表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦えない俺は見捨てて生き残る——戦場の違和感から全てを操る転生戦国記  作者: 黒狐
第9章 金剛の遺志

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
66/120

第65話 不穏な足音

山隊砦。


今日も朝から怒鳴り声が響いていた。


「なんでまた掘ってんだよぉぉぉ!!」

鉄の叫びだった。


弥助も額の汗を拭う。

「終わったんじゃなかったのかよ」

「外濠完成しただろ」


迅も疲れた顔をしている。

「俺もそう思ってた」

「思ってたんだがなぁ……」


全員の視線が山へ向く。


山は少し申し訳なさそうに答えた。

「必要なんだ」


目の前には掘られた細い水路。

近くの川から。

砦へ水を引き込むための工事だった。


鉄がスコップへ体重を預ける。

「おい山」


「これもう蒼鷹の砦より立派じゃねぇか?」


迅が吹き出す。

「それ俺も思った」


弥助も頷いた。

「言うな」


山は苦笑する。


弥助が完成しかけた水路を見る。

そして山へ視線を向けた。


「なあ」


「一応聞くけどよ」


「どこまで作る気だ?」


山は少し考える。


そして答えた。


「生き残れるまで」


弥助が頭を抱えた。


「だからそれ答えになってねぇんだよ」


笑いが起きる。


だが。

誰も本気では反対しない。


蒼鷹軍。

鬼庭盛綱。

塚原軍。


まともに戦えば死んでいた。


この砦があったから生き残れた。


それは皆が理解している。


山は掘られた水路を見る。


(もう少しだ)


元いた世界で知った城。


大阪城。

小田原城。

熊本城。


そして上田城。

少数で大軍を翻弄した城。


簡単には落ちなかった城。


もちろん。

完全再現など出来ない。


だが。

考え方は使える。


数で勝てないなら。

場所で勝つ。


山は静かに頷く。


(あと少し)


砦は。

さらに牙を剥こうとしていた。

その頃。

白蓮城。


相良義信は廊下を歩いていた。


最近。

何かがおかしい。


軍議。

城内。

重臣たち。


全てが少しずつ変わっている。


義信が歩く。


すると。

兵が視線を逸らした。


侍女も。

家臣も。


誰も目を合わせない。


(……なんだ)


義信は足を止める。


だが。

答えは無い。


歩き出そうとした時だった。


「義信様」


振り返る。


相良家の古参家臣だった。


男は周囲を確認する。


そして。

小さな声で言った。


「夜はお気を付け下さい」


義信が眉をひそめる。


「何があった」


男は首を振る。


「分かりませぬ」


「ですが」


「嫌な空気です」


それだけ言うと。

男は去って行った。


義信はしばらく立ち尽くす。


(嫌な空気……か)


胸騒ぎだけが残った。

夜。


自室へ戻る。


誰もいない。


静かな部屋。


そのはずだった。


義信の足が止まる。


机。


そこに一本の短刀が突き刺さっていた。


ギィ……


風が窓を揺らす。


義信はゆっくり近付く。


短刀。


その柄には紙が結ばれていた。


義信は紙を開く。


そこに書かれていた文字を見た瞬間。


表情が凍る。


『次は外さぬ』


静かな部屋。


誰もいない。


だが。

確かに。

何者かはここへ来た。


そして。

自分を見ている。


義信は無意識に防人御太刀へ手を伸ばした。


胸の奥で。

初めて恐怖が芽生える。


白蓮の中で。

何かが始まっていた。


(続く)

読んでいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたら、ブックマークや評価で応援してもらえると嬉しいです。

続きも毎日更新していきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ