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戦えない俺は見捨てて生き残る——戦場の違和感から全てを操る転生戦国記  作者: 黒狐
第8章 戦乱の狼煙

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第44話 戦乱の狼煙

蒼鷹軍。


黒曜領へ向かう街道。


先頭を進む騎馬隊の元へ、一人の斥候が駆け込んできた。


「進軍中、恐れながら申し上げます!」


鬼庭盛綱が馬上から睨む。


「何だ」


斥候は膝をついた。


「これより半里先、街道沿いに山狐の拠点らしき動きを確認しました!」


その瞬間。


鬼庭の目が見開かれる。


そして――


豪快に笑った。


「はっ!!」


「なんと幸運な!」


塚原茂光が眉をひそめる。


鬼庭は笑いながら言った。


「真壁殿を退却させた山狐だぞ?」


「ここで討ち取れば俺の名は一気に上がる!」


「景冬様にも覚えていただける!」


塚原は静かに首を振った。


「鬼庭殿」


「我らの任は黒曜領を背後から削り取ること」


「山狐ではない」


「今はやり過ごすべきです」


だが鬼庭は聞かない。


「違うな」


「山狐を討てば真壁殿でも成せなかった功を立てられる」


「副将など、もう終わりだ」


「次は俺が大将になる」


欲望を隠そうともしない。


塚原は小さく息を吐いた。


「功を焦れば足を掬われますぞ」


鬼庭は鼻で笑う。


「臆病風か?」


「ならば塚原殿は予定通り黒曜へ向かえばいい」


「俺一人で十分だ」


そう言うと鬼庭は馬首を返した。


「行くぞ!」


蒼鷹兵たちが続く。


山狐の拠点へ向けて。


残された塚原は空を見上げた。


嫌な予感がしていた。


だが放置も出来ない。


「……仕方ない」


「後を追う」


塚原隊もまた、鬼庭の後を追って進軍を開始した。



一方。


黒曜領。


白蓮軍の侵攻は止まらない。


焔将・赤堂烈真は今日も先陣を切っていた。


「おらぁ!!」


巨大な大槌が振り下ろされる。


黒曜兵が吹き飛ぶ。


「どうしたァ!」


「黒曜軍ってのはこんなもんか!?」


砦門が砕ける。


兵が逃げる。


赤堂は豪快に笑った。


「つまんねぇぞ!!」


まるで暴風だった。



別戦線。


雷姫もまた進軍を続けていた。


白銀の刀が閃く。


敵兵が崩れる。


だが。


雷姫は馬上で僅かに目を細めた。


(……妙だ)


砦は落ちる。


兵もいる。


抵抗もある。


だが。


(守りが緩い)


違和感。


それが消えない。


副将・榊原景親が声を掛ける。


「雷姫様?」


雷姫は静かに前を見た。


「……何でもない」


だが胸の奥では警鐘が鳴り続けていた。



さらに別戦線。


氷牙も進軍を続けていた。


無駄のない動き。


無駄のない戦。


敵を切り崩しながら進む。


だが。


(……?)


彼もまた違和感を覚えていた。


黒曜軍は弱くない。


だが。


何かがおかしい。


まるで。


何かへ誘導されているような――


そんな感覚だった。



そして。


白蓮の盾。


相良義隆。


彼は他の四天王よりも進軍速度が遅かった。


守りに優れた将。


攻めより守りを得意とする男。


それでも幾つもの砦を落とし続けている。


その時。


斥候が駆け込んだ。


「進軍中、恐れながら申し上げます!」


「前方に黒曜軍展開中!」


相良は静かに目を閉じた。


そして。


小さく呟く。


「……来たか」


その声には驚きが無かった。


まるで最初から予想していたかのように。



数日後。


山たちの拠点。


木槌の音が今日も響いていた。


完成した外柵。


板張り。


四つの矢倉。


内部の偽装。


以前とは比べ物にならない。


もはや隠れ家ではない。


戦うための拠点だった。


だが。


未完成でもある。


外堀はまだ浅い。


雨が降れば作業は止まる。


思うように進まない。


山は掘り進められている堀を見る。


「もう少し深ければな……」


鉄が笑った。


「まぁ仕方ねぇだろ」


「雨には勝てねぇ」


弥助も肩を竦めた。


「それでも十分だ」


皆が頷く。


少しずつ。


だが確実に形になっていた。



その時だった。


矢倉の上から叫び声が響く。


「やべぇ!!」


全員が顔を上げる。


「蒼鷹軍だ!!」


「こっち来てる!!」


空気が変わった。


鉄が立ち上がる。


弥助の目が細くなる。


志乃が息を呑む。


迅も表情を消した。


山は静かに聞く。


「数は」


「百はいる!!」


皆の顔色が変わる。



外堀作業をしていた者たちが慌てて拠点へ戻る。


門が閉じられる。


武器が配られる。


緊張が広がる。


山隊の主要メンバーが集まった。


鉄が言う。


「真壁か?」


弥助が眉をひそめる。


「治るの早すぎだろ」


玄は腕を組んだ。


「別かもしれない」


山は頷く。


「どちらにしろ敵だ」


そして全員を見る。



「孫六」


「はい」


「弓隊を率いろ」


「接近するまで撃ち続けろ」


「近付かれたら撤退」


孫六は頷いた。


「了解っす」



「鉄」


「弥助」


二人が前へ出る。


「入口から侵入してきた敵を左右から叩く」


「だが深入りするな」


「ある程度戦ったら下がれ」


鉄が笑う。


「珍しく慎重だな」


山は即答した。


「死なれる方が困る」


鉄は豪快に笑った。



「玄」


玄が顔を上げる。


「伏兵だ」


「敵が散った所を突け」


「狙うのは敵大将」


玄は短く答えた。


「ああ」



「志乃」


「医療小屋」


「負傷者の治療を頼む」


志乃は静かに頷く。


「任せて」



「迅」


「志乃の護衛だ」


迅は笑った。


「了解」



指示が終わる。


全員が山を見る。


上手くいく保証は無い。


勝てる保証も無い。


だが。


山は静かに言った。


「皆で生きて」


少し間。


「また明日を迎えよう」


静寂。


誰も笑わない。


だが。


弥助が立ち上がる。


「おう」


鉄が笑う。


「死ぬ気はねぇよ」


孫六も肩を竦めた。


「俺もっす」


玄は短く言う。


「ああ」


志乃も静かに頷いた。


迅が笑った。


「頭も死なねぇでくださいよ」


「俺ら困るんで」


山は少しだけ笑った。


「努力する」


その時だった。


再び矢倉から叫び声が響く。


「来た!!」


「蒼鷹軍だ!!」


「もうすぐそこだ!!」


全員が武器を握る。


山は振り返った。


拠点。


仲間。


守るべき場所。


そして。


迫る蒼鷹軍。


戦乱の狼煙が、


ついに上がった。


(続く)

読んでいただきありがとうございます。

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