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戦えない俺は見捨てて生き残る——戦場の違和感から全てを操る転生戦国記  作者: 黒狐
第8章 戦乱の狼煙

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第46話 激突

蒼鷹軍。


鬼庭盛綱率いる軍勢が拠点入口へ殺到する。


「進めぇぇぇぇ!!」


轟音。


次の瞬間。


入口の扉が勢いよく吹き飛んだ。


木片が宙を舞う。


鬼庭は刀を掲げる。


「突撃だ!!」


蒼鷹兵たちが雪崩れ込む。


その後ろから塚原軍も続いた。



だが。


その瞬間だった。


左右の外壁。


その陰から人影が飛び出す。


「ぐあぁぁぁっ!!」


蒼鷹兵が吹き飛ぶ。


弥助隊だった。


さらに反対側から。


「おらぁ!!」


鉄隊が突撃する。


混乱。


悲鳴。


蒼鷹軍の先頭が崩れた。



弥助が刀を振り抜く。


「人の家に土足で入ってくんじゃねぇよ!!」


鉄も笑う。


「通行料は高ぇからな!!」


蒼鷹兵が次々と倒される。


完全な奇襲だった。



だが。


鬼庭は怯まない。


むしろ笑った。


「はっ!!」


「こそこそと隠れおって!!」


刀を振るう。


蒼鷹兵が前へ出る。


「軟弱者が!!」


そのまま鬼庭自身も突撃した。



さらに後方から塚原軍が合流する。


蒼鷹軍の数が増える。


戦場は一気に混乱へ変わった。



少し離れた場所。


山はその様子を見ていた。


(ここで指揮官を討てれば)


(犠牲は最小で済む)


鬼庭。


あの男を落とす。


それが今回の要だった。



そして。


頃合い。


山は手に持つなまくら刀を掲げ、刀にあたる反射光を合図にだす。


弥助隊。


鉄隊。


予定通り後退を始める。


鬼庭は笑った。


「逃げるか!!」


だが。


その直後。



混乱した兵の間から。


新たな集団が飛び出した。


玄隊。


伏兵だった。


「っ!」


鬼庭が反応する。


だが遅い。


玄が一気に距離を詰める。


狙うは首。


一撃必殺。



キィィン!!


金属音が響いた。


玄の刃が止まる。


鬼庭が受け止めていた。


「……っ」


玄の目が揺れる。


鬼庭は笑った。


「甘いわ」


刀を弾く。


「その程度で俺が殺されるか愚か者めが!!」



作戦が止まった。


玄も理解する。


今ので終わるはずだった。


だが終わらない。


次を考えなければならない。


その一瞬。


玄の動きが僅かに止まる。



遠くから弥助が叫んだ。


「玄っ!!」


「一旦お前も後退しろ!!」


鉄も叫ぶ。


「無理すんな!!」



だが。


鬼庭の動きが止まった。


じっと玄を見る。


「……お前が玄か?」


低い声。



玄は眉一つ動かさない。


「だからどうした」


短く答える。



鬼庭の表情が。


ゆっくり笑顔になった。


「そうか」


「お前が玄か!!」


そして。


腹を抱えるように笑った。


「はっはっはっはっ!!」


「そうかそうか!!」



「斯波義継」


「お前が奴を斬ってくれたおかげで」


鬼庭は刀を肩へ乗せる。


「俺が副将になれた!!」



「感謝してるぞ!!」


大笑い。


戦場に響く。



玄の表情が変わる。


初めてだった。


ほんの僅か。


だが確かに。


揺れた。



斯波義継。


かつての上官。


兵を使い潰した男。


死地へ送り続けた男。


何人も死んだ。


何人も。


何人も。



――もっと前へ出せ。


――死んでも構わん。


――弱い奴が悪い。



あの日。


玄は確かに思った。


この男を斬れば終わる。


これ以上死ななくて済む。


そう信じていた。



だが。


目の前にいる男は笑っている。


同じ目だ。


同じ顔だ。


同じ考えだ。



玄は小さく呟いた。


「……何も」


声が震える。


「何も変わってねぇ……」



鬼庭は笑う。


「当然だろう」


「弱ぇ奴は死ぬ」


「それだけだ」



玄の手が止まる。


僅かに。


ほんの僅かに。


だが確実に。



鉄が叫ぶ。


「玄!!」


「どした!!」


「早く後退しろ!!」



山も異変に気付いた。


(まずい)


予定に無い。


想定していない。


玄が止まっている。



(何が起きた)


山は考える。


作戦が崩れ始めていた。



一方。


黒曜領。


白蓮軍と黒曜軍が激突していた。



牙城兵馬。


黒曜三騎士。


その怪物は前線で暴れていた。


巨大な薙刀が振るわれる。


「おらァ!!」


白蓮兵が吹き飛ぶ。


さらに振るう。


また吹き飛ぶ。


圧倒的。


まさしく怪物だった。



だが。


相良義隆は冷静だった。


軍勢は互角。


だが攻撃力では負ける。


だからこそ。


軍で勝つ。



「伝令!!」


部隊長が駆ける。


相良が命じる。


「鶴翼の陣に展開!」


「左翼前進!」


「右翼は敵を誘導せよ!」


「遊撃隊は別働!」



命令が飛ぶ。


白蓮軍が動く。


まるで生き物のように。



兵馬はそれを見て笑った。


「いいねェ!!」


「いいねいいねェ!!」


薙刀を振るう。


「白蓮四天王の力!!」


「見せてくれよォ!!」



さらに暴れる。


白蓮兵が倒れる。


吹き飛ぶ。


だが。


進むにつれ。


兵馬は違和感を覚える。



硬い。



白蓮軍が崩れない。


包囲を恐れない。


逃げない。


耐える。


支える。



相良が前を見た。


そして。


号令を下す。


「挟撃せよ!!」



次の瞬間。


左右へ展開していた白蓮軍が動く。


牙城軍を包み込む。


鶴翼の陣。


完成。



黒曜軍が動揺する。


兵馬は笑った。


「おォ!!」


「やるじゃねェか!!」



それでも笑う。


命のやり取りを。


戦そのものを。


心から楽しんでいた。



白蓮の盾。


相良義隆。


黒曜の怪物。


牙城兵馬。



二つの軍勢は。


さらに激しく激突していく。



そして。


山隊の戦場でも。


想定外の歪みが生まれていた。


戦いはまだ。


始まったばかりだった。


(続く)

読んでいただきありがとうございます。

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