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戦えない俺は見捨てて生き残る——戦場の違和感から全てを操る転生戦国記  作者: 黒狐
第8章 戦乱の狼煙

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第53話 覚悟

「ガキィィィン!!」


火花が散る。

玄と鬼庭。

二人の刃が激しくぶつかり合った。

鬼庭が笑う。


「はっはっはっ!!」


「まさかお前一人で俺を止めるつもりじゃねぇだろうなァ!!」


重い一撃。

玄は受け流す。

足が地面を滑る。

だが崩れない。

鬼庭はさらに踏み込んだ。


「どうした!!」


「俺を斬るんじゃなかったのかァ!!」


刀が振り下ろされる。

玄が躱す。

再び金属音。


「ガキィィン!!」


鬼庭は笑う。


「お前自身も俺の武功の糧になりたいのか!!」

「それとも!!」

「斯波義継の後を追うかァ!!」


だが。


玄の目は揺れない。

先程までとは違う。

今は違う。

怒りはある。

憎しみもある。

鬼庭を斬りたい気持ちは消えていない。

だが。


今の役目は違う。

止めること。

時間を稼ぐこと。

鬼庭をここへ縛り付けること。

玄は静かに刀を構えた。


「来い」


短い言葉。

鬼庭が笑った。


「面白ぇ!!」


その後方。

戦場では無数の金属音が響いていた。


「ガキィィン!!」

「ガンッ!!」


「ぐあぁぁっ!!」


怒号。

悲鳴。

血飛沫。

弥助が刀を振り抜く。


「今だ!!押し込め!!」


蒼鷹兵が倒れる。

鉄も豪快に突撃する。


「どけぇぇぇ!!」


巨体が敵を吹き飛ばした。

さらに。

上空から矢が降る。


「ヒュッ!!」


「ぐあっ!!」


孫六隊だった。

高所。

矢倉。

孫六が面倒そうに弓を引く。


「そこ」


放つ。

蒼鷹兵が倒れる。


「次」


放つ。

また倒れる。

淡々としている。

だが確実だった。

蒼鷹兵が叫ぶ。


「弓だ!!」


「上だ!!」


孫六は欠伸をした。


「今更っすか」


再び矢を放つ。

塚原は歯を食いしばった。


「おのれ……!!」


理解していた。

分断された。

その一瞬。

そこを狙われた。

山の策。

鬼庭だけを見るよう仕向け。

後方へ奇襲を叩き込んだ。

塚原が叫ぶ。


「密集するな!!」


「隊列を整えろ!!」


「迎撃しろ!!」


だが。

既に遅かった。

ばらけた兵から確実に減っていく。

じわじわと。

確実に。

蒼鷹軍の数が削られていた。


塚原は迷う。

状況は悪化した。

仮に勝ったとしても。

この先に黒曜領がある。

消耗した状態で踏み込めば死ぬ。


撤退するか。


だが。


鬼庭を置いていけるか。


葛藤は短かった。

塚原は決断する。


「前方の道を開け!!」


周囲が振り向く。


「鬼庭殿の元へ向かう!!」


「鬼庭殿を連れ蒼鷹へ撤退する!!」


兵たちが動く。


「退却路も確保せよ!!」


「崩れるな!!」


塚原自身も刀を抜いた。

鬼庭のいる前線へ向かう。

一方。

黒曜領。

氷牙軍。

その前に立ちはだかる男。

鷺森宗玄。

氷牙が低く言う。


「どけ」


宗玄は微笑んだ。


「申し訳ないですが」


「これ以上は行かせられません」


氷牙は睨む。

焦り。

苛立ち。

全てが滲んでいた。

相良を救わねばならない。

急がねばならない。

氷牙軍が横へ回り込もうとする。


だが。

宗玄軍も動く。

再び前へ出る。


「だから」


宗玄は笑った。


「行かせませんって」


氷牙の眉が僅かに動く。

戦えば抜ける。

だが。

損害は避けられない。

ここで兵を失えば。

相良を救えても。

次がない。

氷牙は迷った。



その頃。

相良義隆は静かに空を見ていた。

逃げ場は無い。

理解している。

それでも。

援軍が来れば。

そう信じたかった。

だが。

後方から新たな軍勢が現れる。


「追いついたぜェェェ!!」


牙城兵馬。

黒曜三騎士。

相良は目を閉じた。

近衛兵たちは。

もう戻らない。

自分を逃がすため。

命を使った。


「……すまぬ」


小さく呟く。

そして。

近くにいた息子を呼んだ。


「義信」


若き息子が振り向く。


「我らが突撃する」


「お前はその隙に退却しろ」


義信が目を見開く。


「父上……!?」


相良は続ける。


「白蓮へ戻れ」


「伝えろ」


「敵の強さを」


「敵の策を」


「そして」


少しだけ笑った。




「我らの最後を」




義信の目に涙が浮かぶ。


「嫌です!!」


「私も最後までお供します!!」


相良は首を振った。


「ならぬ」


「お前は若い」


「未来がある」


腰の刀を外す。

防人御太刀。

長年共に戦った愛刀。

それを義信へ差し出した。


「これを託す」


「父上……!!」


「頼んだぞ」


義信は震える手で刀を受け取った。


「……必ず」


「必ずお届けします」


相良は頷く。


「うむ」


「達者でな」


義信は深く頭を下げた。


「父上も……ご武運を」


最後の別れだった。

景虎が前へ出る。


「話は終わったか」


静かな声。


「降伏しろ」


兵馬も笑う。

「お前ほどの男を失うのは惜しい」


「俺と一緒に暴れようぜェ」


相良は即答した。


「断る」


刀を抜く。

そして。

戦場へ響く声で叫んだ。



「我が名は相良義隆!!」


「白蓮四天王の一人!!」


「金剛城城主なり!!」


刀を掲げる。


「我が首を取れると思う者は!!」


「かかって来るが良い!!」



相良は義信へ視線を送る。

義信は涙を堪えながら馬を走らせた。

そして。




「いざ参る!!」




白蓮四天王。

相良義隆。



最後の戦いが始まった。

(続く)

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