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戦えない俺は見捨てて生き残る——戦場の違和感から全てを操る転生戦国記  作者: 黒狐
第7章 過去の檻

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第41話 白蓮四天王

朝。


拠点では、既に騒がしかった。


木を切る音。


縄を引く声。


土を掘る音。


昨日までの隠れ家とは、空気そのものが違っていた。



「そっち持て!」


「杭足りねぇぞ!」


「縄寄越せ縄!」


迅の部下たちが、朝から動き回っている。


元盗賊。


元奴隷兵。


まともな兵ですらない連中。


だが今は、皆が必死だった。


生き残るために。



山は少し高い岩場から、全体を見ていた。


拠点の周囲。


まず作るのは外柵。


木を削り、尖らせ、地面へ打ち込んでいく。


簡易的。


だが、無いより遥かにいい。


さらに——


その外側。


迅たちが土を掘っていた。


深い。


横に長い。


「空堀か」


玄が静かに言う。


山は頷いた。


「敵を止める」


「道を限定する」


「正面からしか来れなくする」


真正面から大軍を受ければ終わる。


だからこそ、通る場所を決める。


それが山の考えだった。



鉄が大量の木材を担ぎながら笑う。


「本当に砦になってきたな」


「まだ途中だ」


山が答える。


「完成しても、正面から戦う場所じゃない」


枝で地面を指す。


「生き残るための場所だ」


玄が小さく頷く。


「……らしい考えだ」



少し離れた木陰。


孫六が胡座をかいていた。


完全にサボっているように見える。


弥助が呆れる。


「お前働けよ」


「働いてるっすよ」


適当な声。


だがその視線は、拠点全体を見ていた。


やがて、孫六が面倒そうに口を開く。


「そこの矢倉」


迅が振り返る。


「あ?」


「高ぇっす」


「見える範囲減る」


全員が少し黙る。


孫六は続けた。


「あと、その木残すと枝邪魔」


「射線切れるんで」


迅が眉をひそめる。


「……細けぇな」


「撃つ側からしたら、結構死活問題なんすよ」


面倒そうに言いながら、孫六は別の場所も指差した。


「南側、朝日で逆光になるんで」


「見張り置くなら西寄り」


玄が視線を向ける。


「よく見てるな」


「死にたくないだけっす」


即答だった。


だが。


その指示は、かなり実践的だった。



四隅では、簡易矢倉の建設も始まっていた。


高所から、敵の接近を見るため。


孫六の射撃地点としても使える。


さらに、森の一部は意図的に残された。


隠れるため。


伏兵を置くため。


敵の視界を切るため。


ただ守るだけではない。


“殺すための地形”へ、少しずつ変わり始めていた。



志乃は、拠点奥を見ていた。


岩陰。


雨風を避けられる場所。


そこへ、簡易の布を張っていく。


「そこ何にするんだ?」


迅の部下が聞く。


志乃は振り返らない。


「怪我人置き場」


短い返事。


「血塗れの奴を、その辺に転がして死なせる気?」


男たちが黙る。


志乃は続けた。


「水運ぶ場所も決める」


「薬草乾かす場所も欲しい」


「あと火」


「湿気ると薬駄目になる」


次々と言葉が出る。


山はその様子を見て、小さく頷いた。


戦う場所だけでは足りない。


生き残る場所も必要だった。



昼過ぎ。


拠点は既に、昨日とは別物になり始めていた。


柵。


堀。


見張り台。


狭められた進路。


まだ粗末。


まだ未完成。


だが確実に、“戦うための場所”へ変わっていた。



その頃。


白蓮領。


広間には、重い空気が流れていた。


並ぶ四人。


白蓮四天王。


雷姫。


氷牙。


そして——


焔将、赤堂烈真。


巨大な身体。


燃えるような赤髪。


豪快な男。


さらにもう一人。


白蓮の盾、相良義隆。


重厚な鎧を纏う、寡黙な武将。


その中央。


白蓮当主、白蓮宗明が静かに口を開く。


「蒼鷹は、山狐に止められている」


赤堂が笑った。


「はっ、随分情けねぇ話だな」


「なら今が好機だ」


「黒曜を削れる」


氷牙は静かに目を細める。


「……久我景定がいる」


空気が少し変わる。


黒曜軍師。


その名だけで、場が引き締まった。


相良が低く言う。


「軽く見れば死ぬ」


赤堂は鼻を鳴らす。


「だが動かなきゃ、機は逃げる」


静かな沈黙。


やがて——


白蓮当主が立ち上がった。


「白蓮軍を動かす」


その一言で、空気が張り詰める。


「これより、黒曜領へ侵攻する」


雷姫だけは、静かに目を閉じていた。


脳裏に浮かぶのは、黒布の男。


山狐。


あの男は、今も生き残るために戦っている。


そして——


世界もまた、動き始めていた。


(続く)

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