第46話 激突
蒼鷹軍。
鬼庭盛綱率いる軍勢が拠点入口へ殺到する。
「進めぇぇぇぇ!!」
轟音。
次の瞬間。
入口の扉が勢いよく吹き飛んだ。
木片が宙を舞う。
鬼庭は刀を掲げる。
「突撃だ!!」
蒼鷹兵たちが雪崩れ込む。
その後ろから塚原軍も続いた。
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だが。
その瞬間だった。
左右の外壁。
その陰から人影が飛び出す。
「ぐあぁぁぁっ!!」
蒼鷹兵が吹き飛ぶ。
弥助隊だった。
さらに反対側から。
「おらぁ!!」
鉄隊が突撃する。
混乱。
悲鳴。
蒼鷹軍の先頭が崩れた。
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弥助が刀を振り抜く。
「人の家に土足で入ってくんじゃねぇよ!!」
鉄も笑う。
「通行料は高ぇからな!!」
蒼鷹兵が次々と倒される。
完全な奇襲だった。
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だが。
鬼庭は怯まない。
むしろ笑った。
「はっ!!」
「こそこそと隠れおって!!」
刀を振るう。
蒼鷹兵が前へ出る。
「軟弱者が!!」
そのまま鬼庭自身も突撃した。
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さらに後方から塚原軍が合流する。
蒼鷹軍の数が増える。
戦場は一気に混乱へ変わった。
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少し離れた場所。
山はその様子を見ていた。
(ここで指揮官を討てれば)
(犠牲は最小で済む)
鬼庭。
あの男を落とす。
それが今回の要だった。
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そして。
頃合い。
山は手に持つなまくら刀を掲げ、刀にあたる反射光を合図にだす。
弥助隊。
鉄隊。
予定通り後退を始める。
鬼庭は笑った。
「逃げるか!!」
だが。
その直後。
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混乱した兵の間から。
新たな集団が飛び出した。
玄隊。
伏兵だった。
「っ!」
鬼庭が反応する。
だが遅い。
玄が一気に距離を詰める。
狙うは首。
一撃必殺。
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キィィン!!
金属音が響いた。
玄の刃が止まる。
鬼庭が受け止めていた。
「……っ」
玄の目が揺れる。
鬼庭は笑った。
「甘いわ」
刀を弾く。
「その程度で俺が殺されるか愚か者めが!!」
⸻
作戦が止まった。
玄も理解する。
今ので終わるはずだった。
だが終わらない。
次を考えなければならない。
その一瞬。
玄の動きが僅かに止まる。
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遠くから弥助が叫んだ。
「玄っ!!」
「一旦お前も後退しろ!!」
鉄も叫ぶ。
「無理すんな!!」
⸻
だが。
鬼庭の動きが止まった。
じっと玄を見る。
「……お前が玄か?」
低い声。
⸻
玄は眉一つ動かさない。
「だからどうした」
短く答える。
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鬼庭の表情が。
ゆっくり笑顔になった。
「そうか」
「お前が玄か!!」
そして。
腹を抱えるように笑った。
「はっはっはっはっ!!」
「そうかそうか!!」
⸻
「斯波義継」
「お前が奴を斬ってくれたおかげで」
鬼庭は刀を肩へ乗せる。
「俺が副将になれた!!」
⸻
「感謝してるぞ!!」
大笑い。
戦場に響く。
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玄の表情が変わる。
初めてだった。
ほんの僅か。
だが確かに。
揺れた。
⸻
斯波義継。
かつての上官。
兵を使い潰した男。
死地へ送り続けた男。
何人も死んだ。
何人も。
何人も。
⸻
――もっと前へ出せ。
――死んでも構わん。
――弱い奴が悪い。
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あの日。
玄は確かに思った。
この男を斬れば終わる。
これ以上死ななくて済む。
そう信じていた。
⸻
だが。
目の前にいる男は笑っている。
同じ目だ。
同じ顔だ。
同じ考えだ。
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玄は小さく呟いた。
「……何も」
声が震える。
「何も変わってねぇ……」
⸻
鬼庭は笑う。
「当然だろう」
「弱ぇ奴は死ぬ」
「それだけだ」
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玄の手が止まる。
僅かに。
ほんの僅かに。
だが確実に。
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鉄が叫ぶ。
「玄!!」
「どした!!」
「早く後退しろ!!」
⸻
山も異変に気付いた。
(まずい)
予定に無い。
想定していない。
玄が止まっている。
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(何が起きた)
山は考える。
作戦が崩れ始めていた。
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一方。
黒曜領。
白蓮軍と黒曜軍が激突していた。
⸻
牙城兵馬。
黒曜三騎士。
その怪物は前線で暴れていた。
巨大な薙刀が振るわれる。
「おらァ!!」
白蓮兵が吹き飛ぶ。
さらに振るう。
また吹き飛ぶ。
圧倒的。
まさしく怪物だった。
⸻
だが。
相良義隆は冷静だった。
軍勢は互角。
だが攻撃力では負ける。
だからこそ。
軍で勝つ。
⸻
「伝令!!」
部隊長が駆ける。
相良が命じる。
「鶴翼の陣に展開!」
「左翼前進!」
「右翼は敵を誘導せよ!」
「遊撃隊は別働!」
⸻
命令が飛ぶ。
白蓮軍が動く。
まるで生き物のように。
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兵馬はそれを見て笑った。
「いいねェ!!」
「いいねいいねェ!!」
薙刀を振るう。
「白蓮四天王の力!!」
「見せてくれよォ!!」
⸻
さらに暴れる。
白蓮兵が倒れる。
吹き飛ぶ。
だが。
進むにつれ。
兵馬は違和感を覚える。
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硬い。
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白蓮軍が崩れない。
包囲を恐れない。
逃げない。
耐える。
支える。
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相良が前を見た。
そして。
号令を下す。
「挟撃せよ!!」
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次の瞬間。
左右へ展開していた白蓮軍が動く。
牙城軍を包み込む。
鶴翼の陣。
完成。
⸻
黒曜軍が動揺する。
兵馬は笑った。
「おォ!!」
「やるじゃねェか!!」
⸻
それでも笑う。
命のやり取りを。
戦そのものを。
心から楽しんでいた。
⸻
白蓮の盾。
相良義隆。
黒曜の怪物。
牙城兵馬。
⸻
二つの軍勢は。
さらに激しく激突していく。
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そして。
山隊の戦場でも。
想定外の歪みが生まれていた。
戦いはまだ。
始まったばかりだった。
(続く)
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