表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦えない俺は見捨てて生き残る——戦場の違和感から全てを操る転生戦国記  作者: 黒狐
第8章 戦乱の狼煙

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
53/72

第52話 包囲網

山隊に緊張が走っていた。


退路はない。


失敗すれば死ぬ。


だが——


生きるためには動くしかない。


山もまた同じだった。


胸の奥が重い。


これは賭けだ。


自分の策だ。


失敗すれば誰かが死ぬ。


玄かもしれない。


弥助かもしれない。


鉄かもしれない。


それでも——


(勝つしかない)


(俺たちが生きて明日を迎えるために)


山は視線を逸らさない。


鬼庭盛綱を見続ける。



周囲では各隊も配置についていた。


孫六隊は高所へ移動。


拠点内部を見渡せる位置から弓を構える。


迅隊は側面に展開。


敵の増援や横槍に備え、周囲の警戒を続けている。


そして志乃は医療所にいた。


負傷者受け入れの準備。


包帯。


薬草。


水。


戦いが激しくなることを理解していた。



鬼庭は進む。


山隊を斬り倒しながら。


力任せに。


強引に。


獣のように。


「どけェ!!」


蒼鷹兵も続く。


その後ろでは塚原が全体を見ていた。


そして——


鬼庭が角を曲がる。


塚原たちから鬼庭の姿が見えなくなる。


その瞬間。


山は左手でなまくら刀を掲げた。


「今だ!!」



「うおおおおおお!!!」


地響きのような雄叫び。


隠れていた山隊が一斉に飛び出した。


弥助隊。


鉄隊。


玄隊以外の全戦力。


狙うのは鬼庭ではない。


塚原軍。


そして鬼庭配下。


後方部隊だった。


「なっ——!?」


蒼鷹兵たちが動揺する。


弥助が吠える。


「大将だけ見てんじゃねぇぞ!!」


鉄も突っ込む。


「今度はこっちの番だ!!」


次々と蒼鷹兵が倒れる。


不意打ち。


完全な奇襲だった。


塚原の目が鋭くなる。


「っ!!」


すぐに理解した。


狙い。


山の策。


鬼庭と後方を切り離すつもりだ。


「迎撃せよ!!」


塚原が叫ぶ。


「鬼庭殿を孤立させるな!!」


蒼鷹兵たちも慌てて動く。


だが既に山隊は食い込んでいた。



そして。


鬼庭が曲がった先。


そこには一人の男が立っていた。


玄だった。


鬼庭が足を止める。


「……お前か」


玄は静かに刀を構える。


「ようやくだな」


鬼庭が笑う。


「はっはっは!!」


「俺を止めるつもりか!!」


玄の目は揺れない。


「止める」


「そして——」


刀を握る手に力が入る。


「討つ」


鬼庭の笑みが深くなった。


「面白ぇ」


両者が向き合う。


決着の時が近付いていた。



一方。


黒曜領。


相良義隆は馬を走らせていた。


連れている兵は十騎にも満たない。


後方から金属音が聞こえる。


叫び声も聞こえる。


牙城兵馬と戦う近衛兵たちの声だ。


だが。


走るたびに遠ざかる。


小さくなる。


そう思いたいと自分に言い聞かせる。


殺されて声が減り、小さくなっているのだとは思いたくなかった。


(皆……)


(すまぬ……!)


相良は唇を噛む。


「相良様!!」


部下が叫ぶ。


「間もなく砦です!!」


前方を指差す。


相良も顔を上げる。


だが。


違和感があった。


砦が見えない。


代わりに。


黒い影。


近付く。


さらに近付く。


影は横へ広がる。


広がる。


広がる。


やがて。


砦への道そのものを塞いでいることに気付いた。


緊張が走る。


誰も喋らない。


そして。


その正体が見えた。


黒曜三騎士。


篠塚景虎。


その軍勢だった。


相良が息を呑む。


「……そういうことか」


黒曜は待っていた。


最初から。


全てを。



その頃。


氷牙軍も全力で進軍していた。


氷牙は前だけを見る。


(急げ)


(間に合え)


相良殿を救えるのは自分しかいない。


だが。


走りながら氷牙は理解していた。


これは黒曜という国を囮にした奇策だ。


(敵領の深くまで攻めすぎたのだ……)


白蓮四天王はそれぞれ別方向へ進軍した。


先頭には赤堂。


中央に雷姫。


そして最後尾に相良。


いつの間にか横に並んでいた陣形は縦に伸び切っていた。


距離が離れる。


援軍が遅れる。


そして今——


相良だけが孤立した。


(我らは泳がされた)


(全て黒曜の掌の上だったのか……)



そして。


前方に軍勢が見えた。


黒い旗。


黒い鎧。


行く手を塞ぐ大軍。


氷牙の表情が変わる。


その先頭。


一人の男が馬上から見下ろしていた。


扇を持つ男。


穏やかな笑み。


まるで全てを見通しているかのような目。


「お急ぎかな」


男が口を開く。


氷牙の目が細くなる。


男は静かに一礼した。


「初めまして」


「黒曜三騎士」


「鷺森宗玄と申します」


氷牙は理解した。


相良。


そして自分。


白蓮四天王を分断するための策。


全ては。


この瞬間のために。


仕組まれていた。


そして——


(これが……久我景定かっ!!)


初めて。


氷牙の背筋を冷たいものが走った。


(続く)

読んでいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけたら、ブックマークや評価で応援してもらえると嬉しいです。

続きも毎日更新していきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ