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戦えない俺は見捨てて生き残る——戦場の違和感から全てを操る転生戦国記  作者: 黒狐
第8章 戦乱の狼煙

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第57話 波紋

白蓮軍。


雷姫の元へ一騎の伝令が駆け込んだ。


馬から飛び降りる。

息を切らしながら叫ぶ。


「急報!!」


周囲の空気が張り詰める。

雷姫が振り返った。


伝令は震える声で報告する。


「白蓮四天王!!」

「相良義隆様、討死!!」


静寂。


誰も声を出せなかった。

続けて伝令が叫ぶ。


「氷牙様より伝令!!」

「即時撤退せよとのことです!!」


雷姫は目を閉じた。


やはり。


最悪の形になった。

地図を確認した時から違和感はあった。


進軍は順調過ぎた。

敵の抵抗が薄い。

砦は落ちる。

領地は奪える。


だが。

黒曜が弱過ぎた。


そして気付いた。


白蓮四天王の位置。

横並びだった軍勢は。

いつの間にか縦に伸びていた。

先頭。

赤堂。

中央。

自分。

最後尾。

相良。


距離が離れる。

援軍が遅れる。

各個撃破が可能になる。


氷牙も同じ結論に辿り着いたのだろう。


だが。


まさか相良が討死するほどとは。


「如何しますか」


副将の榊原が問う。


雷姫は即答した。


「撤退する」


周囲がざわつく。

雷姫は地図を見た。


「だが真っ直ぐ戻れば危険だ」

「敵もそれを読んでいる」


静かに指を動かす。


「進路を変える」

「遠回りでも構わない」

「まず生きて戻る」


榊原が頷いた。


「承知しました」


すぐに伝令が走る。


撤退命令が全軍へ伝わる。


雷姫軍。

撤退開始。


馬を走らせながら。

雷姫は一瞬だけ別の男を思い出した。


黒布の男。

山狐。

あの男もまた。

生き残るために戦っていた。


その意味が。


今は少しだけ理解できた気がした。



一方。


黒曜領最深部。


赤堂烈真は笑っていた。


「弱ぇなぁ!!」


巨大な刀を振り回す。

黒曜兵が吹き飛ぶ。


「こんなもんかァ!!」


豪快な笑い声が響く。


だが。

そこへ伝令が到着する。


「急報!!」


赤堂が振り返る。


伝令は顔を青くしていた。


「相良義隆様が討死されました!!」


空気が変わる。


赤堂の笑みが消える。


「……は?」


誰も動かない。

伝令は続けた。


「氷牙様より撤退命令です!!」


赤堂は黙る。

しばらく何も言わない。

やがて。

低く呟いた。


「相良が?」


信じられなかった。

相良義隆。

白蓮四天王。


あの男が。

黒曜に討たれた。


「如何いたしましょう」


部下が恐る恐る尋ねる。

赤堂は舌打ちした。


「チッ」


本音を言えば。

まだ暴れ足りない。


ここまで来たのだ。

黒曜を削れるだけ削りたい。


だが。

それは感情だ。


軍を預かる将としての判断ではない。

赤堂は目を閉じた。


「相良殿……」


ほんの僅かな沈黙。


そして。


静かに黙祷を捧げる。

やがて目を開いた。


「撤退だ」


部下が安堵する。


「はっ!!」


赤堂は馬へ跨る。


「全軍撤退!!」


その声が響いた。



同じ頃。


黒曜領。

影月城。


久我景定の元へ報告が届いていた。


「報告!!」


「黒曜三騎士の活躍により白蓮四天王の一人、相良義隆を討ち取りました!!」


家臣たちは歓喜している。


だが。

景定は静かだった。


「そうか」


ただそれだけ。


家臣が首を傾げる。

景定は扇を閉じた。


「ご苦労」


「下がって良い」


家臣は去る。


部屋に静寂が戻る。

景定は地図を見た。


相良討死。


ここまでは想定内。

多少時間は掛かった。


だが。

あの相良を討ち取った価値は大きい。

問題はここからだった。

景定は小さく笑う。


「さて」


「ここからは相手の運次第か」



その頃。


黒曜三騎士は再び集結していた。


牙城兵馬。

篠塚景虎。

鷺森宗玄。


三人の前へ伝令が到着する。


「報告!!」


「雷姫軍が撤退を開始しました!!」


景虎が目を細める。


「早いな」


伝令は続けた。


「さらに撤退方向も変更しております」


「我らとの接触を避ける進路です」


牙城が舌打ちした。


「チッ」


「逃げ足だけは速ぇな」


宗玄が苦笑する。


「それだけ有能なのでしょう」


景虎も頷く。


「流石は雷姫だ」


だが。

宗玄が微笑んだ。


「まだ獲物は残っています」


牙城が笑う。


「あァ?」

「誰だ?」


宗玄は答えない。

代わりに景虎が言った。


「赤堂烈真」


牙城の笑みが深くなる。


「はっはっはァ!!」

「白蓮の焔将か!!」


巨大な薙刀を肩へ担ぐ。


「猛将と聞く!!」

「楽しみじゃねェか!!」


景虎は呆れたように息を吐いた。


「牙城殿は戦うことしか考えていないのか」


宗玄が笑う。


「まぁ」

「牙城殿らしくて良いでしょう」


三騎士は馬へ跨る。

相良を討った。


だが。

戦いは終わらない。


次の標的は。


白蓮四天王。

赤堂烈真。


黒曜の包囲網は。

まだ閉じ始めたばかりだった。


(続く)

読んでいただきありがとうございます。

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