。


義信は近くを通った家臣を呼び止めた。


「何事だ」


男は振り返る。


顔面蒼白だった。


「よ、義信様……」


声が震えている。


義信の胸に嫌な予感が走る。


「どうした」


男は唇を震わせた。



「宗明様が……」

「亡くなられました」



頭が真っ白になる。


「……は?」


理解出来なかった。


男は続ける。


「朝方」

「お呼びに参った者が発見したのです」


「既に息は……」


そこから先は聞こえなかった。


義信は駆け出していた。


そんな馬鹿な。


あり得ない。


昨夜。


確かに話した。


声を聞いた。


生きていた。


それなのに。


なぜ。


「宗明様!!」


廊下を駆ける。


人を押し退ける。


誰かが呼び止める。


だが止まらない。

やがて。


宗明の部屋へ辿り着いた。


人だかり。


重臣。


家臣。


兵。


そして。


床に広がる血。


義信の足が止まる。


そこにいた。


宗明だった。


肩口から大きく斬られている。


血は既に黒くなり始めていた。


「……」


声が出ない。


昨夜まで

生きていた。


自分を匿い。


何も聞かず。


何も求めず。


ただ守ってくれた。


最後の支えだった。


「そんな……」


義信は膝をついた。


「そんな馬鹿な……」


周囲は静まり返っている。


誰も声を掛けない。


その時だった。


「相良殿」


義信が顔を上げる。


六道幻庵だった。


穏やかな表情。

変わらぬ笑み。


だが。

今の義信にはその顔が異様に見えた。


六道は静かに口を開く。


「確認したいことがあります」


義信の目が細くなる。


「……何だ」


六道は答えた。


「昨夜」

「どちらにおられましたかな」


空気が凍る。


義信は理解出来なかった。


今。

何を言われたのか。


「……何だと?」


六道は微笑む。


「確認です」

「宗明様の元におられたのは義信殿」

「最後にお会いしたのも義信殿」


義信の拳が震える。


「貴様……」


六道は肩を竦めた。


「勿論」

「疑っている訳ではありません」


「ですが」

「調べねばなりませんので」


その瞬間。

怒声が飛んだ。


「六道殿!!」


九鬼影宗だった。


「今はそのような話をする時ではない!!」


六道は頭を下げる。


「失礼」

「ですが必要なことです」


九鬼は険しい顔のまま黙る。


周囲の者たちも。

誰も何も言わない。


だが。

義信には分かった。


見られている。


疑われている。


そんな視線だった。


宗明が死んだ。


そして。

その死と同時に。

自分へ向けられる目も変わった。


義信は宗明の亡骸を見る。


父を失った。


宗明も失った。


最後の支えも消えた。


胸の奥に。

今まで感じたことのない孤独が広がる。


(宗明様……)


答える者はいない。


ただ。

白蓮城の空気だけが。

確実に変わり始めていた。


そして。


六道幻庵は誰にも見えない場所で。

小さく微笑んでいた。


(続く)

読んでいただきありがとうございます。

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