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戦えない俺は見捨てて生き残る——戦場の違和感から全てを操る転生戦国記  作者: 黒狐
第8章 戦乱の狼煙

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第48話 救出

鬼庭は邪悪な笑みを浮かべていた。


目の前には動けない山狐。


真壁義臣ですら討ち取れなかった男。


その首が、今まさに手の届く場所にある。


(俺がやる)


(真壁殿でも成し得なかった山狐討伐をなァ!!)


鬼庭の口元が吊り上がる。


出世。


武功。


栄光。


全てが手に入る。


「はっはっは!!」


「終わりだ山狐ォ!!」


鬼庭は刀を振り上げた。


そして――


山へ向けて振り下ろす。


その瞬間。


何かが足元へ転がった。


コロリ――


「……あ?」


鬼庭が視線を落とす。


直後。


ドォンッ!!


激しい爆発音が響いた。


「ッ!?」


白煙が一気に広がる。


視界が消える。


周囲が真っ白に染まった。



「玄!!」


志乃の叫び声が響く。


「山を連れて下がりな!!」


「!!」


玄は即座に動いた。


山を肩へ担ぎ上げる。


「行くぞ!」


「っ……」


山は痛みに顔を歪める。


それでも抵抗はしない。


玄は全力で後退した。



志乃も駆け寄る。


「あんたら揃いも揃って何やってんだい!」


怒鳴りながら周囲を確認する。


追撃はまだ来ていない。


白煙が時間を稼いでいる。


山は砕けた小手の残骸を押さえ、激痛に顔を歪めながらも苦笑いした。


「……すまん」


「助かった」


志乃は睨みつけた。


「あとで説教だ」


そして玄を見る。


「玄!!」


「山を医療所まで運ぶ!」


「すぐだ!」


「……ああ」


玄は山を担ぎ上げる。


志乃も周囲を警戒しながら後退した。


そして医療所へ戻った瞬間――


「志乃!」


迅が駆け寄ってきた。


「どこ行ってたんだ!?」


「探したんだぞ!?」


志乃は呆れたように答える。


「怪我しないよう立ち回っただけさ」


「嘘つけ」


「どうせまた危ない所行ったんだろ」


「うるさいね」


そう言いながら志乃は山を見る。


「話は後だ」


「まずは手当てが先だよ」


迅もようやく山の怪我に気付く。


「頭っ!?」


「怪我したのか!?」


玄の表情は暗い。


山を担ぎながら呟いた。


「……俺のせいだ」


「俺が止まった」


「俺が……」


拳が震えている。


山は痛みに耐えながら答えた。


「違う」


「俺が勝手に飛び込んだだけだ」


「気にすんな」


玄は首を振る。


「気にする」


「俺のせいだ」


山は困ったように笑う。


その横で。


志乃が呆れた顔をした。


「いや」


「あんたは気にしろよ」



その言葉に。


周囲の者たちも思わず頷いた。


「そうだぞ頭!」


「また無茶しやがって!」


「寿命縮むわ!」


弥助が怒鳴る。


鉄も叫ぶ。


「次は俺らが殴るからな!」


孫六も顔を青くする。


「またっすか旦那!!」


迅も呆れたように肩を落とした。


「頭、本当に勘弁してくださいよ……」


皆の視線が山へ集まる。


山は苦笑いを浮かべた。


「……悪い」


だがその顔は。


全く反省している顔には見えなかった。



やがて。


白煙が晴れ始める。


鬼庭の顔が現れた。


その表情は怒りに歪んでいた。


「ちっ!!」


「あと少しだったってのによォ!!」


刀を振り払う。


山はもういない。


玄もいない。


志乃も消えている。


鬼庭は舌打ちした。


「逃がしたか……!」


そこへ塚原が近付く。


「鬼庭殿」


「それでも山狐を負傷させた功績は大きい」


冷静な声だった。


鬼庭は不機嫌そうに鼻を鳴らす。


「ふんっ」


「次は首を取ってやるわ」


そして刀を前へ向ける。


「全軍追撃だ!!」


「山狐を逃がすなァ!!」


蒼鷹軍が再び動き始めた。



一方。


黒曜領。


牙城兵馬と相良義隆の戦いは激化していた。


相良は理解している。


この戦を長引かせてはならない。


黒曜軍の狙い。


それは白蓮軍の分断。


最後尾にいる自分を足止めし。


白蓮四天王の連携を崩すこと。


(策にはまるわけにはいかん)


相良は前線を見る。


牙城兵馬。


巨大な体。


狼の毛皮。


そして。


圧倒的な武力。


「果敢だなァ!!」


牙城が笑う。


「好きだぜぇ!!」


「自分から前へ出てくる将ってやつはよォ!!」


相良は眉一つ動かさない。


「……舐めるな」


静かに言う。


そして号令を飛ばした。


「前列後退!」


「第二列前進!」


白蓮軍が動く。


前列が下がり。


後列が前へ出る。


波のように攻撃が続く。


波状攻撃。


牙城軍へ絶え間なく襲いかかる。



さらに。


事前に配置していた遊撃隊が動いた。


黒曜軍の側面を回り込み。


背後へ到達する。


「今だ!」


「かかれぇ!!」


白蓮兵が突撃する。


「ぐあぁぁっ!!」


黒曜兵が悲鳴を上げた。


前後からの挟撃。


黒曜軍の陣形が乱れる。



だが。


牙城は動かない。


ただ前方に立つ。


まるで巨大な岩山だった。


牙城へ届く前に。


部下たちが攻撃を受け止める。


それでも。


相良は攻撃を続ける。


一歩ずつ。


確実に。


牙城へ迫っていく。



そして。


ついに。


牙城の姿がはっきり見えた。


相良は槍を握る。


「今だ」


最後列にいた相良自身が前へ出た。


側近たちも続く。


白蓮軍の士気が上がる。


「相良殿だ!」


「相良殿が前へ出られたぞ!!」


牙城は楽しそうに笑った。


「はっはっはァ!!」


「そう来なくっちゃなァ!!」



相良は槍を前へ向ける。


そして叫んだ。


「目指すは牙城の首!!」


「皆、進めぇぇぇ!!!」


白蓮軍が吠える。


牙城軍も迎え撃つ。


怪物と盾。


黒曜三騎士と白蓮四天王。


二人の激突が。


ついに始まろうとしていた。


(続く)

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