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戦えない俺は見捨てて生き残る——戦場の違和感から全てを操る転生戦国記  作者: 黒狐
第8章 戦乱の狼煙

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第45話 火蓋

蒼鷹軍。


黒曜領へ向かう街道。


鬼庭盛綱率いる軍勢は進軍を続けていた。


その時。


前方へ出していた斥候が駆け戻る。


「ご報告!」


鬼庭が視線を向ける。


「申せ」


斥候は膝をついた。


「まもなく山狐の拠点と思われる地点へ到着します!」


鬼庭は口元を吊り上げた。


「ご苦労」


斥候が下がる。


鬼庭は前を見据えた。


(さぁ山狐)


(俺の武功の糧になってもらおうか)


真壁義臣を退却へ追い込んだ男。


その首を取れば。


副将では終わらない。


鬼庭盛綱の名は一気に広まる。


そう確信していた。



そこへ後方から別働隊が現れる。


塚原茂光だった。


鬼庭は顔をしかめる。


「なんだ来たのか」


「はっ」


「俺の武功が減ってしまうではないか」


豪快に笑う。


塚原は呆れたようにため息を吐いた。


「山狐を甘く見ては足元を掬われるぞ」


鬼庭は前方を指差した。


「そうは言うても見てみろ」


塚原も視線を向ける。


木柵。


外壁。


矢倉。


確かに拠点として整備されている。


鬼庭は笑う。


「盗賊の巣にしては良く出来ている」


「だが中途半端だ」


「城にもなれず」


「砦にもなれず」


「所詮は素人仕事よ」


さらに周囲を見る。


「堀もあるようだが浅い」


「こんなもの何の障害にもならん」


塚原は黙る。


だが胸騒ぎは消えない。


「……何も無ければ良いが」


小さく呟いた。



その頃。


山たちの拠点。


矢倉の上。


物見が叫んだ。


「来た!!」


「真壁じゃなさそうだ!!」


「見たことねぇ奴が二人いる!!」


下にいた弥助が顔を上げる。


「真壁じゃねぇのか?」


鉄が鼻を鳴らした。


「さすがにまだ治ってねぇだろ」


孫六は弓を持ちながら肩を竦めた。


「んじゃ」


「とりあえず作戦通りっすね」



蒼鷹軍が接近する。


距離が縮まる。


さらに縮まる。


孫六が手を上げた。


「今っす」


次の瞬間。


無数の矢が空へ放たれた。


ヒュン―――!!


一斉放射。


蒼鷹軍へ矢の雨が降り注ぐ。


「ぐあっ!!」


「敵襲!!」


数人が馬から落ちる。


混乱が広がる。


だが。


鬼庭は止まらない。


矢を払いながら笑う。


「馬鹿がっ!!」


「こんなもので俺が止められるか!!」


騎馬がさらに前進する。



孫六はそれを見る。


「あー」


「放射終わりっす」


後ろへ振り返る。


「弓隊後退」


「予定通りっすよ」


弓兵たちは素早く下がっていく。


蒼鷹軍からは見えない。


板壁が視界を遮っている。


鬼庭は不快そうに眉をひそめた。


「隠れやがって」



やがて。


拠点入口へ蒼鷹軍が到達する。


鬼庭が刀を抜いた。


「突撃だ!!」


蒼鷹兵たちが雄叫びを上げる。


塚原は後方から拠点を見ていた。


(このまま何もなければ良いが)


そう思いながら。



同時刻。


黒曜領。


白蓮軍。


白蓮四天王の一人。


相良義隆率いる軍勢が進軍していた。


その前方。


黒曜軍が展開している。


斥候が報告した。


「ご報告!!」


「前方の軍勢は黒曜三騎士の一人!」


「牙城兵馬とのことです!!」


相良は目を細める。


(牙城兵馬……)


(黒曜軍の怪物か)



やがて。


黒曜軍の前列から一人の男が進み出る。


白蓮兵たちがざわついた。


大きい。


ただ大きいだけではない。


熊のような体格。


狼の毛皮。


巨大な薙刀。


まるで戦場そのものが歩いているようだった。


男は笑う。


「おれァ黒曜三騎士の一人」


「牙城兵馬だ!!」


大声が響く。


相良は少し驚いた。


名乗る。


それも敵の前で。


よほど自信があるのか。


それとも。


ただ戦いを楽しんでいるだけか。



相良も前へ出る。


「私は白蓮四天王の一人」


「相良義隆」


兵馬が笑った。


「いいねェ!!」


「大物だ!!」


「殺りがいがあるってもんだァ!!」


相良は静かに槍を構える。


「侮ってもらっては困る」


「守りが得意なだけで」


「攻めが弱い訳ではない」


兵馬はさらに笑った。


「いいねェ!!」


「だったら試させてもらうぜぇ!!」


相良は冷静に答える。


「やってみろ」



兵馬が薙刀を掲げる。


「ハッハッハッ!!」


「やァッと暴れられるぜ!!」


振り下ろした。


「てめぇら!!」


「殲滅だァ!!」


黒曜軍が一斉に動く。



相良も槍を掲げた。


「皆の者!!」


「黒曜軍を殲滅せよ!!」


白蓮軍も動く。



白蓮軍。


黒曜軍。


二つの大軍勢が激突する。



そして。


別戦線では。


山隊と蒼鷹軍の戦いも始まろうとしていた。


各地で火蓋が切られる。


戦乱の狼煙は、


ついに大地を覆い始めていた。


(続く)

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