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戦えない俺は見捨てて生き残る——戦場の違和感から全てを操る転生戦国記  作者: 黒狐
第8章 戦乱の狼煙

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第54話 相良 義隆

「ガキィィィンッ!!」


玄と鬼庭。

二人の刃が激しくぶつかる。

互いに譲らない。

鬼庭が笑う。


「どうしたァ!!」

「その程度か!!」


玄は答えない。

ただ刀を振るう。

止める。

時間を稼ぐ。

今はそれだけだった。


その時。

後方から声が響いた。


「おい!!」

「塚原が前に行ったぞ!!」

迅だった。


塚原の統率により。

山隊の奇襲で乱れていた蒼鷹軍は少しずつ立て直されていた。


退路の確保。

進軍路の確保。

混乱した兵の再編。

塚原自身もその道を進む。


「追え!!」

迅が駆ける。

その後を鉄。

弥助。

孫六隊が続いた。


「ガンッ!!」

「ギギギッ!!」

「ガキィィィン!!」

戦場へ塚原が到着する。


「鬼庭殿!!」

「ご無事であったか!!」


玄の目が細くなる。

敵が増えた。

状況が変わる。


鬼庭は鼻を鳴らした。

「ふん」

「来たのか塚原殿」


塚原は即座に言う。

「鬼庭殿!!」

「急ぎ蒼鷹へ撤退しますぞ!!」

「このままでは黒曜へ攻めても勝てる見込みが低い!!」


鬼庭が顔を歪める。

「ふざけるな!!」

「ここまで来て引けというのか!!」


「一旦撤退し体勢を立て直すべきだ!!」


「できぬ!!」

鬼庭が怒鳴る。

「こやつらは今ここで始末する!!」

「武功の糧とすると決めている!!」


塚原も怒鳴り返した。

「鬼庭殿!!」

「今は武功のことを考えている場合ではないですぞ!!」


「俺は負けぬ!!」

「塚原殿だけ帰還すればよかろう!!」


だが。

その後ろから。


「逃すかよ」


迅隊が到着した。

さらに。

鉄。

弥助。

孫六隊も続く。


塚原の表情が変わる。

「……くっ」


想定外だった。

鬼庭の説得に時間が掛かった。

まさか追い付かれるとは思っていなかった。


距離が詰まる。

さらに詰まる。


弥助が刀を掲げた。

「行くぞ!!」


山隊が一斉に駆け出す。


「うおおおおおお!!」


乱戦が始まった。

「ガキィィィン!!」

「グサッ!!」

「ぐあぁぁぁっ!!」


山は後方から全体を見ていた。


今こそ逆転の機会。

ここを逃せば。

次にやられるのはこちらかもしれない。


進むしかない。


塚原軍は退路確保。

進軍路確保。

そのために兵を分散していた。


そこへ。

迅隊の猛追。

山隊の集中攻撃。


蒼鷹軍の被害は広がっていく。


塚原が叫んだ。

「鬼庭殿!!」

「いい加減にしろ!!」

「このままでは武功どころではない!!」


鬼庭は舌打ちする。

「チッ……」


流石に理解した。

状況が悪い。


鬼庭が刀を肩へ担ぐ。

「仕方ねぇな」


塚原が安堵する。

「よし!!」


「皆の者!!」

「急ぎ撤退だ!!」


蒼鷹軍が後退を始める。


塚原は確保された退却路へ向かった。

だが。


その先には。


負傷しながらも立つ山がいた。

その目は死んでいない。


そして後ろでは。

孫六が静かに弓を構えていた。


退路は再び塞がれていた。



一方。

黒曜領。


氷牙は馬を走らせていた。


(相良殿……!!)


願うことしか出来ない。

それが悔しかった。


自分は白蓮四天王。

それなのに。

今は何も出来ない。


鷺森宗玄が行く手を塞ぐ。


「どけ」


氷牙が言う。


宗玄は静かに微笑む。

「申し訳ない」

「行かせるわけにはいきません」


氷牙は周囲へ視線を走らせた。


正面は宗玄軍。

左右も警戒されている。

また同じように回り込もうとしても。

すぐに塞がれるだけだ。


宗玄もそれを見抜いていた。

「同じ手は通じませんよ」


氷牙は歯を食いしばる。


時間がない。

ならば。

突破するしかない。

犠牲はでるが仕方ない。


氷牙は刀を抜いた。


「全軍」

「正面突破だ!!」


宗玄の目が細くなる。


「来ますか」


両軍の空気が張り詰めた。


焦りだけが募っていく。



その頃。

相良義隆は突撃していた。


「おおおおおおおおっっっ!!!!」


叫ぶ。


部下たちも続く。


もはや死兵の突撃だった。


「ガキィィィン!!」

「グサッ!!」

「バキィィィン!!」


多勢に無勢。


敵を倒す数より。

傷を負う数が増えていく。


部下も倒れる。

また一人。

また一人。


景虎が見ていた。


そして。

再び口を開く。


「諦めよ」


「もう一度言う」

「降伏しろ」


「お前ほどの男だ」

「久我殿へ掛け合っても良い」


「いずれ一軍を率いる将にもなれる」


相良は小さく笑った。


「お心遣い感謝する」


「だが」


「私も武士の端くれだ」


「死場所は自分で決める」


「そして」


「私は生涯白蓮と共にある」


周囲の部下たちを見る。


「皆」

「ここまで私について来てくれたこと感謝する」


「ここが我らの死場所のようだ」


「生きて返せぬこと」


「申し訳なく思う」


部下が叫ぶ。


「相良様!!」


「そんなこと言わないで下さい!!」


「我らは相良様だから付いて来たのです!!」


「最後までお供いたします!!」


相良は微笑んだ。


景虎は静かに目を閉じる。


「そうか……」


「残念だ」


そして。

牙城へ戦闘続行の合図を送った。


兵馬が笑う。


「行くぞォォォ!!」


同時に。

相良は刀を握り締める。


迫る黒曜軍。


逃げ場は無い。


分かっている。


だが。

それでも前へ出る。


(皆……すまぬ)


脳裏に浮かぶ。


自分を逃がすため死んだ近衛兵。


今も隣に立つ部下たち。


そして。

走り去った義信の背中。


(生きて返してやれず……すまぬ)


相良は静かに息を吐く。


最後に。

主君の顔を思い浮かべた。


(宗明様……)


(どうかご無事で)


刀を構える。


「続けぇぇぇぇぇっ!!」


相良義隆は。

黒曜軍へ向かって駆け出した。

(続く)

読んでいただきありがとうございます。

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