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戦えない俺は見捨てて生き残る——戦場の違和感だけで成り上がる転生戦国記  作者: 黒狐
第7章 過去の檻

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第34話 反転する戦場

蒼鷹軍が揺れていた。


伝令は途切れ。


補給は乱れ。


再編隊は、

玄隊に食い破られた。


さらに——


奴隷兵たちまで、

動き始めている。


⸻


「落ち着け!!」


真壁義臣が怒鳴る。


「隊列を崩すな!!」


だが。


兵たちの顔には、

焦りが浮かんでいた。


どこが崩れているのか分からない。


どこから敵が来るのかも分からない。


指示も届かない。


連携も取れない。


真壁は歯噛みした。


(……ここまでかき乱されるとは)


怒りだけではない。


焦燥もあった。


真壁は周囲を見る。


前線。


後方。


奴隷列。


全てが乱れている。


このまま押し切るのは危険。


なら——


「一度下がる!!」


真壁が叫ぶ。


「隊を立て直すぞ!!」


蒼鷹兵たちが、

一斉に後退を始めた。


⸻


その瞬間だった。


「悪ぃが」


低い声。


真壁の進路へ、

鉄が立った。


大剣を肩へ担ぐ。


血だらけのまま笑う。


「戻らせねぇよ」


真壁の目が見開かれる。


「貴様——」


次の瞬間。


鉄隊が、

真正面からぶつかった。


轟音。


蒼鷹兵が吹き飛ぶ。


逃がさない。


退かせない。


無理やり、

その場へ縫い止める。


⸻


同時に。


森の奥から、

地鳴りのような足音が響いた。


「——押し潰せ」


玄の低い声。


次の瞬間。


玄隊が、

真正面から突っ込んだ。


隠れない。


潜まない。


真正面。


勢いそのままに、

再編しようとしていた蒼鷹兵へ激突する。


槍衾が砕ける。


兵が吹き飛ぶ。


「止めろ!!」


蒼鷹兵が叫ぶ。


だが止まらない。


玄は先頭で、

敵兵を真正面から斬り伏せた。


重い。


速い。


そして容赦がない。


温存されていた勢いが、

そのまま蒼鷹軍へ叩き込まれていた。


再編隊が崩壊する。


蒼鷹軍の流れが、

完全に断ち切られた。


⸻


「くそっ……!」


蒼鷹兵が振り返る。


その瞬間。


ヒュッ——


矢。


兵の肩を射抜く。


だが、

殺してはいない。


悲鳴を上げた兵が、

味方へぶつかる。


後ろの隊列が乱れる。


さらにもう一本。


今度は馬の手綱。


馬が暴れた。


蒼鷹兵たちが巻き込まれる。


「射手だ!!」


「どこだ!?」


木の上。


孫六が静かに目を細める。


「……そっち行くんすね」


淡々と呟く。


次の矢。


今度は、

退路側の地面へ刺さる。


蒼鷹兵たちが反射的に避ける。


その結果——


後退方向が偏る。


そこへ。


玄隊が突っ込んだ。


「がぁぁぁっ!!」


蒼鷹軍がさらに崩れる。


孫六は、

ただ撃っているわけじゃなかった。


戦場そのものを、

追い込んでいた。


⸻


奴隷列。


迅が周囲を見ていた。


蒼鷹軍が押されている。


管理兵はいない。


指示も飛ばない。


もう、

絶対だったはずの恐怖が揺らいでいた。


その時。


蒼鷹兵が、

奴隷兵へ怒鳴る。


「前へ出ろ!!

盾になれ!!」


誰も動かない。


兵が苛立ち、

剣を抜いた。


その瞬間。


弥助が、

その腕を掴んだ。


「まだ使う気かよ」


低い声。


蒼鷹兵が睨む。


「奴隷風情が——」


最後まで言えなかった。


弥助の頭突きが、

顔面へ叩き込まれる。


兵が崩れ落ちた。


弥助が叫ぶ。


「いつまで下向いてんだ!!」


奴隷兵たちが震える。


弥助は迅を見る。


「立てよ」


短い言葉。


迅の顔が歪む。


怖い。


分かっていた。


逆らえば死ぬ。


でも——


もう、

死ぬだけなのも嫌だった。


迅が槍を握り直す。


そして。


蒼鷹兵へ向けた。


「……もう、

従うかよ」


その声をきっかけに。


奴隷兵たちが、

次々と武器を向け始める。


⸻


戦場の空気が変わる。


蒼鷹軍が、

初めて後ろを見る。


敵は前だけじゃない。


内側でも、

崩れ始めていた。


⸻


その光景を。


森の影で、

山は静かに見ていた。


真壁は孤立している。


蒼鷹軍は乱れた。


奴隷兵も立ち上がった。


流れは——


完全にこちらへ傾いた。


(……今だ)


山は、

なまくら刀を抜く。


まともに斬れない刀。


だからこそ、

使い道は別だった。


真壁が鉄へ斬りかかる。


その瞬間。


山が、

なまくら刀を投げた。


回転。


一直線。


真壁の視界へ飛び込む。


「っ——!?」


真壁が反応する。


反射的に、

視線が逸れた。


その一瞬。


鉄は見逃さなかった。


「終わりだ」


大剣が振り抜かれる。


轟音。


真壁義臣が、

吹き飛んだ。


馬から落ちる。


地面へ叩きつけられる。


蒼鷹軍の空気が、

凍りついた。


⸻


山は静かに、

倒れた真壁を見る。


そして——


小さく息を吐いた。


(続く)

読んでいただきありがとうございます。

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