第50話 怪物と盾
鬼庭盛綱は拠点入口の前に立っていた。
周囲には蒼鷹兵。
その後方には塚原茂光。
鬼庭は刀を肩へ担ぎながら笑う。
「さて」
「そろそろ終わらせるか」
塚原が眉をひそめた。
「鬼庭殿」
「まさか自ら入られるおつもりですか」
鬼庭は鼻で笑う。
「だから勝てぬのだ塚原殿」
「賊相手に何を恐れる」
「俺が山狐の首を取る」
塚原は小さくため息をついた。
「……好きになされ」
だが放置も出来ない。
結局、塚原も同行することとなった。
⸻
拠点内部。
物見が叫ぶ。
「来た!!」
「今度は鬼庭本人だ!!」
その報告に弥助が笑う。
「ようやく大将のお出ましか」
鉄も刀を担ぐ。
「叩き潰してぇな」
だが山は違った。
静かに首を振る。
「いや」
「鬼庭が動いたってことは」
「塚原も動く」
山の視線は鬼庭ではない。
塚原へ向いていた。
「ここからが本番だ」
その一言に玄も頷く。
鬼庭は強い。
だが塚原は厄介だ。
二人とも理解していた。
⸻
鬼庭は迷わず進んだ。
伏兵が飛び出す。
玄隊。
左右から斬りかかる。
だが。
「遅い」
鬼庭の刀が閃く。
「ぐぁっ!!」
玄隊の一人が吹き飛んだ。
続けて二人目。
三人目。
鬼庭は止まらない。
まるで獣だった。
⸻
別方向。
鉄隊も襲い掛かる。
「死ねやァ!!」
鉄が振るう大剣。
だが鬼庭は受け流す。
ガキィンッ!!
激しい火花。
鉄が顔をしかめる。
「ちっ……」
重い。
そして速い。
真壁軍副将。
その肩書きは伊達ではなかった。
⸻
戦場は乱れる。
蒼鷹兵が倒れる。
山隊も倒れる。
被害が出始めていた。
鬼庭が笑う。
「どうしたァ!!」
「そんなものか山狐!!」
刀を振り回しながら進む。
その後方。
塚原は戦わない。
ただ見ていた。
通路。
偽装。
伏兵位置。
建物配置。
全てを観察している。
山はその様子を見ていた。
(やっぱりか……)
鬼庭ではない。
厄介なのは塚原だ。
⸻
場面は白蓮側へ移る。
白蓮兵が牙城兵馬へ斬りかかった。
だが。
「遅ぇ」
牙城の一撃。
白蓮兵が吹き飛ぶ。
その瞬間。
後方から相良義隆が飛び出した。
「はぁっ!!」
ガキィンッ!!
渾身の一撃。
だが牙城は防いだ。
火花が散る。
二人は同時に距離を取った。
⸻
黒曜三騎士。
牙城兵馬。
白蓮四天王。
相良義隆。
ついに両雄が相対する。
⸻
「ふんっ!!」
相良が踏み込む。
「はっはァ!!」
牙城も迎え撃つ。
キンッ!!
ガキィンッ!!
金属音が響く。
一合。
二合。
三合。
十合近い斬り合い。
互いに一歩も引かない。
⸻
牙城が笑う。
「はっはっはァ!!」
「白蓮の盾ってよォ!!」
「思ったよりやるじゃねェか!!」
相良は歯を食いしばる。
「舐めるなぁ!!」
再び激突。
ガキィンッ!!
キンッ!!
火花が散る。
⸻
だが。
徐々に相良が押され始める。
純粋な武力。
膂力。
体格。
全てにおいて牙城が上だった。
「くっ……!」
相良が後退する。
牙城は笑う。
「どうしたァ!!」
「もっと本気出してこいよォ!!」
⸻
そして。
ガキィンッ!!
大きな音が響いた。
相良の体勢が崩れる。
足がよろめく。
一瞬の隙。
⸻
牙城は見逃さなかった。
「もらったァ!!」
巨大な刃が振り下ろされる。
⸻
「相良殿ォォォ!!!」
側近の絶叫が戦場へ響いた。
(続く)
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